卓球でまちづくりを行う具体的な手順とは?【連載|卓球でまちづくり#4】

はじめまして。

NPO法人日本卓球療法協会理事長の長渕晃二と申します。

私は長年、介護・福祉やまちづくりに携わってきましたが、そのいずれにも卓球が活きることはたくさんありました。

そこで本連載「卓球でまちづくり」では、わたしのこれまでの経験などを交えながら、卓球を通じた地域活性の可能性を全4回にわたって探っていきます。

第4回では、「卓球でまちづくりを行う具体的な手順」というテーマでお話しさせていただきます。

>>シニア世代からの卓球入門 第1回:卓球のおもしろさと連載のねらい

 

まちづくりの方法

卓球でまちづくり

ここではまちづくりをすすめる「しかけ役・つなぎ役」のための手順・ノウハウを述べていきます。

地域に合ったまちづくりをすすめていきましょう。

 

つかむ・知らせる

まずは、「つかむ・知らせる」やり方です。

地域課題や社会資源をつかむ

まずは、「地域特有の生活問題」「福祉施設の有無」「地域産業の特徴や課題」「地域や近隣地域の学校・企業」などについて、在住・在勤や関係者のナマの声を積極的につかんでおきましょう。

卓球で出会った方以外では、特に民生委員や地域の世話好きな方、居酒屋談義などからも学べます。

広報

つかめた課題を卓球ではどう解決・改善できそうかを思案しつつ、口コミやSNSなどで問題提起し、卓球でまちづくりの仲間を広げていきましょう。

 

つなげる・話し合う

続いて、「つなげる・話し合う」やり方です。

誰をいかに巻き込むか

つかめた課題に関して、発言力がある地域ボスや経営者とのコミュニケーションを密にし、顔を立て、自らは目立たず影ながら黒子のように動きます。

解決・改善に必要な人材を徐々に巻き込んでいきます。

信頼関係づくりと「時間」

多くの人と日々コミュニケーションを重ねれば重ねるほど、地域の方々に受け入れられます。

課題や事業期間により急ぐべきものは、有力者によるトップダウンで進めなければならない場合がありますが、時間の制約がなければじっくりコツコツ進めていけると良いでしょう。

 

計画と実施

そして、まちづくりには計画と実行が欠かせません。

ここでは、具体的な手法を紹介します。

まちづくり計画と団体支援計画

計画には、自分の中での心づもりとしての構想もあれば、公的で明文化された計画もあります。

可能なら関係者とともに数か年の「卓球まちづくり計画」を作るのも良いでしょう。

その際には、自治体の各種の計画との整合性も考慮しておきましょう。

企業・学校や団体への支援計画は、明文化しないまでも関係者と話し合っておくと良いと思います。

記録と評価の資料

実施した事業の記録と評価のための資料は、動画やメディア掲載も含めて、貴重な資料となります。

助成金を得ていくなど、あとあと役に立ちます。

 

ふりかえる・広める

まちづくりができたら、それを振り返り、広める工程も忘れてはなりません。

事後評価

人件費を含む費用対効果や、反省点、今後の課題と展望などについて、関係者と話し合っておきましょう。

他市・他国への波及

事業の実施状況や効果を、メディアやSNSを通じて他の地域へ発信しておくと、視察受け入れや講師依頼につながり、他地域への波及が見込まれます。

他から注目をされると住民のやりがいや誇りにもなります。

 

組織・財源・拠点

さらに、まちづくりを行ううえでは組織・財源・拠点の整備も欠かせません。

継続化のための組織

まだ例はありませんが、自治体に卓球まちづくり推進委員会を設置できると良いでしょう。

キーパーソンがいなくなると事業が立ち消えてしまうような事態にはならないようにします。

自主財源と依存財源

自前の活動資金としては、参加費やスポンサー協賛金、クラウドファンディング、財団助成金、共同募金配分金、国・都道府県からの補助金などがあります。

補助金や助成金等の分野としては、スポーツ、健康・福祉、教育、コミュニティ・地域創生など幅広いので、多分野にアンテナを張っておくと良いでしょう。

拠点・備品の充実

地域の店舗や企業や倉庫、空き家、その他で卓球台が置けそうなところを新たな拠点にしていくことが考えられます。

用具調達は、購入、メーカーからの寄贈、全国から寄付を募るなど多様にあります。

 

おわりに~魅力あるまちに向けて~

地域活性化・少子化対策でよく言われるのは、「若い女性が都市部へ出ていかない。あるいは戻って来るまちに」という点です。

「勤務先として保育・介護がある」「世界に向けた起業として卓球や福祉もあり得る」「観光と卓球のコラボ」「介護・育児負担の軽減のための施設に卓球が取り入れられている」、その他にも卓球でまちづくりすることで見えてくる利点はありそうです。

オンライン普及により、地理的不利があっても、アイデア次第で可能性は広がります。地域性や時宜にかなった「卓球でまちづくり」が各地に広がることを期待したいと思います。

 

筆者プロフィール:長渕晃二(ながぶちこうじ)

長渕晃二,卓球

NPO法人日本卓球療法協会理事長。NPO法人日本ピンポンパーキンソン理事。明治学院大学大学院修了(社会福祉学修士)。短大・専門学校での教員・卓球顧問や福祉施設での卓球経験あり。現在有料老人ホーム、デイサービス、介護予防サロン、メンタルクリニックで卓球療法を行う。著書は『コミュニティワーカー実践物語』(筒井書房)、『卓球療法士テキスト』『卓球療法入門』(サイドウェイズ)ほか。