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原田宗彦が語る「スポーツ産業の発展とスポーツ共創」。変化するスポーツと社会の関係

 

2023年10月17日、渋谷ヒカリエにて株式会社THE SMALL THINGSの創業イベントが実施され、スポーツ産業に多方面から関わる様々なキーパーソンの講演が実施されました。THE SMALL THINGSは、行政のスポーツ施策の支援や、スポーツチームと企業の間に立ったスポンサーシップの仕組み作りのサポートをしており、特に“スポーツ共創”という分野に力を入れています。AZrenaでも過去に取り上げたこのテーマですが、本イベントではスポーツマネジメントやスポーツ×都市作りの研究における第一人者の原田宗彦・大阪体育大学教授がこのテーマについて講演。今回は一部を抜粋して、お届けいたします。

【過去記事はこちら】「支援」や「広告」以外の価値を作る。スポーツスポンサーシップはパートナーシップの「共創」へ

スポーツ共創が持つ広い意味

スポーツ庁が言う『スポーツ共創』は非常に意味が狭いんです。ここにあるように「する」「みる」「ささえる」そして「つくる」という4つ目のスポーツへの関与の状況を作りました。要は自分たちで新しいスポーツを作って遊ぼうという、ちょっと狭い定義になっています。

その背景には「体育・スポーツ・教育を変えよう」という社会運動的なスローガンがありますし、これまでの伝統的なスポーツからはちょっと逸脱した脱制度化、例えば超人スポーツ協会のようにテクノロジーを活用して”新しいスポーツを作っちゃえ”とういう動きもあります。

最終的には新たな人々を巻き込んで、スポーツ人口を拡大したいという思いがあります。その中で、スポーツ共創イコール”自分たちで自分たちのスポーツを作る→作ったら遊ぶ→共有する” というサイクルを回し、スポーツ参加人口を増やしていくという、いささかちょっと狭い定義になっています。無関心層を刺激したいということで、スポーツ庁らしい目標ですね。

ですが、新しいスポーツを作ることは非常に大事な一方、スポーツ共創にはもっと広い意味があるだろう、と私は思うのです。

“より良い社会と街づくりのためにスポーツを触媒として活用し、新しいスポーツの場と環境を創出するとともに、公益性の高いビジネスになる仕組みを構築する、ボトムアップ型の意思決定による革新的な働きかけ”

少し長いですが、これが私なりのスポーツ共創の定義です。そうなると、スポーツを”作る”だけではなく、スポーツを活用した街づくりに話が及んできます。

なぜこのようなスポーツ共創が可能になってきたのかについて説明します。おそらく、昭和の時代には、このスポーツ共創という考え方は出なかったと思うんです。ではなぜ、現代では可能になったのか。

スポーツ産業の誕生の背景

歴史的に、スポーツ用品、スポーツ施設・空間、スポーツサービス・メディア、という3つの領域がありましたが、1980年までこの3つの領域はバラバラに存在していたんです。つまり、スポーツ産業というまとまりはなかった。私の学生時代にはスポーツ産業論という学問領域もなく、スポーツ用品産業は存在せず、日常生活用品産業に入っていました。ところがこれが大きくなると、新たな複合領域が出てくるのです。

スポーツ関連流通産業でゼビオやスポーツオーソリティのような巨大小売業のチェーン化が出たり、SPAで生産ラインが垂直統合されて、これまで生産、卸、小売と別れていたのが、生産直販のNIKE Townのような形態も出てくるのえす。さらにそのライセンス商品が出てくることで、例えばナイキ1社で4兆円産業ぐらいになります。非常に大きいですよね。

反対に、スポーツ施設・空間とスポーツサービスが一緒になったものがフィットネスクラブです。これも1980年にはゼロでしたが、今は日本に5,000店舗、5,000億円の市場に育っています。レッスンビジネス、施設運営ビジネス、人材派遣と多岐にわたります。

この3つが合わさったところにできるのが、スポーツハイブリッド産業。メガスポーツイベントやプレミアリーグやJリーグなどのプロスポーツが入ってきます。サッカーだと、スタジアムやスパイクやウェア、放送権料。こうやって大きな産業ができるのです。

そして、巨大な放送権ビジネスというのがここで生まれてきます。私は、この状態を“これまでのスポーツ産業”と呼んでいます。“これからのスポーツ産業” にはテクノロジーが入り、新たな産業領域が生まれるでしょう。例えば、スマートウェアラブルデバイス、VR・AR、映像配信・編集、オンラインコーチング、スマートフットウェアからチーム分析、個人分析。

スポーツ施設では、スマートアリーナやスマートスタジアム、高密度Wi-Fi、大型ビジョン、クロスバースアリーナ、ファンエンゲージメント、スポーツホスピタリティ、メタバース観戦、イベント運営、セキュリティビジネス等々ですね。

そして、これからはスポーツがエンターテインメント産業化していきます。eスポーツ、ゲーミフィケーション、街づくりといったところに話が展開していくでしょう。一旦、このようにスポーツ産業が、大きくなってきたんだ、と思っていただけますと嬉しいです。

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