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【卓球審判革命なるか】エッジ/サイドをAI判定『ダイワの1mm』開発進んでます

「ダイワの1mm」の画期的な特徴

当初は、ダイワ通信の主軸事業である防犯カメラ技術を用いて、ハイフレームカメラとAI技術のみを組み合わせる方向で開発を始めました。

しかし、精度の高い判定結果を出すには、1台につき複数のハイフレームカメラが必要となること、選手がカメラに被る場面の想定、リアルタイム判定に時間がかかってしまうこと、汎用モデル開発が難しいことなどがわかってきました。

ダイワ通信
写真:検証実験に用意されたハイフレームカメラ/撮影:金沢ポート

そこで、卓球台のサイド面に最先端技術のセンサーテープを貼る方向に方針転換したのです。
ちょうど「三笘の1ミリ」が、ボールに内蔵されたセンサーチップによって計測されたように。

これにより、審判のエッジ/サイド判断の際に提供される情報が、これまでのビデオ判定を含む「ボールの軌道を見る人間の視覚情報」から「卓球台の当たった場所で異なる振動波形からAIが判断する確率情報」へと変化することが、今回の「ダイワの1mm」開発の最も画期的なところだと、私は考えています。

ダイワの1mm
写真:まだ実験段階のセンサーテープ、製品化の段階では卓球台に内蔵も検討したいとのこと/撮影:金沢ポート

現在地と今後の開発予定

では、「ダイワの1mm」は具体的にどういう仕組みなのか、もう少し詳しくダイワ通信技術サポートの山田航さんに聞いてみました。

「サイドに貼ったセンサーテープに近ければ近いほど、振動を測定する数値は大きくなります。例えば0-100までの閾値だとすれば、サイドは100に近く、エッジはおよそ40-50前後を示します。天板の表面で行われる通常のラリーは10-20の範囲です。AI学習を繰り返すことによってその判断精度を高めていきます」

ダイワの1mm
写真:『ダイワの1mm』検証実験の様子/撮影:金沢ポート

五十嵐史弥選手「納得できる二次情報があるのはありがたい」

今回、フォア側からの引き合い、フォア前レシーブ、バック側からも、と、複数の方向からエッジ/サイドを狙うという、変わった実験に参加してもらった五十嵐選手に感想を聞いてみました。

「試合の中では入ったか入ってないか、選手は目で追えないときもあります。相手も含めて、すぐに納得できる二次情報があるのはありがたいです」

“こんなに簡単な機材なのに”と、驚きを隠せない様子の五十嵐選手でした。匠の技ほど簡単に見えるのは、卓球の技術とも少し似ているのかも。

ダイワの1mm
写真:ネットの検証実験も行った五十嵐史弥(金沢ポート)/提供:金沢ポート

「ダイワの1mmじゃなくて、0.1mmだった」

ダイワ通信の山田さんに、この日、実際に五十嵐選手に打ってもらった検証実験でわかったことはなにか聞いてみました。

「選手のボールに対しても、思った以上にしっかり数字が取れていたことは良い結果でした。明らかなエッジ、サイドについては現時点では間違いはありませんでした。反面、本当に必要なのは、エッジ/サイドの際どいボールの判定精度なので、そこはまだAI学習のサンプルが足りていないこともわかりました」

同じエッジでも、90°角に対してボールがどの入射角で入るかによって示す数字が異なるため(サイドに近いエッジは数値もサイドに近くなる)、サイド面のセンサーテープを貼る位置も含めて、まだまだこれから開発・検証が必要ということでした。

「始めてみると、卓球の場合1mmじゃなくて、0.1mmでしたね」と、岩本社長と社員のみなさんは、むしろ技術屋魂に火がついているように見えました。

ダイワ通信
写真:岩本秀成社長(ダイワ通信)/提供:金沢ポート

金沢ポートとダイワ通信の共同開発は続きます。いつか、市民大会で手軽にみなさんが実感できるシステムを目指して。

案外、他競技の方々も興味を持っていただいているようで、ダイワ通信の元には、他競技団体から“こっちでも一緒に開発できないか”という問い合わせも来ているとのことです。

プロスポーツチームのパートナーシップって、こういうことだと思っています。

新しい波は、金沢からやってきます。

ダイワ通信
写真:『ダイワの1mm』検証実験の様子/撮影:金沢ポート

参考:https://www.tokyo-np.co.jp/article/227713

取材・文:槌谷昭人(ラリーズ編集長 兼 金沢ポート取締役)

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