
高齢者の卓球は、我流というかクセがついてしまっていることがよくあります。
それを修正したいと言ってくる人には教えると良いと思いますが、教えてもらいたいと思わない人には、余計な口出しとなる場合もあります。或いは、皆の前では指摘されたくない人でも、周りに人がいないところで教えてもらいたいという人もいます。
(1) フットワークと転倒予防
むかし卓球をしていた人、或いはむかし卓球をやっていた人に教わった人は、姿勢が前かがみすぎていたり、スタンスが台から斜めになりすぎている場合があります。
前後の動きについては、苦手な人は多いと思います。前には動けても、後ろに下がれない人は多いようです。後ろに下がろうとして転倒する人もいます。
卓球はフットワークが重要なスポーツとはいえ、足腰の状況によっては、若い人のようなフットワークは危険を伴う場合があります。すり足のフットワークもやれなくなってきている人もいます。
また、前述の2(6)のように、シューズが外用の運動靴の人もおり、底が厚かったり、ひっかかりすぎて危険な場合がありますので、卓球シューズか体育館履きが良いでしょう。
なお、転倒や腰を痛めるのは、球拾いの時も危険ですので、あらかじめ注意を喚起しておくことが必要です。
(2) スイングとラケット
ラリーは、相手がうまい場合は打ち返しやすい(型を作りやすい)のですが、あまりうまくない人が相手だと、球がネット際だったりコーナーにきたり、少し下回転やナックルぎみになったりなど、バラバラな返球になり、一様の打ち方では対応できない(続かない)ことになります。
「どのような球がきたか」、「どのような球を出す必要があるか」によって打ち方は変える必要があります。
型を作りたい場合は自分よりうまい人と打ち、いろいろな球に対応してコントロール力をつけたい人はあまりうまくない人と打つのも良いでしょう。
肩の入れ方、力の入れ方・抜き方、手首の使い方、握りの角度や深さなどは、どのような打ち方をしたいか、どのようなラバーで打つかにより違ってきますので、それぞれに応じた打ち方を指導してもらうと良いでしょう。
(3) 予測した動き
「この回転やスピードの球をそこへ出したので、次はここへこういう球が返ってくる」、「このサーブが来たので次は違うサーブが来るかも」など、卓球は予測して動くことが大切なスポーツです。
自分が回転のかかった球を出せた時と、回転をかけれなかった時の違いがわからないと、予測も難しくなります。
卓球を始めたばかりだと、まだ打ち返すので精一杯で、予測まではできないものですが、予測することを意識することや、指導者のアドバイスがあれば、だんだんと予測できるようになります。
予測できるようになってくると、無駄な動きを減らすことができます。
(4) ナックルを打つ・返す
無回転のナックルは、球が伸びてこず、沈んだり、止まったりします。
ラージボール卓球に慣れている人や、表ラバー・粒高ラバーを使用していた人には、難なく返球できることもありますが、特に後ろに下がって打ちたい高齢者の中にはナックルを返す・打つのが苦手な人がいます(スマッシュがうまい高齢者であっても、ナックルのロビングには極端に弱い人もいます)。
逆に言えば、ナックルを取れる・出せるようになりたい、ミート打ちがうまくなりたい、表ラバーの特徴を知っておきたいという人には、ラージボールにも挑戦してみると良いのではと思います。
もっとも、足腰が丈夫ではなく、リーチが長くない人に対しては、ネット際やサイドへのナックルはケガの危険もあるので、どのような相手なのかに注意する必要があります。
(5) 人の卓球を見る際のポイント
卓球は予測や足が重要です。高齢となり、あまり足が動かなくなってきても、無理ないフットワークがうまい高齢者はいるものです。人のゲームを見る時には、つい球と上半身を目で追ってしまいがちですが、ぜひ足の動きも見てみてみましょう。
卓球のゲームで点数を取るには、事前に相手についての情報収集に基づく対策を考え、ゲーム場面では「緩急」「回転」「打ち方」「前後」「左右」「上下」に変化をつけたり、両面のラバーの使い分けやフェイント・駆け引きほか、さまざまなコツが必要です。
人のゲームは、見てわかる部分もあれば、解説がないとわからない部分もあります。ゲーム慣れしていくにつれて、わかる部分が増え、ますます卓球がおもしろくなっていくことでしょう。
筆者プロフィール:長渕晃二(ながぶちこうじ)
NPO法人日本卓球療法協会理事長。NPO法人日本ピンポンパーキンソン理事。明治学院大学大学院修了(社会福祉学修士)。短大・専門学校での教員・卓球顧問や福祉施設での卓球経験あり。現在有料老人ホーム、デイサービス、介護予防サロン、メンタルクリニックで卓球療法を行う。著書は『コミュニティワーカー実践物語』(筒井書房)、『卓球療法士テキスト』『卓球療法入門』(サイドウェイズ)ほか。
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