Jリーグクラブの地域貢献活動事例5選|健康促進,福祉,教育などの事例を紹介

地域に根ざした存在であることは、Jリーグクラブの大きな特徴の一つです。

Jリーグクラブは試合で勝利を目指すだけでなく、日常の中で地域と関わり、地域の人々の暮らしや課題に寄り添う活動を続けてきました。

そこで本記事では、Jリーグクラブが各地で実践している地域貢献活動の事例を通して、スポーツが地域社会にもたらす可能性と、その役割について紹介していきます。

 

徳島ヴォルティス

1つ目が、徳島ヴォルティスの事例です。

「健康に暮らしたい」という思いは、世代や立場を問わず、多くの人に共通する願いです。

しかし、いざ運動を始めようと思っても、何から手をつければよいのか分からなかったり、一人では継続が難しかったりと、さまざまなハードルが存在します。

そうした課題に向き合う地域貢献活動が、徳島県美馬市で展開されています。

スポーツ指導のプロである徳島ヴォルティスのコーチ陣が、日々選手のコンディショニングに活用しているノウハウを地域住民向けに応用し、無理なく取り組める健康づくりプログラムを提供しています。

プログラムは、単なる運動指導にとどまらず、「運動できる体づくり」と「人と人がつながるコミュニティづくり」を重視して設計されています。

さらに、このプロジェクトが注目を集めている理由の一つが、資金面での工夫です。

参加者の健康状態や運動習慣など、あらかじめ設定した目標の達成度に応じて支払いが行われる「ソーシャルインパクトボンド」という成果連動型の仕組みを採用しています。

社会的成果を可視化しながら事業を進めるこの手法は、Jリーグクラブによる地域貢献活動の新しいモデルとして、経済産業省をはじめ全国から関心を集めています。

 

川崎フロンターレ

2つ目が、川崎フロンターレの事例です。

川崎フロンターレは、障がい者の正規就労移行を後押しするプロジェクトの一環として、ホームゲーム全試合において、スタジアムでの就労体験の場を提供しています。

試合当日に数万人の来場者を安全に迎え入れ、快適に観戦してもらうために欠かせない準備作業を、参加者が実際の仕事として担います。

スタジアム運営という“本物の現場”で働く経験を通じて、働くことの楽しさややりがいを感じてもらい、社会へ踏み出す一歩につなげることを目的としています。

この取り組みは、クラブ単独ではなく、NPOや福祉作業所、川崎市の事務局と連携して進められています。

最近では、この就労体験の場が、企業の人材育成や研修の場としても活用されるようになっています。

 

湘南ベルマーレ

3つ目が、湘南ベルマーレの事例です。

クラブは、地元に素敵な企業があり、仕事を心から楽しんでいる大人がいることを、地域の子どもたちに伝えたいという思いから、「まなべるま~れ」と名付けたプロジェクトを立ち上げました。

この取り組みでは、クラブの周囲にある多くの地域企業と連携し、湘南ベルマーレのフィロソフィである「たのしめてるか。」を掛け合わせながら、大人が生き生きと働く姿を子どもたちに届けています。

スポーツクラブという存在をハブに、企業と地域、そして子どもたちをつなぐことで、「地元で働くこと」「地元で生きること」を前向きに考えるきっかけを生み出しています。

 

セレッソ大阪

4つ目が、セレッソ大阪の事例です。

全国平均と比べて子どもの読書率が低いという課題を抱える大阪市において、「クラブとして何ができるのか」を考えたセレッソ大阪は、大阪市および大阪市立図書館と連携し、「読書推進プロジェクト 〜本を読んで、人生を豊かに〜」を継続的に実施しています。

子どもたちにとって、憧れの選手の言葉や行動は大きな影響力を持ちます。

「好きな選手が勧めているなら読んでみよう」と、本に手を伸ばすきっかけになることも少なくありません。

本を読むことで知識や読解力が高まるだけでなく、想像力や感性が育まれ、子どもたちの世界は大きく広がっていきます。

プロジェクトの一環として配布される読書手帳には、読んだ本の感想を記入できる仕組みが設けられています。

読書量に応じてクラブオリジナルのステッカーやノートがプレゼントされるなど、楽しみながら読書習慣を身につけられる工夫も特徴です。

また、図書館では選手がおすすめする一冊を展示し、読書への興味をさらに喚起しています。

さらに、スタジアムという非日常的で開放的な空間を活用した読書会も開催されています。

選手が普段使用しているロッカールームやベンチ、グラウンドレベルなど、普段は立ち入ることのできない場所で本を読む特別な体験には、子どもから高齢者まで幅広い世代が参加しています。

 

アルビレックス新潟

5つ目が、アルビレックス新潟の事例です。

病院や福祉施設にいるためにスタジアムへ足を運ぶことができない人たちにも、スポーツの「応援する力」を届けたいという思いから生まれたのが、「病院ビューイング」という取り組みです。

この企画は、新潟の医師の発案をきっかけに、Jリーグクラブと地域が連携して実施されている観戦イベントです。

病院内に観戦スペースを設け、患者やその家族、医療スタッフが一緒になって試合を楽しみます。

お気に入りの選手から届くビデオメッセージや、サポーターによる応援練習、ボランティアとともに観戦する仕掛けなど、スタジアムさながらの一体感を味わえる工夫が随所に盛り込まれています。

この活動は、患者だけでなく、その家族や病院で働くスタッフにも前向きな変化をもたらしました。

「次の試合が楽しみになる」「いつかはスタジアムで応援したい」といった気持ちが生まれ、日常に新たな楽しみが加わったといいます。現在は、安全に継続して実施するためのマニュアル整備も進められており、この取り組みは新潟県内にとどまらず、隣県の富山へも広がりを見せています。