「小学生が福島の宝だから」<全農杯2025年全日本卓球選手権大会(ホープス・カブ・バンビの部)福島県予選会>

<全農杯2025年全日本卓球選手権大会(ホープス・カブ・バンビの部)福島県予選会 4月27日(日)本宮市総合体育館>

澄んだ空に、まだ少し肌寒い春風を感じる4月末の福島県本宮市。広大な福島県の中央、“福島のへそ”と呼ばれる本宮市の会場からは、残雪をまとった安達太良山(あだたらやま)と、関山の桜が目に美しい。


写真:会場から見えた美しい山々/撮影:ラリーズ編集部


写真:会場の敷地を彩る桜/撮影:ラリーズ編集部

今年の全農杯全日本ホカバ福島県予選は、全国ホープスと北日本卓球大会(今年は福島県いわき市開催)の県予選も同時に開催され、団体戦に個人戦にと、子どもたち、指導者たちの忙しい1日となった。

「子どもたちは福島の宝」


写真:開会式の様子/撮影:ラリーズ編集部

「皆さんは福島県の宝です」子どもたちにかける温かい役員の挨拶で、開幕した。

昨年まで全日本ホープス・カブ・バンビ大会(ホカバ)における福島県の各カテゴリ出場枠は3名だったが、今年は4名に増加した。

各県の代表枠数は、1月末時点での日本卓球協会への小学生登録者数に応じて決まるため、福島県は各県と比較して、小学生年代の卓球人口増加に一定の成果を挙げていることがうかがえる。

「小学校の強化リーグの大会に、保護者や家族が応援に来ますよね。そのとき、まだ卓球やってない弟や妹、未就学の子たちを集めて卓球教室を行ってきました。しばらく後に、その子たちがゼッケン付けて試合に出てくるようになって。地道な活動を県卓球協会の強化普及委員会としてやったきたのが、少しは効いたのかなと」

福島県卓球協会の五十嵐修二理事長は手応えを語りつつ、登録者数には課題も感じている。


写真:福島県卓球協会の五十嵐修二理事長/撮影:ラリーズ編集部

人口流出、少子化、運動部離れ、部活動地域移行

「福島県は、日本卓球協会登録者が多いときには1万人を超えていましたが、去年は8,000人を切りました。人口比率からはまだ多いほうだとは思いますが。東日本大震災以降の人口流出、少子化、中学・高校生の運動部離れ、そして今は中体連の部活動の地域移行が、のしかかっています」

県の協会の強化普及委員会を中心に、県内小学生の強化と、卓球の裾野拡大の両立に取り組んできた。

「福島県は小学生だけの小学生強化リーグ大会が年に5回あるんですね。他にも、小・中・高校生の強化リーグが年6回あるので、強い小学生は強化リーグの大会だけで年11回出ます。それ以外の地区予選やオープン大会も合わせると、その子たちは年間4、50大会に出場して貴重な経験を積みます」


写真:カブ女子1位 三瓶奏美(勿来卓球クラブ)/撮影:ラリーズ編集部

ただ、福島県の面積は、北海道、岩手に次いで3番目に広く、その移動も、南相馬から喜多方までなら車で片道3時間近くかかる。

「保護者の方や指導者も大変なんですが、そのぶん、子どもたちに喜びの瞬間が必ずある。会長挨拶にもあったように小学生が宝なので」


写真:バンビ男子1位 佐藤翔陽(平野TTC)/撮影:ラリーズ編集部

パーフェクト優勝

さて、今年の福島県予選会で目を引いたのは、ホープス男子の小澤佑眞(本宮卓球クラブ)の落ち着いたプレーだった。

安定したバックハンドで緩急をつけながら、得意のフォアドライブに繋げて得点を重ね、予選リーグから1ゲームも落とさずに1位となった。


写真:小澤佑眞(本宮卓球クラブ)/撮影:ラリーズ編集部

それでも全日本ホカバの舞台ではまだ予選リーグを通過したことがないという小澤。今年は小学6年、最後の全日本ホカバに懸ける。


写真:副賞10kgの福島県産米「天のつぶ」は“ハンバーグをおかずに食べたい”/撮影:ラリーズ編集部


写真:同じく1ゲームも落とさず優勝したカブ男子の木田貴喜(いわき卓球)/撮影:ラリーズ編集部

試合後はすぐに仲良し

バンビ女子は、同門の仲良し対決となった。

試合中はお腹が痛くなって泣いてしまい、難しい試合展開だったが、終わった後はすぐにまた二人、笑顔で遊んでいた。


写真:なかなか台に戻れない/撮影:ラリーズ編集部


写真:(左)バンビ女子1位 藤井彩、(右) 佐々木愛(いずれも富久山卓球クラブ)

