
【プロの観戦眼16】新世代の旗手、アルカラスのスーパーフォアハンドと揺るがない自信を見よ~沼尻啓介<SMASH>
このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、試合を見る時の着眼点を教えてもらう。第16回は、同期の西岡良仁選手のツアーコーチとしてインディアンウェルズに帯同した沼尻啓介プロ。現地で見た中で、2022年に注目するべき選手を聞くと、18歳のアルカラスだという。
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現地では若い世代を中心に見て来た沼尻プロは、アルカラスのフォアハンドについて、「ボールの威力が桁違いで、すごすぎます」と驚いた様子で、「さらにパワーテニスになっています」と、垣間見た男子テニス界の未来について教えてくれた。
どれほどすごいパワーなのか。わかりやすく例えると、試合で時々見かける、相手選手がお手上げと認めるスーパーショットがあるが、アルカラスはそのスーパーショットの連続だと言う。
「テイクバックの時に右手がすごくリラックスしています。打点が身体から離れており、ストレートアームでボールを捉え、腕をムチのように使えています」と、スーパーショットを放てる要因も解説してくれた。
アルカラスはインディアンウェルズの1回戦で元世界1位のアンディ・マリーと対戦した。負けたものの、その試合でも強烈な才能を見せつけている。
「試合序盤、0−3までアルカラスのボールが入りませんでした。入るとエース級のボールを、強打しまくっていたんです。3ゲーム連取されると迷いが生まれるものですが、彼はまったく揺るぎませんでした。自分のテニスを続ければ勝てると思っているんです。打ち続けて、それが少しずつ入り始めて1セットを取りました」
アルカラスは18歳にして、「試合を通して自分のテニスをやり抜く力」を持っているのだ。テニス界が認める将来のナンバー1候補の、恐るべき実力である。
しかし、感心ばかりしてはいられない。未来の日本テニス選手は、そういう世界で戦い抜かなければいけないのだ。
2021年にツアーコーチになることを決意した沼尻プロに、そのパワーテニスにどうすれば対抗できるのか、今の日本ジュニアはどうしていけばいいと考えているかも聞いた。
「パワーで勝てなくても、パワー負けしない工夫、つまりボールの質、深さ、バリエーションなどは必要になります」
まずは、打ち合える舞台に立てるレベルが要求される。その上で求められるのが「speciality(特徴)」だ。
例えば、西岡良仁選手は「トータルでのスペシャリティを持っています。足が速く、左利き、バックは低くてすべり、フォアは相手に『打てそうか』と迷いを誘う」と、世界で戦える理由を挙げた。
この「speciality」は、自分が戦いたいレベルで通用するものでなくてはいけないと言う。例えば、フューチャーズレベルの大会で200位台の選手のフォアが強烈だとしても、ツアーでは、そのフォアは普通で「speciality」ではないため、ツアーでは勝てないというわけだ。
沼尻プロは日本でジュニアを育てたい思いはあると前置きしつつ、「ジュニアの時からヨーロッパの大会に出るとか、海外を経験することが大事」だという考えに至った。なぜなら、自分が将来戦う世界を知らなくては「勝つアイデアが出てこない」からだ。
世界を目指すなら、ジュニアの頃から世界を見て「自分の通用するもの、生き残れるものを見つける」ことが大事になってくると言う。
アルカラスを筆頭として新世代の台頭は、テニスファンにとっては楽しみな要素の1つ。しかし、日本人選手にとっては、ますます厳しい世界となっていく。その中でも輝きを放つ選手が出てくることを期待したい。
◆Carlos Alcaraz/カルロス・アルカラス(スペイン)
2003年5月5日、スペイン在住。185センチ、72キロ、右利き、両手BH。16歳でツアーデビューを果たし、21年に18歳でツアー優勝、ネクストジェンATPファイナルズを制した期待の若手。コーチは元世界1位のファン・カルロス・フェレーロ。現在ATPランク18位。
取材・文●赤松恵珠子(スマッシュ編集部)
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