最高の一瞬『被写体をしっかり見せる_錦織圭(テニス)』

 

テニスの錦織圭選手。2014年の楽天ジャパンオープンという大会での1枚です。

 

ここでも、どうにかして背景をすっきりさせた写真が撮りたいと思っていました。

 

僕は水谷塾という、スポーツフォトグラファーの第一人者・水谷章人さんのやっているセミナーの出でして。このときは大会に行ったら、たまたま先生がいらしていて。僕がこの写真が撮りたいと思って座ったところの隣に、水谷先生もお座りになった。

 

そこで「おっ、田中。お前わかってんな」と言われて、何というか自信に変わったという1枚です。

 

背景をうるさくしないというのは、被写体をしっかり見せるにはいらないものを全部排除したほうがいいという、水谷先生のそもそもの教えなんです。僕はどの競技においてもそれに忠実にというか。どうやったら余計なものが写らないで被写体を撮れるのかというのを、すごく考えています。

 

この写真の場合、コートの周りの壁一面はもちろんスポンサーの看板があります。それでこれはどこかというと、選手が出入りしてくる通路の部分なんです。そこが唯一真っ暗になる。ただ、通路口のすぐ上はスタンドで暗い部分は切れちゃってるので、もうわずかのエリアでした。

 

なおかつ、やはりバックハンドが錦織選手のイメージだったので。それを何枚も撮りました。ここまでボールがドンピシャに変形して撮れているのは、他にはなかったです。

 

このとき気づいたのは、選手はラケットを振りかぶりますが、そこから結局自分のシャッターのタイミングと合わないということ。

 

例えばロブショットを打つのか、速い球を打つのかでもスイングのスピードが違いますし、左を狙うのか右を狙うのかでも違う。そうしてタイミングをわざと遅らせて振っているパターンもあるので、なかなかはまらなかったですね。

 

もちろん選手は左右に動くので、なかなか狙っている背景にはまらなかった。でも先生が隣で「お前、よくわかってるな。こういうのが撮りたいんだろう」って言われて、「はい。そうなんです」と。当時は何か自分の撮りたい画とかに、いろいろ不安とかもあったんですが、先生にひと言いただいてよかったという思い出です。

 

 

▼田中伸弥(たなか・しんや)

1977年東京都生まれ。
成安造形大学芸術学部芸術学科写真コース卒業。
日本ジャーナリスト専門学校卒業。
JCII主催水谷塾6期生。

大学でアートとしての写真を学び、その後専門学校でスポーツ写真の基礎を学ぶ。水谷塾にて更にスポーツ写真の知識や技術を身に付け、現在はフリーランスのフォトグラファーとしてサッカーを中心にジャンルを問わず様々なスポーツを撮影している。

ANSP(日本スポーツ写真協会)会員
AJPS(日本スポーツプレス協会)会員
AIPS(国際スポーツプレス協会)会員

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