森保ジャパンのエース、南野拓実 死の組の活路は10番に託された
写真:Andrew Kearns – CameraSport/Getty Images
(大会直前のため再掲載)
2022年11月から行われるカタールワールドカップ(W杯)で日本はE組に入り、ドイツ、スペインといった世界の強豪国を相手に戦いを挑む。そこで、サムライブルーの一員として本大会での活躍が期待される選手たちにスポットを当てて、そのキャリアを振り返っていきたい。
今回紹介するのはイングランドのリヴァプールから今夏フランスの名門モナコに移籍を果たし、本大会では日本のエースとして背番号10を背負うことが期待される南野拓実だ。(文・井本佳孝)
名門リヴァプールへの扉を切り開く
写真:gianliguori
1995年生まれの南野は中学生の時にセレッソ大阪の下部組織に入団し、2012年にトップチームでデビューした。トップチームへの昇格を果たした翌2013年シーズンにはルーキーながらチームの主力として活躍し、Jリーグベストヤングプレーヤー賞に輝く。国内でも期待の若手としてその存在が注目されるようになった。
南野は2015年1月にオーストリアの強豪ザルツブルクに移籍を果たし欧州でのキャリアをスタートさせる。約5シーズンにわたりプレーしたザルツブルクでは、二桁ゴールを複数回達成するなどフィニッシャーとしての能力を開花させた。チームの5度のリーグタイトルに貢献しチャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグ(EL)といった欧州最高峰の戦いも経験するなど、充実の時間を過ごした。
そんな日本人のアタッカーに目をつけたのがイングランドの名門リヴァプールだ。CLでユルゲン・クロップ監督率いる相手に目覚ましい活躍を見せた南野は、2020年の1月にプレミアリーグ挑戦の切符を掴み取る。モハメド・サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノと世界でも屈指の破壊力を誇る“フロントスリー”を相手に欧州でも最高峰のポジション争いに身を置くこととなった。
世界最高レベルの環境で研鑽を積む
南野に立ちはだかったのはマンチェスター・シティと並びイングランドの2大巨頭であるリヴァプールの壁。移籍初年度はチームはリーグ優勝を果たしたものの南野自身はノーゴールに終わり、続く2020-21シーズンもリーグ戦ではなかなか出番に恵まれず。後半にはサウサンプトンへのレンタル移籍を経験するなど、世界最高峰の強度とスピードを誇るプレミアリーグの舞台で苦境に立たされながらも研鑽を積んだ。
しかし、リヴァプールに復帰した2021-22シーズンにはカラバオカップ、FAカップなどを中心にチームのバックアッパーとして重宝され、貴重なゴールを連発。フロントスリーに加え、ディオゴ・ジョッタやルイス・ディアス、ディボック・オリギなど各国代表の猛者が並ぶ世界最高レベルのポジション争いに挑んだ。限られた時間の中で結果を残すなど、チームメイトやサポーターからもその存在は認められるまでになった。
南野の特徴はザルツブルク、リヴァプールで磨かれた運動量を活かしたプレッシングや守から攻への切り替えの速さ、そしてスコアラーとしての得点感覚だ。狭いスペースでも味方からのボールを引き出し、日本人ならではの敏捷性も活かしながら相手ゴールを脅かす。守備のタスクをこなした上でオーストリア時代から定評のあったゴールへ向かう動きが今季は大幅に増え、イングランドの地でも得点力が評価されるなど周りからの信頼感も増しているといっていい。
課題を挙げるとするとプレーの引き出しを増やすことだろう。南野はサラーやマネのような独力での突破やフィジカル能力を持ち合わせていない。彼らとは異なる能力でチームに貢献することが必要だ。味方を生かすことに長けたフィルミーノや、背丈が高くないもののフィジカルが強く得点力も高いジョッタといった世界レベルのチームメイトらとしのぎを削ってきた。新天地のモナコではチームのエースであるウィサム・ベン・イェデル、ドイツ代表のアタッカー、ケヴィン・フォラントらと共闘する。自らの武器を磨き上げることがフランスの名門でも求められるだろう。
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