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「カタールW杯」決勝トーナメント進出の立役者である板倉滉の涙が意味するもの

写真:板倉滉(7044sueishi/アフロ)

12月2日(日本時間AM4:00キックオフ)、カタールW杯グループE「日本対スペイン」の一戦が行われ、2-1で日本代表が勝利した。

まさかの大逆転勝利となった試合だったが、終了のホイッスルが鳴った後、1人だけ他の選手やスタッフとは違った涙を流した選手がいた。

板倉滉。

スペイン戦でイエローカードを受けたことにより、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦に出場することができないのだ。

嬉しさと悔しさが入り混じった感情による涙

前半39分、中盤のペドリにボールが入るタイミングでCBの板倉が激しくプレスを掛けた。

スペインにボールを回され、攻め手がなく劣勢に立たされていた時間帯だっただけに、「もっとアグレッシブに」という気持ちが前面に出た結果、ファウルとなり、イエローカードを提示されたのだ。

板倉自身、コスタリカ戦でイエローカードを1枚もらっている状況だっただけに、本来であればリスクのあるプレーは控えるべきなのだが、すでに日本にはそういった余裕がまったくなく、追い込まれていたためリスクを承知で飛び込んだのだろう。

この試合、左右のCBである板倉とW杯初出場となる谷口は、CBとは思えぬほど前に飛び出し中盤に入るボールに対しプレスを掛け続けた。

特に板倉のインターセプト数は日本の大きな武器となっていて、ドイツ戦、コスタリカ戦の2試合でも合計19回とチームでダントツの数値となっていた。

「引いて守るだけでは世界と対等に戦えない」

ポゼッションは劣っていても、中盤やバイタルエリアでボールを奪取し、素早くカウンターを仕掛けることこそ、日本サッカーが世界と渡り合える手段だと認識していたのだろう。

試合は後半から投入された三苫と堂安の勢いによって日本ペースとなり、後半3分に堂安、後半6分に田中碧がゴールを奪い、一気に試合をひっくり返した。

板倉は、吉田や冨安らと連携を取りながら、懸命にスペインの猛攻をしのぎ切った。

試合終了後、喜びの感情を爆発させる選手たちだったが、板倉の表情は違った。

その目には涙が光り、喜びとはまた違った表情を浮かべていたのだ。

試合後には、「嬉しい思いもあるし、次の試合に出られない悔しさもあった」とコメントしているように、嬉しさと悔しさが入り混じったことによる涙だったのだろう。

日本躍進の立役者である板倉をもう一度ピッチへ

W杯が始まる数ヶ月前に「板倉滉が膝靭帯を部分断裂」といったニュースが流れた際には、日本のサッカーファンの多くが「これで日本がドイツとスペインに勝つ可能性がなくなった」と落胆した。

しかし、板倉本人は諦めず着実に治療とリハビリに取り組み、W杯に間に合わせた。

怪我から復帰したばかりであったため、コンディションの面で不安視されていたが、グループリーグ3試合すべてでスタメンフル出場となった。

その抜群の守備能力とビルドアップ力で、日本のDFラインのMVP級の働きを見せたのだ。

「まだ戦いたい」

本人の心の中には、そういった気持ちで溢れているはずだ。

日本代表の選手たちは、「まだ見ぬ景色を見たい」という気持ちだけでベスト8を懸けたクロアチア戦に臨むのではなく、「板倉滉を再びプレーさせたい」といった気持ちも持って戦ってもらいたいものだ。

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