【女子日本代表】アジア女王として挑む、初のフットサルW杯──須賀雄大監督「『憧れと共感』を胸に、世界一へ挑む」

10月30日、JFAハウスにて「FIFAフットサル女子ワールドカップ フィリピン2025(11月21日~12月7日)」に臨むフットサル日本女子代表メンバーが発表された。

同日、記者会見に出席した須賀雄大監督は、女子フットサル史上初の開催となる世界大会に向け、「憧れと共感」「ハードワーク世界一」をスローガンに掲げ、アジア女王として世界の頂点を目指す決意を語った。

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自分たちの天井を測る大会にする

●須賀雄大監督|フットサル日本女子代表

──初開催となるワールドカップに臨む率直な気持ちを聞かせてください。

まず、W杯という大会が女子で初めて開催されるということ自体が本当に感慨深いです。日本女子代表チームとしてこの舞台に立てることを誇りに思っています。女子フットサルはこれまでに長い歴史があり、たくさんの選手、スタッフ、関係者が積み上げてきたものがあります。

その歴史の一つひとつが日本の強みだと思っています。そうした思いを大会にぶつけることが大事ですし、バトンをしっかりとつないで、次の世代に託すような大会にしたいです。このチームの監督に就任してから掲げているスローガンは「憧れと共感」です。誰にもできないようなスーパーなプレーを見せる憧れの存在でありながら、“誰でもできることを誰よりもやる”ことで共感してもらえるチームになる。ですから、スーパープレーだけでなく、泥臭いプレーもストロングポイントとして注目してもらえたらうれしいです。

──今回のメンバー選考でどのような点を重視しましたか?

アジアカップ優勝から少し時間が経ちましたが、その時に自分たちに足りなかった部分を確実に向上させなければいけないと、スタッフ全員で話してきました。アジアでは追われる立場でしたが、世界では挑戦する立場になります。特にブラジル、スペイン、ポルトガルのような世界ランキング上位国に勝つため、勝率を少しでも上げるために今回のメンバーを選びました。

──大会の組み合わせで同組になったポルトガルなど、世界の強豪国をどう見ていますか?

ポルトガルは女子フットサルの強化にすごく力を入れていて、技術・戦術・フィジカルのすべてが高いレベルにあります。ブラジルやスペインもそうです。そういった相手に対して、私たちはチームとしての戦術や規律を意識して挑むつもりですが、個人の力も求められる要素になります。特にピヴォのマッチアップをどう抑えるかが大事です。相手の強みを分析して、柔軟に戦い方を変えていくことが必要だと感じています。

──筏井りさ選手、そして初選出された中村みづき選手について教えてください。

筏井は最年長ということで、経験値が非常に高いです。チームに落ち着きを与えてくれる存在で、何年経っても学び続ける姿勢を崩さない選手です。そういう姿勢がチーム全体を引き締めてくれています。

中村については、立川アスレティックFCレディースで安定したプレーを続けており、それ以前からトリムカップや地域チャンピオンズリーグなどの全国大会でも非常に高いレベルで戦っている姿をウォッチしてきました。フィクソとして、世界の強豪相手にも勝つためのプレーができる選手だと判断しました。

──ピヴォ陣にはどんなプレーを求めていますか?

ピヴォはチームの最前線にいるポジションですが、ここの選手たちに求められるものは得点に直結するプレーだけでなく、守備のファーストラインでのハードワークです。

攻撃では、仮にボールが足元に入る回数が少なくても、何度もチャレンジして、何度も起点になる。奪ってから攻撃につなげる、その一つひとつの積み重ねが試合を動かすと思っています。攻守両面で相手にとって脅威になるようなプレーを期待しています。

──改めて、今大会の目標を教えてください。

アジアチャンピオンとして、世界一を目指します。FIFAランクはありますが、初めての大会ということで、どのチームが優勝するかは誰にも分かりません。ですが、全力で戦い抜くことが次の世代の“レガシー”になると思っています。自分たちの持てる力をすべて出し切って、そのうえで「自分たちの天井を測る大会」にしたいです。

──直前のコロンビア、イタリアとのトレーニングマッチの狙いについて教えてください。

(小西鉄平団長)南米、ヨーロッパの相手と実際に対戦することが目的です。アジア以外の相手に対して、どんなプレーが通用するのか、あるいは通用しないのかというデータを取って、修正点を洗い出します。また、短期間の遠征での適応力、試合運びのテンポなどを確認する意味でも重要な試合になります。

──世界大会という舞台の意義について、監督はどのように感じていますか?

