日本代表が訪問した卓球場オーナーが語るアメリカ卓球最前線「アマチュアがプロと試合できる!?」
今話題の「アメリカ卓球レイティングシステム」とは?
――アメリカには全国規模の卓球レイティングシステムがあると聞きました。
ディラン:はい。アメリカでは、プロとアマチュアの垣根を越えて試合できる「レイティングシステム」をベースにした大会が開催されており、レイティングの基準はWTTを参考にしています。
例えば、先ほどのコウ・レイは世界ランキング183位ですが、アメリカのレイティングシステムだとレート2852になります。目安としては、世界大会などで活躍する男子選手でレート2700~2900ぐらいです。
もし馬龍(マロン)が参加したら、2900~3000ぐらいですね。
――一般選手だとどのぐらいの数値になるんでしょうか?
ディラン:パラ日本代表コーチを務めていた楠原憧子(専修大出身)さんが以前私のクラブに来てくれて、クラブ主催のレイティングトーナメントに参加してくれました。彼女はトーナメントで勝ち進んだんですが、最終的にはレート2600ぐらいのルーマニア人の男子選手に負けました。
しかし、その過程で2500ぐらいの選手には勝っていたので、最終的なレートは2495ぐらいです。
――数値で自分の実力が可視化されるのは、やっぱり面白いですね。
写真:Texas Table Tennis Club/提供:Texas Table Tennis Club
ディラン:さらに、賞金も出ます。賞金は各クラブが負担しますが、いくつかのクラブではスポンサーがいるので、そういったクラブの賞金は高いですね。高いところだと、優勝者が2~3000ドルぐらいです。
さらに、トーナメントは毎週どこかのクラブで開催されています。なので、強い選手は大会に出続けて勝ち続ければ、その賞金だけで生活できたりしますね。
――めちゃくちゃ夢がありますね、その生活(笑)
卓球の話を日常会話に
日本では個人の卓球場や外部の指導員による指導で強化を図ることが多いが、アメリカは全国的な指導プログラムを整備して強化を図る。ともにメリット、デメリットはあるが、アメリカのシステムは「全選手の底上げ」に繋がると感じた。
もちろん、現時点での実力を比較すると、日本の方がアメリカよりも卓球の実力は高いと言える。しかし、整備されたアメリカの指導プログラムで育った選手が世界で活躍し、日本を脅かす存在になることもあり得ない話ではない。
また、学校教育の指導プログラムの整備やレイティングシステムなど「卓球の普及」という点に関して、日本がアメリカを見習うべき部分もあるのではなかろうか。
この原稿を書いている今、カタールではサッカーW杯が開催されている。
「昨日〇〇がゴール決めたよな!」「明日の試合、絶対見る!」
街を歩けば、誰もがサッカーの話題を口にしている。
「昨日の世界卓球、〇〇が中国の〇〇に勝ったよな!」「〇〇のチキータ、ヤバすぎた(笑)」
こんな会話が日本の至るところで聞こえてくる未来を創るヒントは、アメリカにあったのかもしれない。
取材・文:和田遥樹
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