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日本人で初めてウインブルドンJrに優勝した望月慎太郎は、将来を想定し長所を磨き続けた【山中夏雄コーチ】<SMASH>

日本人男子として初めて14際以下のジュニアオレンジボールに優勝した望月慎太郎。写真左が山中夏雄氏。写真提供:山中夏雄
錦織圭のアメリカ留学をサポートした盛田正明テニスファンド(MMTF)のコーチとして、アメリカのIMGアカデミーに常駐し、日本のジュニアたちの成長を支えている山中夏雄氏。このコラムでは日本のトッププロたちが、いかにして成長してきたのか、日米テニス界の違いなどを教えてもらう。

今回は今年プロに転向した望月慎太郎が、いかにして日本人として初めてグランドスラムジュニアに優勝できるまでになったのか。ジュニア時期の強化方法で意識したことについて聞いた。

*  *  *

望月慎太郎がIMGアカデミーに来た時に、錦織圭は、「力では勝てないので、粘ったり、走ったり、深いボールを打ったりしておくといいよ」とアドバイスしました。

この意図は、将来的にも日本人選手は小柄な体格で戦わなくてはいけないため、その準備をしておいた方がいいということです。

日本人選手は、みんな全体的にうまいのですが、世界で戦うためには、粘り強さに加えて武器が必要になってきます。そこで慎太郎の長所を伸ばし続けることにしました。

長所はバックハンド、リターン、ネットプレー。サービスとフォアハンドは褒められるものではありませんでしたが、試合で自分の拠り所となるショットを磨いていきました。
例えば、1試合で10回ダブルフォールトをしても何も言わず、大事なポイントでサービスエースを取れることを、良しとしました。実際、14歳以下のオレンジボウル決勝では、序盤でダブルフォールトを連発しましたが、大事な場面でサービスエースを決めました。フォアハンドの確率が悪くても、スピンをもっとかけるように指導するのではなく、ボールを奇麗に捉える感覚を重視しました。

長所を伸ばす時には、3、4年先に訪れるであろう状況を考えて指導することが大事です。例えばネットプレーの場合、すごく速かったり遠かったり、慎太郎にとって快適に返球できない、難しいボールを球出しして練習させました。トップジュニアと対戦する時には、相手はこういうボールを打ってくるだろうと想定した球出しです。

慎太郎にとっては難しい練習だったはずですが、必要だと思ったのでしょう。不平不満を言わずに取り組んでいました。

長所を使ってポイントを取れなくては、勝負に勝てません。将来の体格や試合のレベルを想定して、ジュニアのうちから長所を武器にまで磨いておくことが、将来の結果につながっていきます。

文●山中夏雄(盛田正明テニスファンド・IMGアカデミー常駐コーチ)

【PHOTO】ウインブルドンJr.を制した望月慎太郎の基本に忠実なリターン連続写真!

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