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久保建英が“ラ・レアル”で見つけた自分の居場所 “日本の至宝”が見せたスペイン4年目の進化を振り返る

写真:久保建英(提供:ムツ・カワモリ/アフロ)

ラ・リーガは2022-23シーズンの全日程を終えて、バルセロナの優勝で幕を閉じた。そんなシーズンにおいて、今季からレアル・ソシエダに新天地を求めた日本代表MF久保建英は、リーグ戦35試合に出場し9得点4アシストの活躍。チームの欧州チャンピオンズ・リーグ出場権の獲得に貢献するとともに、スペイン1部挑戦4年目にして自己最高のスタッツを残し、選手として大きな飛躍を遂げた。バルセロナで育ち、“日本の至宝”と謳われてきたそのポテンシャルをついに開花させたレフティーの今季を振り返っていきたい。(文・井本佳孝)

見出された2トップという新境地

レアル・ソシエダに完全移籍で加入した久保は、下部組織からクラブを率い、育成に定評のあるイマノル・アルグアシル監督のもとで、開幕のカディス戦に2トップで起用される。これまでのサイドMFやトップ下ではなく前線の一角に配置された久保は、前半24分にミケル・メリーノのラストパスに飛び出して右足でシュートを決めてみせる。1ー0での開幕戦勝利に貢献するとともに、新たなポジションでの1試合目でいきなり結果を残してみせた久保の活躍は、その後の飛躍への大きな足がかりとなった。

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写真:久保建英(Jose Breton/Pics Action/NurPhoto via Getty Images)

クラブの主将であるスペイン代表FWミケル・オヤルサバルが故障により長期離脱で開幕当初は不在。また、中盤には元スペイン代表MFダビド・シルバが君臨するなか、アルグアシルは2トップとして久保を起用し続けた。これまでマジョルカやヘタフェといった降格を争い、かつ主導権を握られることが多いチームの中で、久保はサイドでの守備に奔走され、得意の攻撃でよさを発揮する場面が少なかった。そんななか、ラ・リーガの中でもポゼッションを志向し、かつ中央付近でよさを発揮できるレアル・ソシエダでの2トップという役割は、久保の適正に完璧にフィットした。

また、今季の久保は前線からのチェイシングで奮闘するなど守備面でも進化の跡が見てとれた。その中で、序盤から得点やアシストといった数字も残し、シルバ、アレクサンダー・セルロートといった前線の選手たちとも良好な関係を築き、レアル・ソシエダの戦術に適応していく。獲得の1年前から久保を追っていたというレアル・ソシエダとアルグアシルがこのレフティーの才能を見極めた。ラ・リーガやヨーロッパ・リーグといった試合をこなす中で、久保もスペイン4年目にして“自分の居場所”を見つけたとばかりに躍動し、毎試合のように存在感を示していく。

圧巻の3試合連続MOMで2月のクラブMVP

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写真:久保建英(提供:なかしまだいすけ/アフロ)

久保のさらなる飛躍が見られたのがワールドカップを終えた2023年に入ってからのこと。
カタールでは不完全燃焼に終わった久保だったが、クラブに合流すると主力の座を維持し続ける。第20節のバジャドリード戦からは3試合連続マン・オブ・ザ・マッチに選出と圧巻の活躍を続け、2月のクラブ月間MVPにも選ばれた。クラブがCL出場権を争い上位に位置するなかで得点やアシストという数字で自身の価値を証明できるようになった。周りからの信頼感を得るなかで、久保の技術力やアイデアという元々備えてきた最大の武器が発揮できるようになったのが今季の久保の進化の跡である。

また、シーズン途中には主将のオヤルサバルが戦線に復帰し、同じレフティーでポジションも近い久保はレギュラーを外される可能性も危惧された。しかし、コンディションで優位に立つ久保はポジションを守り抜き、指揮官のアルグアシルは最終的に左ウイングにオヤルサバル、右ウイングに久保を起用し、この2人の名手の共存にも成功した。中盤のシルバを含めた創造性豊かなレフティーが攻撃を司るレアル・ソシエダは今季のラ・リーガでもベストチームの一つであった。その魅力的なサッカーを牽引する中心の一人として久保が存在したのは間違いない。

その後ゴールを重ねた久保は、第28節のヘタフェ戦で6点目を奪い、乾貴士がエイバル時代の2017-18シーズンに記録した日本人最多を更新。さらに、日本人初の2桁得点まであと一歩の9点までその数字を伸ばした。レアル・マドリードやバルセロナといったメガクラブを相次いで撃破し、最終的にCL出場圏内である4位フィニッシュに貢献。終盤戦にかけてのレアル・ソシエダは右サイドの久保を見てボールを預ける展開が多く、敵チームもまずこの日本代表を抑えにかかるなど、最終的には押しも押されもせぬ“ラ・レアル”の中心選手として充実の1年を終えることになった。

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