
【コラム】勢いとは何から生まれるのか 7年目で掴んだT.T彩たま初優勝の歓喜をめぐって
理由2:拠点練習場が生むコミュニケーション
毎年言っている気がするが、チームが専用練習場を保有している意味は、強化面はもちろん、コミュニケーションにおいても大きな意味をもつ。
それまで明治大学卓球部のコーチだった水野監督は、今季、明治大学出身ではない曽根翔、小林広夢、木造勇人とのコミュニケーションに最も時間を割いてきたという。
「その3人は毎日ご飯に行きましたし、“もうちょっとこうやったら”っていう話を練習でも常に会話するよう心がけてやっていました。特別何かをやったわけではないですけど、やっぱり信用してもらえるようにいろいろ会話してきたことが一番大きいかなと思ってます。監督は選手に信用してもらえないと、言うことを聞いてもらえないので」
一方で、明治大学の後輩である有延大夢には“2点起用でいくから”と常に鼓舞し続け、有延も“期待してもらったことが原動力になった”と感謝する。“有延で負けたら仕方ないと思ってる”、そう言ってくれる監督に恩返ししたかった、と試合後、有延は振り返った。
写真:有延大夢(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部
水野監督自身も埼玉県に移住し、選手とのコミュニケーションに充てられる時間を作った。
共に過ごす時間を作り、意識して多くの会話をすることで監督と選手間に信頼関係が生まれる。それはスタッフと監督、スタッフと選手も同じことだろう。
試合後、T.T彩たま取締役会長の柏原哲郎氏が「優勝がこんなに嬉しいものとは知らなかったよ」と喜び合っているのを見ながら、ふと、チーム力や応援される理由は、こんなところにも現れると思った。
写真:一球ずつ歓喜するT.T彩たまスタッフたち/撮影:ラリーズ編集部
理由3:もちろんT.T彩たまの大応援
T.T彩たまの応援も、いつにもまして気持ちがこもっていた。7年目の初優勝に向けて、観客席も一体となって必死で戦っていた。東京開催のプレーオフは、関東圏のT.T彩たまにとって、間違いなく強みだった。
終盤の足踏み応援は、パリ五輪における現地のフランスチーム応援を彷彿とさせる迫力だった。
普段、目に見えない思いを背負って戦う卓球トップ選手たちだが、ここまで目に見えて身体に感じる応援や熱狂の坩堝でプレーすることは、アスリートとして無常の喜びだろう。
ここで試合をしたいと選手が思える場所が、Tリーグに生まれていることは、選手にとっても価値だ。
写真:2024-25シーズン男子ファイナルの様子/撮影:ラリーズ編集部
【提言】リーグにも勢いを
リーグ自体もまた、“勢い”と変革が必要な時期だ。
ほんの一例を挙げると、このプレーオフも、進出チームでのホーム開催は試してみるべきだし、そのためには各チームの会場予約を考えると、遅くとも一年半前にはチームの合意を取って動き出す必要があるだろう。
もっと小さい一例を挙げるなら、手拍子を煽る試合中のBGMは、なぜ同じ1曲からずっと変えないのだろう。試合前イベントの各プログラムはどんな検討がされたのか。
創設から7シーズンを終えたTリーグは、課題と可能性を湛えている。
毎年、プレーオフファイナルと開幕戦は熱狂に包まれ、全日本卓球にもない観戦空間を生んだ。ただ、チームにとってみるとそれは、恵まれた大都市・東京の代々木第2体育館という場所、そして、地方のチーム主催ホームマッチとは比較にならない予算が投下されているからだ。
チームにとっての勝ちはリーグ優勝だが、いま、リーグにとっての勝ちは何なのか。大きな卓球界の未来のための施策を始めるべきだ。
そして、その挑戦は細部まで設計され、常に勝ちに向かって真剣なコミュニケーションが行なわれていること。
勢いはそこから生まれることを、今日のT.T彩たまの歓喜が教えてくれる。
写真:7年目でファイナル初優勝を飾ったT.T彩たま/撮影:ラリーズ編集部
取材・文:槌谷昭人(ラリーズ メディア事業本部長 兼 金沢ポート取締役)
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