新記録V9ならず 愛工大名電・今枝一郎監督「自分の夢に乗っかってくれてありがとうな」<卓球・インターハイ2025>

<第94回全国高等学校卓球選手権大会 日時:7月31日~8月4日 場所:山口県・J:COMアリーナ(下関市総合体育館)>

4日、インターハイは大会最終日を迎え、全競技が終了した。

男子学校対抗で史上最多となる9連覇を目指した愛工大名電は、準決勝で育英に惜しくも敗れ、優勝を逃した。

大会後、愛工大名電の今枝一郎監督に今大会の総括を聞いた。

今枝一郎監督コメント

面田選手のシングルス3位について

彼はシングルス何位という結果を持っている選手じゃないんですけれども、優勝する可能性がある選手だと思っていたので、優勝させたいと思って準備してきたつもりです。

本人は今まで結果が出ていないかったことが心残りだったみたいですが、団体戦で彼の勝ちがなかったらとっくにうちの連覇は止まっていますし、勝つときは誰も取れないようなボールを打って勝ってくれていました。

ですが、今回のシングルスでは関西の岸本君や北信越チャンピオンの山岸君、優勝候補筆頭だった岩井田君にも勝っているわけなので、これまで準備してきた成果が出たのかなとは思いますし、本人も少し満足した部分はあったんじゃないでしょうか。

ただ、まだ優勝を狙うほどのメンタルではなかったのかなとは思います。本人も「岩井田君に勝って少し気が抜けた」と言っていたので。

優勝を目指すレベルではあったと思いますが、優勝はそんなに簡単なことではないので。

学校対抗については

悔しいですね。

やっぱり昨日、野田学園さんと育英さんが決勝戦を戦っている姿、優勝された野田学園さんを見ると、「この舞台でやりたかったな」と思いました。志半ばだったなとは思うんですけれども、これが実力かなと。力及ばずだなっていう風には思っています。

連覇の新記録に対するプレッシャーはあったのでしょうか

そうですね。半端じゃないプレッシャーがありました。

これはおそらく誰も分からないと思います。誰も想像できないです。ありがたいことに、私しか経験できない経験をさせていただいてるなと思っていました。

一方で今後は肩の荷が降りる部分もあるのではないでしょうか?

そうですね。むしろそうしないと通用しないですよね。今の野田学園さん、星槎さんは最先端を進んでいらっしゃると思うんで、ウチも進化しないとズルズルと勝てなくなるというのは目に見えています。ですので、再チャレンジしないといけないと思いますね。

それでも、やっぱり学校対抗は優勝したかったですね。

そもそも僕らの連覇が始まった年は、今の選手が卓球を始めたぐらいの時なんですよ。今の高校1年生、2年生がラケットを持った時から始まった連覇を引き継いできた。

連覇を誇らしくは思いつつも、「連覇が続いてなければ気楽に自分のことを考えて準備できたろうに」とも思うわけです。なので、選手にはもう「ごめんね」と謝るしかなくて。

「たまたま続いてる連覇によって、きっとあなたたちにも余分なプレッシャーがかかっている。申し訳ない」と。

一方で、「こんなありがたいプレッシャーかかること、人生でそうそうないよ。これも1つやりがいだよ」と、話しながらここまで来ました。

なので、準決勝で負けたときは「自分の夢に乗っかってくれて、巻き込んでしまって申し訳なかった。ありがとうな」って、みんなと握手しました。

それだけ歴史があるということですね

そうですね。よくここまで繋いできたなと、終わったからこそ、負けてしまったからこそ、自分たちを一度褒めてあげたいですね。

ただ、本音は新記録を作ってから負けたかったですね(笑)。

改めて8連覇を振り返るといかがでしたか

見ている人からは「勝って当たり前」と思われるかもしれないんですが、毎回ギリギリなんです。

濵田(一輝)、篠塚(大登)、谷垣(佑真)たちがいたときも、東山さんに5番まで回されて、5番の谷垣も2-2でやってましたからね。決勝の野田学園さんとの試合も、1番の篠塚がギリギリ勝って、5番で谷垣が勝ったおかげで優勝できましたし。

去年も、坂井(雄飛)もあと1点というところまで追いつめられていましたし、萩原(啓至)のときも準決勝で出雲北陵に追い詰められました。

全部がギリギリです。

けど、振り返ると楽しかったんです。結局は勝っていたから楽しい思い出しかなくて、ヒリヒリした部分を乗り越えて、楽しい思い出に変えていました。

当時も学校で練習していて、「ここ大丈夫か?」「こういうふうになったらどうすんだ?」って聞くと、「先生、大丈夫です。俺たちに任せといてください」って言ってくれる選手たちが多くて、本当に頼もしかった。「やばいです」っていうやつは本当にいなくて、「やります!」というような選手たちばかりだったんで、また一からそういう選手たちを育てないといけないなと思いますね。

文:ラリーズ編集部