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4度の手術を乗り越えたデルポトロが母国大会での引退を示唆。「伝える中で最も難しいメッセージ」<SMASH>

テニスファンを魅了したデルポトロの迫力のあるフォアハンドを見る機会はもう少ししか残されていないようだ。(C)Getty Images
 右ヒザのケガにより約2年半以上にわたって戦列を離れていた男子テニス元世界3位のホアン・マルティン・デルポトロ(アルゼンチン/現757位)が復帰戦として出場を予定している「アルゼンチン・オープン」(2月7日~13日/アルゼンチン:ブエノスアイレス/クレーコート/ATP250)の記者会見に出席。母国開催となる同大会を最後に現役を引退する可能性を示唆した。

 2009年の全米オープンでグランドスラム初優勝、ツアーでも22勝を挙げるなど、数々の輝かしい功績を残してきた33歳のデルポトロ。2016年のリオオリンピックではシングルスで銀メダルを獲得し、世界ランキングでも3位に上り詰めた経験を持つ。2019年6月に右ヒザを負傷して以降は大会には出場していなかったものの、不屈の精神で4度の手術とリハビリを経てコート練習に復帰していた。

 最近ではコートでのヒッティング映像を公開するなど、着実に完全復活への歩みを進めていたデルポトロはこのほどブエノスアイレス大会のワイルドカード(主催者推薦)を獲得。さらに2月14日にブラジル・リオデジャネイロで開催される「リオ・オープン」(ATP500/クレーコート)にもワイルドカードでエントリー。ついに待望のカムバックを果たすことが決まり、ファンからも大きな注目を浴びていた。

 だが、現実は厳しかったということなのだろうか。会見の冒頭で「この日のために多くの時間を費やし、考え、想像してきました。そして、これは私がこれまでに伝える中で最も難しいメッセージのひとつだと思います」と切り出したデルポトロは悲しげな表情を浮かべながら、こう続けた。

「人々は私の復帰を期待していると思いますが、これは復帰というより、お別れに近いかもしれません。前へ進む力はありますが、ヒザは悪夢のような状態になっています。何年もの間、様々な治療法を試し、様々な医者と共にヒザを治そうと試みてきました。でも、まだ解決策は見つかっていません」
 「さよならを言う機会もなく引退をするなんて想像はできなかったし、それをするために(母国の)ブエノスアイレスほどいい大会はないだろうと思っています」

「この数週間後に私の将来がどうなるのかがわかってくると思いますが、(今は)33歳の人間として生きたい、痛みを抱えないようにしたい、ということははっきりしています。難しい決断ではありますが、はっきりさせたかったのです」

 そのように語ったデルポトロは会見の最後に「私はテニスを愛しています。でももうこれだけの痛みを抱え続けるのはつらいのです…」と涙ながらに苦しい胸の内を吐露。不屈の男の目からはやりきれない思いが溢れた。

 我々が想像できないほどの苦しみを味わっていたことは間違いない。多くのファンを虜にしてきたあの強烈なフォアハンドがもう見られなくなるとなれば非常に寂しい限りだが、たとえブエノスアイレス大会が最後となってもその雄姿をしっかりと見届けたいところだ。

文●中村光佑

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