
現役にこだわり続ける。黄金世代・本山雅志、マレーシアに立つ。
個性が輝く黄金世代
──黄金世代の方々は、現在さまざまな形を取りつつ活躍していますよね。
本山 皆すごいですよね。
(小野)伸二は北海道コンサドーレ札幌でプレーして、ヤット(遠藤保仁)はジュビロ磐田で、チームの中心的存在となっている。橋本(英郎)は今治FC、イナ(稲本潤一)はSC相模原でそれぞれ頑張っています。高原(直泰)は、自分で立ち上げた沖縄SVでプレーを続けています。
引退した選手も、小笠原(満男)は鹿島アントラーズのアカデミーでテクニカル・アドバイザーをしているし、曽ケ端(準)も鹿島でGKアシスタントコーチをしています。中田浩二も、鹿島のCRO(Club Relations Officer)を務めています。
彼らの姿を見て、刺激をもらうことはたくさんありますね。
──それにしても、79年組の黄金世代には現役の方が多いですね。
本山 基本的に、みんなサッカーが好きというのが念頭にあると思うんですよね。特に伸二は、昔からずば抜けて上手かった。彼が79年組の中心で、みんなを引き上げていたと思います。
ヤットも小さい頃から友人ですが、めちゃくちゃ上手かった。今もほとんど変わらないプレースタイルを貫いている裏には、相当な努力があるはずです。イナも高校からJリーグで活躍していて、みんなで「あいつすげーな」って言いながら頑張っていました。
──本山さんは、やはりドリブルの印象が強烈にあります。
本山 ドリブルは、小さい頃からめちゃくちゃ好きでした。元Jリーガーだったコーチに、ボールの扱いやドリブルの方法を教わって。ドリブルは一人で練習できるので、それをずっと反復して練習していましたね。
性格的にも、一度ボールを持ったら離さないわがままな選手でした。中学時代からは、周りも使いつつ行けるところは行くスタイルで。高校時代にボランチを経験してからは、パスも使うことを学びました
それでも、本質的にはドリブルが好きです。疲れますけどね(笑)。
──ドリブルのリズム感は、いい意味で日本人っぽくない気がします。最近では、三苫薫選手に本山選手と近しいものを感じますね。
本山 ありがとうございます。三苫選手は僕も注目しているので、そう言ってもらえると嬉しいです。
彼は緩急の付け方が上手いですよね。一歩目の加速が速いので、抜いた瞬間に余裕が生まれて次のプレーにつなげやすい。狭いエリアから大きく抜け出すこともできるし、細かなドリブルもできる。
日本にはなかなかいないタイプで、日本代表はもちろん、世界でも活躍できると思います。
──日本人選手は献身的な印象が強いですが、今後ビッグクラブで活躍する選手が増えるには、そうした個人の力をどれだけ伸ばせるかも重要だと思います。
本山 日本人のレベルは、全体的に上がっていると思います。そのなかで永遠の課題となっているのが、身体のサイズですよね。速くて、大きくて、強くて、足元も上手い。昔と違い、今はそんなすべてを兼ね備えた選手が世界中にいます。
日本でもサイズで勝負できる選手が増えてきているので、そこは楽しみかなと。一方で、古橋亨梧選手のように小さいけれどスピードで裏に抜けられる、ゴール前の嗅覚が強い選手もいます。
東京オリンピックを観ていて、これから個性ある面白い選手がたくさん出てくるという期待感を抱きました。
──世界で活躍する選手もどんどん増えていますよね。海外に行くことが珍しくない今の環境を、うらやましく思うこともありますか?
本山 身体がふたつあれば、もう一人の自分に海外へ行ってもらったかもしれません(笑)。海外でチャレンジしたかった思いもありますが、それでも僕は鹿島でいいシーズンを過ごせました。タイトルを取るための努力もできたし、今までのキャリアに後悔はありません。
本山雅志はいつ引退するのか
──本山さんは、何歳までプレーをしたいと考えていますか?
本山 考えていないです。辞める時はいずれ来ますが、辞めるとは言いたくないというか。ゴンさん(中山雅史)みたいな感じです。あ、カズさん(三浦知良)は別次元なので、あの人を目指してはダメです(笑)。
──ゴンさんは両膝に深刻な怪我を抱えながらも、リハビリに励みアスルクラロ沼津で現役復帰しました。退団後はジュビロ磐田のコーチに就任したものの、現役引退は表明していませんね。
本山 ギラヴァンツ北九州時代、ゴンさんに会ったことがあります。その時お互いの怪我の話をしたんですが、彼に「早く辞めろ」って言われたんです。僕らの世代が現役を続けていると、自分が目立たなくなるからって(笑)。
──私はSC相模原のオフィシャルライターで、稲本さんともよく話しますが、彼も「サッカーをやらない生活が想像できない」と話していました。皆さんほどの選手であれば、引退してメディアで活躍するという道もあると思います。それでも、怪我やきつい練習に耐えつつ現役にこだわるのはなぜでしょうか?
本山 監督に選ばれ、試合に出られる。昔からそれこそが理想だからじゃないでしょうか。練習はしんどいこともありますが、試合に出るために必要なことだと考えています。ボールを使った基本練習は今でも楽しいですしね。
指導者の道も、全く興味がありません。子どもたちと一緒にプレーをするのは楽しいので、マレーシアでもサッカー教室をしています。この前もマレーシアヤクルトさんに協力いただいて、3日間で3カ所を移動しながら、15歳以下の子たちと一緒にサッカー教室を開催しました。
それでも、僕はプレーヤーこそが一番面白いことを知っています。頭の片隅には、ずっと現役ではいられないとわかっています。だからこそ、やれるところまでやりたいんです。
■プロフィール
本山雅志(もとやま・まさし)
1979年生まれ、福岡県北九州市出身。東福岡高3年時に全国総体、全日本ユース、全国選手権と史上初の「高校3冠」を達成した。1998年鹿島アントラーズに入団し、背番号「10」を背負う。2000年シドニー五輪代表。2016年にギラヴァンツ北九州へ移籍し、19年末までプレーした後に1年の休養を宣言。
2021年から、マレーシア・プレミアリーグ2部のクランタン・ユナイテッドFCに移籍した。
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