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「30点のラバー、これじゃあ使えません」ミズノ開発陣と大島祐哉、ともに歩んだ苦悩の2年間[PR]

定量的な評価が欲しい開発 定性的な評価をする選手

樋口と大島の間に挟まれたのが、契約アスリートを担当する橋爪だった。橋爪は駒澤大学卓球部OBで選手畑の人間だった。度重なる苦労があったと打ち明ける。

「すでにラバー評価の定量化がなされていて、樋口さんは開発目線で論理的に数値も含めて説明していた。でも自分はすべて感覚でしか説明したことがなかった。最初は樋口さんが言ってることも理解できないし、僕が伝えたいことも表現できなかった」。

担当となった当初、樋口から橋爪には厳しい言葉も飛んだ。橋爪は当時をこう振り返る。

「違う視点で話されるので、馴染みの無い表現に最初は非常に困惑した。でも、結局良いものを作るためには、樋口さんが理解できる言葉にして表現していかないといけない。樋口さんの熱意や思いをダイレクトに浴びて、自分も使命感を持てた」。

橋爪は樋口と密にコミュニケーションを取り、共通言語を作り上げていった。「一時期、樋口さんとの通話履歴が物凄くて、夜遅くまで話し込んだ日もありました。電話の数がもう彼女かってくらいすごかった(笑)」。

写真:ミズノプロモーション担当の橋爪克弥/撮影:田口沙織
写真:ミズノプロモーション担当の橋爪克弥/撮影:田口沙織## 開発陣と大島祐哉、両方に向き合う橋爪の苦悩

大島によるQシリーズの試打は何十枚、何百枚と続いた。樋口、橋爪、大島による三者でのミーティングも何度も行われた。大島からも「硬度を何度上げてほしい」などの具体的なフィードバックが増えた。ラバーの質が向上している実感は3人ともにあった。

大島祐哉
写真:大島祐哉(木下グループ)/撮影:田口沙織しかし、大島はラバーを変更しなかった。当時日本代表として、ワールドツアーで戦う中でのラバー変更は、成績、引いては選手生命にも関わってくる。なかなか踏ん切りがつかないまま時だけが過ぎていた。

橋爪はそれでも根気良く大島と真摯に向き合い続けた。ワールドツアーで負けが込んでいた時期には、試打サンプルと一緒に直筆で書いた手紙を同封したこともあった。

大島祐哉
写真:大島祐哉(木下グループ)/撮影:田口沙織「もうちょっと。あと一声が欲しい」。橋爪から上がってくる大島のフィードバックに対し、樋口は苛立っていた。「最後の一歩と言ってから、いつ決まるんだ」。ゴールの見えない開発は、時にチームを疲弊させた。

樋口は振り返る。「私たち開発・製造サイドはある種、無責任に“どこがゴールなんだ”って橋爪に言うんです。でも彼は、常に密なコミュニケーションを取り続けてくれた。難しい期間も乗り越えて、ある時、ゴールが見えた」。

「これでいけます」 大島からの返事

すでにラバーは「これで使えなかったらどうすればいいんだ」と橋爪ですら感じるレベルにまで到達していた。残すは、ワールドクラスで誰も使っていないラバーを使う、その覚悟を大島が持てるかだけになっていた。

大島祐哉
写真:大島祐哉の使用するラケット・ラバー/撮影:田口沙織橋爪は思い切って大島に提案した。「思い描いたレベルをもうクリアできているのであれば試合で使ってほしい。そこからは使いながら微調整していこう」。その頃、大島と橋爪には長年のやり取りを経て、信頼関係が築かれていた。大島も橋爪のゴール設定の提案に同意した。

「これで試合に出られるかどうかジャッジしてほしい」。橋爪は祈るような思いで大島に試打サンプルを送った。

そして、大島から橋爪に一通のLINEが入った。

「これでいけます」。

大島祐哉
写真:大島祐哉(木下グループ)/撮影:田口沙織大島はバックにQシリーズのラバーを使い、試合に出ることを決めた。

「正直震えましたね。もうたまらなかったです」。大島と毎日のように向き合ってきた橋爪には熱くこみ上げてくるものがあった。

今、オールミズノで戦う大島祐哉

写真:Tリーグサードシーズン開幕戦での大島祐哉(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部
写真:Tリーグサードシーズン開幕戦での大島祐哉(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部時は過ぎ、2020年11月17日、Tリーグ2020-2021シーズン開幕戦。大島はラケット、ラバーをオールミズノにし、コートに立っていた。

開幕戦で勝利し、全日本選手権ではベスト16とランク入り、Tリーグファイナルでは敗れはしたものの大激戦を演じ、健在ぶりを見せつけた。怪我から復帰し、フォアハンドはいつもにも増して、球が走っているようにも見えた。

大島はなぜ今、オールミズノで戦うことを選んだのか。

大島祐哉
写真:大島祐哉(木下グループ)/撮影:田口沙織(第5話 「引退するまでオールミズノで」“新興卓球メーカー”ミズノと大島祐哉の信頼関係 に続く)

取材:槌谷昭人(ラリーズ編集長)

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