(2011年に)女子サッカーが世界一になった時、多くの女性アスリートが「挑戦していいんだ」と感じたように、女子フットサルでも同じような影響を与えられると思っています。世界一を目指すことは簡単ではないですが、その過程で努力を喜びに変えられる存在です。

自分自身、5年前までは男子のクラブチームの監督をしていたなかで女子の代表監督を務めさせてもらい、5年が経ちました。その間、男子が、女子がというように分ける必要がないくらい、選手たちは非常にインテリジェンスもありますし、ハードワークもできます。

ただやはり、男子と女子ではそれぞれの良さが微妙に異なるものがあると思っていて、女子の謙虚な姿勢というのは、本当に見ている人を笑顔にさせられるな、と。仮に、試合がある程度決しているような展開でも、本当に最後のルーズボールにまで体を張っていくところなど、自分自身もリーグ戦を視察をするなかで学ばせてもらったところでもあります。

そうした姿を見ながら「共感」というワードをスローガンに入れました。まだまだチームとして強化していかなければならないですが、「憧れと共感」の特に「共感」の部分は、今戦っている選手たちから強く感じていただけると思いますし、それこそが女子フットサルの魅力の一つでもあると思います。

──W杯に臨むにあたり他種目の指導者からアドバイスをもらうことは?

(サッカー日本代表の)森保(一)監督とお話しする機会をいただきました。世界に挑む心構えというところでは、「本当にいつもどおり自信をもってやる」と。これが、森保さんの一番の秘訣だということでした。一見、当たり前のようにも感じますが、非常に深い言葉だなと。アジアカップも含めて、本当にギリギリな精神状態で、それができるかどうかが勝敗を分けると感じています。

そういう意味では、この大きな大会に挑むにあたって、いろんな策を練ったり、いろんなことをしなければいけないとも思いましたけど、森保さんの言葉を受けて立ち返ると、今までやってきたこと以上のものは出ないですし、どれだけ自信をもって、選手がこれまでの積み重ねをピッチで表現していくかということです。

今、その言葉をしっかりと受け取って、準備も含めてやっていきたいと思っています。

その名に恥じないプレーを

──キャプテンは今大会も伊藤果穂選手が務めるのでしょうか?

伊藤には今回もキャプテンをお願いしています。彼女はチームをまとめるリーダーシップがあるだけではなく、一人の選手としてピッチでどこまでやれるかという部分にも期待しています。チームマネジメントは全員でやるという意識をもっているので、彼女だけに頼るのではなく、全員で責任を共有しながら戦えたらと思います。

──江川涼選手は9月のトレーニングキャンプでは万全ではなかったですが、選出した理由を教えてください。

ご存知の通り、江川はアジアカップで怪我をしましたが、そこからW杯に向けて着実に回復して、Fリーグの上位リーグでも高い強度の試合を続けてきました。フィリピンとのトレーニングマッチは再度怪我をするリスクもあったのでスキップする判断をしました。これまで、この代表チームで戦いをしてきたなか、彼女にしか発揮できないリーダーシップがあると思っていますから、そこにも期待しています。

前線でのハードワークや守備の切り替え、チームを引っ張る部分を含めて、このチームに必要だと感じています。

──アジアカップのメンバーからは、四井沙樹選手が外れ、中村選手が入りました。そのほかにも、当落線上の選手たちを含めてメンバー入りできなかった選手もいます。そうした選手に伝えたことなどもありますか?

今回、14名を選ぶことは本当に難しいものでした。これまでの代表活動で、全員が必死に努力してきました。ラージリストにいる選手も、そこに入っていない選手も含めて、非常にレベルが高いからこそ、この女子代表はアジアでチャンピオンになって評価されたと思っています。

そうした意味でも、彼女たちの努力と、そしてクラブを運営しているみなさん、女子Fリーグを運営している方たちの努力の積み重ねというものがこの14人に反映されていると考えています。

その気持ちは常に選手たちには伝えていますし、クラブの監督、クラブスタッフのみなさんにもお会いするたびにそういった話をさせていただいています。アジアカップでも、怪我を含めていろんなトラブルが起こってしまうのはこの世界の難しい部分です。選手にとっては厳しく、難しい精神状態かもしれないですが、「常に準備をしていてほしい」という言葉は、数名の選手には伝えています。

自分は、この女子代表の監督になってから、常にフェアな選手選考を心がけてやってきました。ですから、今回メンバーに入れなかった選手に対して特別な何かを伝えるというよりも、今までの積み重ねとして今回があるということが伝わっていたらありがたいなという気持ちではいます。

──須賀監督はこれまで、日本の頂点、アジアの頂点の景色を見てきました。今度は世界の頂点を見る戦いに挑めるという意味で、覚悟や重さと同じように、「楽しみ」な気持ちも大きいのではないでしょうか?

