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【吠えろ、神巧也 前編】“主将退団”の裏側に隠された苦悩「弱いなあ、自分」

チームの充実とキャプテンの孤独

Tリーグ男子は、4チームしかない。各チーム登録人数上限12人に対して、シングルスで出場できるのは毎試合たった3人だけだ。

昨季4thシーズンのT.T彩たまは、丹羽孝希の加入、曽根翔・篠塚大登の成長、松平健太、上田仁の充実など、育成と強化が実を結び、4年目にして初のファイナルに出場、2位でシーズンを終えた。

T.T彩たま
写真:ホーム最終戦を終えてファンに挨拶をするT.T彩たま/撮影:ラリーズ編集部神が出場できなくても、キャプテンとしての仕事は毎日あった。
次の日の予定連絡、選手間の取りまとめなど、選手というより主務の業務をこなしながら、ふと感じた。

みんな遠いところに行っちゃったな、と。

チームが13連敗した3rdシーズン、自分が負けても松平健太が勝ってチームの連敗が止まったとき、涙が出そうなほど嬉しかったことを思い出した。
「ありがとう健太さん、回り込み一撃で決めてくれてって。そのあとファンの方たちと、良かったねって素直に喜び合えたのに」

写真:松平健太(T.T彩たま)/撮影:槌谷昭人
写真:松平健太と肘タッチをする神巧也/撮影:ラリーズ編集部

弱いなあ自分

環境を変えるしかない、と思った。
「いろいろ言い訳を探している自分が嫌で情けなくて。自分の志や心持ちで打破できるほど、自分は強くないことも知りました。弱いなあ自分って。でも、環境が変われば、自分も変わるかもしれない」

これだけファンに愛された選手だ。チームに残ろうと思えばいくらでもその方法はあっただろう。
でも神は首を振る。

「これは、ラケット1本でプロになった人しかわからない気持ちかもしれません」

不意に、覚悟をのぞかせる。

そうだ。
せっかくなのに、なんて言葉は、4年前に会社員を辞めてプロ卓球選手の道を選んだときに置いてきたのだ。

「Tリーグに来て、一回高い山に挑戦して、ある程度登れて、そしてドンと落ちて。でもあの景色を知ったからこその今のつらさだと思うんです」

神巧也
写真:4季目ベンチ外から応援する神巧也/撮影:ラリーズ編集部## 勝つってこんなに嬉しいんだ

計4シーズンの中で最も嬉しかった瞬間を聞いてみた。

「それは迷わず言えます」即答だった。

「試合に勝ってベンチに戻るとき、その後ろにいるT.T彩たまの爆援團に“ヨー!”ってガッツポーズして、吠えるんです。そしたら、みんなが“おおお!”って盛り上がる、その瞬間です。あれは最高ですね、勝つってこんなに嬉しいんだって思いました。国際大会で勝つのも格上の選手に勝つのも嬉しいんですけど、勝った瞬間の喜びを誰かと共有できる嬉しさっていうのは、半端ないですね」

神巧也
写真:神巧也 2019-2020シーズン/撮影:おたけさんまるで心が溶けるようでした、と頬を緩めた神の表情は、Tリーグが創設にあたって目指したチームとファンの形が結実していたことを表している。

そして、ベンチ入りすらしていないキャプテンに向けて「ジンタク、キャプテンありがとう」という横断幕があったことは、チームの物語を応援する土壌が個人競技・卓球にも生まれ始めたことを示している。

T.T彩たま
写真:横断幕を掲げるT.T彩たま爆援團/提供:おたけさん(後編は4月中に公開予定)

神巧也インタビュー(2020年4月公開)

神巧也
写真:神巧也(T.T彩たま)/撮影:保田敬介

>>1年でWR269上昇 “世界で一番伸びた卓球選手”神巧也、飛躍の裏側

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