試合後すぐに卓球ノートをつける子が多かった

序盤の予選リーグでは落ち着いた様子の子どもが多かったが、やはり代表決定戦が近づくと感情をあらわにしながら試合をする、おなじみの光景があった。

また、試合後にすぐに卓球ノートを書く姿もあちこちで見られ、真面目な県民性も感じた。


写真:泣き止まないうちからノートを書く子も/撮影:ラリーズ編集部

米どころならではの副賞

さて、全農杯全日本ホカバは全国47都道府県予選会すべてに全農が特別協賛している。

福島県予選会の副賞には、名実ともに“米どころ”として知られるこの地が誇る、自慢のブランド米が並んだ。

1位副賞:「天のつぶ」10kg/2位副賞:5kg

1位と2位の選手に副賞として贈られた福島県産「天のつぶ」は、15年の歳月をかけて開発した福島県オリジナルの品種だ。粒がしっかりしていて食べごたえがあり、香りが立つことが特徴で、米どころ福島県を代表するブランド米のひとつだ。


写真:福島県産米「天のつぶ」/提供:JA全農福島

「栽培時に倒れにくい品種です。雨風に負けずまっすぐ穂を天に伸ばす“天のつぶ”のように、卓球を頑張る子どもたちにも成長してほしいという願いも込めました」と、JA全農福島 管理部 次長 古溝祐子氏は語る。

3位副賞:「福、笑い」2kg

3位副賞には、同じく福島県産米の「福、笑い」が贈られた。ユニークなその名前には“作る人食べる人、みんなが笑顔になって幸せになりますように”という思いが託されている。

この「福、笑い」は、認証GAPの取得をして生産工程を厳しく管理できる生産者だけが作れる、貴重なブランド米である。香りが立ち、強い甘みをもちながらふんわり柔らかく炊きあがる、これまでにない個性的な食感・食味が持ち味とのことだ。


写真:福島県産米「福、笑い」/提供:JA全農福島

また、参加賞として、福島県を代表する農産物の一つ「あかつき桃」の果汁を使ったニッポンエール「神セブングミ」が贈られた。

福島県予選会 結果

※各カテゴリー上位4名が福島県代表

ホープス男子

1位 小澤佑眞(本宮卓球クラブ)
2位 近野葵(郡山ふれあい卓球センター)
3位 岸本郷雅(富久山卓球クラブ)
3位 羽柴陽輝(喜多方卓球ランド)


写真:ホープス男子入賞者/撮影:ラリーズ編集部

ホープス女子

1位 遠藤宇咲(サンシャイン)
2位 竹森心晴(勿来卓球クラブ)
3位 鈴木愛和(本宮卓球クラブ)
3位 渡辺芹夏(四倉卓球クラブ)


写真:ホープス女子入賞者/撮影:ラリーズ編集部

カブ男子

1位 木田貴喜(いわき卓球)
2位 門馬我空(いわき卓球)
3位 唐橋盟(喜多方卓球ランド)
3位 遠藤伝(サンシャイン)


写真:カブ男子入賞者/撮影:ラリーズ編集部

※上位2名が全日本ホカバ棄権のため、全日本ホカバ出場者は下記4名
唐橋盟(喜多方卓球ランド)
遠藤伝(サンシャイン)
小山田光基(郡山第一卓球クラブ)
伊関大翔(喜多方卓球ランド)

カブ女子

1位 三瓶奏美(勿来卓球クラブ)
2位 佐藤結愛(郡山第一卓球クラブ)
3位 川﨑理未(いわき卓球)
3位 佐々木唯(富久山卓球クラブ)


写真:カブ女子入賞者/撮影:ラリーズ編集部

バンビ男子

1位 佐藤翔陽(平野TTC)
2位 森田悠暉(郡山第一卓球クラブ)
3位 古川友己(富久山卓球クラブ)
3位 原翔(小高スポ小)


写真:バンビ男子入賞者/撮影:ラリーズ編集部

バンビ女子

1位 藤井彩(富久山卓球クラブ)
2位 佐々木愛(富久山卓球クラブ)
3位 酒井ふく(サンシャイン)
3位 佐藤結優(郡山第一卓球クラブ)


写真:バンビ女子入賞者/撮影:ラリーズ編集部

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取材・文:槌谷昭人