アジアカップでは「W杯に出なければ、日本の女子フットサル界(の歩み)が一度ストップしてしまう」というような強い覚悟をもって挑みました。なので「楽しむ」というよりも「とにかくこのハードルをクリアしなければいけない」と、テクニカルスタッフ、選手一同、常に感じながらの大会でもありました。

そこを全力で戦った末にクリアしてつかんだ今回の大会となりますから、自分たちがどこまでやれるのかということにフォーカスしていきたいと思っています。何か特別なことをするというよりも、今、自分たちがもてる力をしっかりと出し切ることが何よりも大事だと考えています。

当然、試合の挑み方も違いますし、越えなければいけないノルマというより、初戦のニュージーランド戦から一歩一歩、自分たちがどこまでやれるのかを試していくような戦いになると思っています。

このチームの天井がどこにあるのか、本当の意味で測れる機会になりますし、非常に楽しみにしています。それに、自分自身が大会を楽しむ気持ちをもっていなければ、選手たちもそういうマインドで試合に挑めないと思っています。ですから、非常に楽しみです。と当時に、やはりすべての女子フットサル選手の気持ちを背負って戦う大会でもあるので、当然、非常に重みも感じていますから、そのことも忘れずに戦っていきます。

──GK中田凪沙選手がサポートメンバーとして全日程に帯同します。負傷時の選手の入れ替えなど、レギュレーションについても教えてください。

(小西団長)今回は、FIFAの大会として初めての試みになるのですが、GKに関しては大会期間中、いつでも任意のタイミングで登録した選手の中から入れ替えが可能です。フィールドプレーヤーの入れ替えはできません。

GKは重要なポジションの一つでありますが、15番目の選手として連れて行けることは大きなメリットとなります。もし、練習中に怪我をしてしまった場合、1人しかいないか、2人しかいないか、3人かによって、トレーニングの質も下がってしまいます。

当然、中田選手のパフォーマンスも重要ですが、フィールドプレーヤーに怪我が起きてしまうことや、そもそも14人の中でどのポジションで怪我人が出てしまうかは予測できないものです。そこに優先度をつけることはできないですから、大会期間中の不測の事態に対応することなどいろんな側面を考慮して選んでいます。

──チームの環境づくりやサポート体制について教えてください。

(小西団長)今回、専属シェフは帯同しませんが、JFAの中でもしっかりと協力いただいて、食事面や睡眠など、いろんな面でストレスを抱えないようにすることを考えています。これまでもそうですが、私たちは選手自身が主体的に動けるような環境づくりを提供したいと思っているので、彼女たちのモチベーションをアップさせるようにできたらと。選手のご家族やクラブの協力を含めてスタッフで取り組んでいけたらと考えています。

──チームスローガンに込めた思いを改めて教えてください。

「憧れと共感」は、就任当初からずっとチームの軸として掲げている言葉です。もう一つが「ハードワーク世界一」。ピッチの中でも外でも、どれだけ努力を積み重ねられるか。世界の先進国との差を埋めていくのは最終的にその部分になるのかなと思っています。「ハードワーク世界一」になると言い続けて、そして「世界一」になりたいと考えています。

──GK井上ねね選手は「今大会が一区切りになる」という報道もあります。

公式にそういった発表を聞いていないのでコメントは控えますが、誰にとってもこの大会は特別な大会になると思います。W杯で、今できる最高のパフォーマンスを発揮する。そしてそれを全力で支える。井上だけではなく、すべての選手がそういう気概で挑む大会ですし、年齢に関係なく、この舞台が当たり前ではなくて、いろんな人たちの想いの結晶の場所だと思っています。

次にまた当たり前のようにこの大会に出場できる保証は一つもないので、そういう覚悟でやってほしい。その覚悟を楽しみに変え、選手としての誇りや責任、アスリートとしての本質として楽しんでいけるマインドに到達できれば、本当にすばらしい機会になるんじゃないかなと。

──最後に、ファン・サポーターのみなさまへのメッセージをお願いします。

W杯は初めての大会ですが、この開催に向けていろいろな方が尽力していただいたことを聞いています。例えば、大きなアクションの一つとして、吉林(千景)選手がスペイン代表やブラジル代表など、各国代表の選手たちと共に「W杯を開催したい」とFIFAに切望する動画を作ったことがきっかけになったという話を耳にしたこともあります。私自身、彼女にそういった姿勢に対し感謝を伝えたこともあります。

彼女だけではなく、本当にいろんな方がつくってきた日本女子フットサル界であり、世界の女子フットサル界だと思います。そういったみなさんすべての尽力をしっかりと背負って戦うことが大事だと思っています。

それは、応援してくださるファン・サポーターのみなさんはもちろんのこと、今は現場にはいなくても、今まで選手を指導されてきた方などを含めて、本当にすべての仕事が今につながっていると確信しています。

自分たちとしては、その名に恥じないような、みなさんが誇りに思ってくれるようなプレーをしたい。ぜひ、一緒に戦っていただけたらと思っています。

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