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「何度も引退を考えた」カットマン・村松雄斗がそれでも現役を続ける理由<全日本卓球2023>

27日の全日本選手権、男子シングルス5回戦で日本を代表するトップ選手、張本智和(IMG)にゲームカウント1-4で敗れた村松雄斗(La VIES)。

「負けると自分の存在意義が分からなくなる。現役引退を何度も考えた」試合後、そう口にするほどの苦しみの中、何が村松を動かし続けているのか、その心根に迫った。


写真:5回戦で村松雄斗(La VIES)に勝利した張本智和(IMG)/撮影:ラリーズ編集部

「ベストを尽くしてきた。でももっと上に行きたい」

村松雄斗、日本を代表するカットマンの一人だ。

ジュニア時代は将来を期待され、ユース五輪では銀メダルを獲得。

実業団の強豪チーム・東京アートに所属し、世界選手権に2度出場した。


写真:村松雄斗(La VIES)/撮影:ラリーズ編集部

日本代表として、世界ランキング21位まで上り詰めた実力者だ。

しかし近年は長く膝の怪我に苦しめられ、思うようなプレーができない時期が続いている。

村松雄斗
写真:張本智和(IMG)と対戦する村松雄斗(La VIES)/撮影:ラリーズ編集部

今大会は5回戦で張本に敗れ、肩を落とした。

「本当はもっと粘りたい。でも昨日(26日)より膝が痛くて、思うように動けなかった」

実は年末、医者に8週間休むよう診断されたが、1週間のみ休養を取り、痛み止めを使いながら全日本に臨んだ。


写真:村松雄斗(La VIES)/撮影:ラリーズ編集部

「年末に良い練習ができず、張本との試合も勝てなかった。ここ数年、応援してくれる人の期待に応えらず、悔しい」苦しい胸の内を明かした。

それでも、2018年のTリーグでは、日本人キラーと称される黄鎮廷(ウォンチュンティン・中国香港)に勝利し、2021年はアジア選手権日本代表権を自力で勝ち取るなど、ジュニア時代の輝きを彷彿とさせるプレーを見せてきた。

写真:アジア選手権日本代表選考会での村松雄斗/提供:長田洋平/アフロスポーツ
写真:アジア選手権日本代表選考会での村松雄斗/提供:長田洋平/アフロスポーツ

「目の前の試合で自分のベストを尽くしてきた。でももっと上に行きたいという思いもありました」

東京アートの休部、2度目のブンデスリーグ挑戦

そんな村松に追い打ちをかけるような事態が起きる。

2022年2月、高校卒業後から7年間所属してきた東京アート卓球部が、突然の休部を発表した。

「びっくりしました。すぐに先のことは考えられなかったけど、チャンスだと捉え直して、もう一度海外に挑戦しよう。そう思い、ブンデスリーグ参戦を決めました」

村松雄斗
写真:東京アート所属当時の村松雄斗/撮影:ラリーズ編集部

日本でプレーするという選択肢もあっただろう。

「日本は言葉も通じるし、快適だからすごく迷いました。でもプロ選手として沢山試合に出て、結果を出したかった」

ブンデスリーグ2部昇格チームのマインツ05に加入し、4年振りのブンデスリーグ参戦を決めた。


写真:村松雄斗(La VIES)/撮影:ラリーズ編集部

迎えた2022‐2023シーズン、前半戦ではシングルス14勝3敗、10勝を挙げた2位の選手を大きく引き離し、個人成績1位に輝いた。

「結果を出して久々に注目されて、素直に嬉しかったですね」少しばかり笑顔を見せ、自身の活躍を振り返った。


写真:村松雄斗(La VIES)/撮影:ラリーズ編集部

しかし現在チームはリーグ最下位と、苦戦が続いている。

村松自身が勝ち星を重ねてもチームが勝てない、そんな状況にもどかしさを感じないのだろうか。

「チームメイトに対して、何で負けるんだよとは全く思わない。みんな常に全力だし、負けたくて負けてる訳じゃない。残りの試合も自分が勝って、チームを少しでも引っ張っていきたい」


写真:村松雄斗(La VIES)/撮影:ラリーズ編集部

自身も満身創痍ながら、エースとしてチームメイトを労いながら、前を向く。

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