ITで「スポーツの楽しさ」を提供する ~Link Sportsの挑戦~

スポーツチーム応援アプリ「TeamHub」を提供する株式会社Link Sports。新しいサービスを次々にローンチさせ、デジタル分野で日本のスポーツ文化を豊かにする挑戦が続いている。同社の代表取締役CEOを努める小泉真也さんに話を聞いた。

◆アマチュアスポーツ界にITとの融合がなかった

「僕らは(部活動の練習中に)水を飲んではいけない最後の世代だったかもしれないし、練習は楽しくなかった(笑)。そういう意味で学生時代、いっぱいキツいこともあったはずなのに、時がたてばいい思い出としてよみがえる。スポーツの魔力は不思議ですよね」

表情は穏やかなのに、思いがこめられたハッキリした口調が続いていく。改めて株式会社Link SportsのHPを見たら、小泉真也さんのインタビューは次のようなタイトルだった。

「スポーツをして、みんなが笑っている世界を作りたい」

スポーツを愛するが故の使命感。小泉さんの根底には、常に揺るぎないポリシーが存在する。

1984年生まれ。小学生のころから野球を続けていたが、高校3年生時に肩を壊して選手生活を断念した。その後は野球チームのコーチや草野球を楽しみながら、大学卒業後、大手IT企業に就職。2014年1月、株式会社Link Sportsを起業した。

「大学時代、友人が学生ながらも起業したんですね。それを見ていて、自分もいつかはという思いを抱いていました。やるならスポーツで。」

IT企業時代、時間があれば海外のスポーツビジネスにも目を通した。今でこそ少し取り巻く環境は変わったが、スポーツとITが結びつくのはプロの世界が中心。だからこそ、学生やコーチ時代の苦労が頭から離れない。

「チームの運営、データの保存、共有……。アマチュアスポーツは苦労ばかりじゃないですか。ビラミッド型に例えればアマチュアがベースにあり、頂点にプロの世界がある。土台となるアマチュアスポーツの世界が脆弱では、本当のスポーツ文化が日本に根づかない。2007年ごろに調べてみたら、アマチュアとITが融合するサービスはなかった。だから、やるならアマチュアスポーツで、と決めていましたね」

起業後、まずはスポーツのQ&Aサイトを立ち上げた。「例えばケガをしないようにすればいいか?」といったコンテンツ分野でのサービスをスタートさせながら、主軸となるアプリ「TeamHub」のコンセプト・設計・開発に着手。スポーツに精通したエンジニアがジョインしたのも、同社にとっては大きな強みだった。

「その後もスポーツ好きのスタッフが集まってくれたおかげで、「TeamHub」のみならずスポーツメディア「AZrena」、女性向けメディア「B&」もだいぶ認知が進んだのがうれしいですね。決してメジャー競技のみならず、社内にはダブルダッチ(縄跳び)やダンスなどマニアックな(笑)スポーツを楽しんできた人もいる。 いつもスポーツにまつわるそんな会話であふれている社内が大好きです」

さらに笑顔を浮かべた小泉さん。このときばかりはビジネス視点を置いておき、一人のスポーツマンとして「仲間は大事」と思った瞬間かもしれない。

◆対戦相手探しもアプリで一発!

「TeamHub」の説明に戻ろう。

「実は2015年12月にiOS版をリリースしたのですが、すぐに「なぜチームで使うのにAndroid版を網羅していないんだ」とユーザーから厳しいおしかりを受けまして(笑)。ですので、オフィシャル的には2016年8月を本リリースとしています」

チーム管理をするうえで不可欠なサービスを網羅し、100以上の種目のスコア入力に対応。現在は25万以上のチームが使用しているそうで、中心は野球やサッカー、バスケなどになるが、今でも競技追加の要望が後を絶たないそうだ。

「学生時代の本格競技はもちろん、社会人になって楽しむ草野球や草サッカーも記録を残し、チーム全体で共有しながら、ワイワイガヤガヤしたいじゃないですか。日本一使いたいと思われるサービスを作りたいと思いますし、手応えは感じていました。2017年初めに野球をリリースした段階でグッと伸びたうえに、追うように野球のユーチューバーが出てきたことで、さらに流れが変わりつつあるような感触をもっています」

もう一つ、小泉さんには勝算があった。それはアプリならではの優位性だ。

「試合や練習の出欠確認や用具管理など、アマチュアスポーツはそれを競技者自身が行わなければいけない。その作業を便利にしてあげたかった。アプリではリマインドをはじめとしたプッシュ通知の機能がそれを補完してくれます。詳細は割愛させていただきますが、チーム運用上で必要とされるコミュニケーションツールとして、アプリが必須だったともいえます」

父兄やOBといった応援する側も加われば、一斉通知で試合や練習、イベントの情報が共有ができる。ありそうでなかったアマチュアスポーツ運営のノウハウが、この「TeamHub」に詰め込まれている。ぜひ紹介ページや使い方のページに掲載している、スタートアップガイドを見てほしい。スコア入力のフォーメーション作成は、ちょっとしたゲーミフィケーション的なUIになっており、見ているだけで楽しい。

「草野球や草サッカーをやっている人なら分かると思うのですが、意外に対戦相手を探すのが大変なんですね。そこで、今年2月には対戦相手を探す機能をリリースしました。例えば、近くで対戦相手を募集しているチームがいる場合や募集を開始した際にプッシュ通知を出すわけです。あとは競技の追加ですね。5月中には武道系スポーツを追加しますよ。その先には陸上や水泳といったタイムスポーツにも広げる予定です。日本は島国のせいか、諸外国に比べて圧倒的に競技の数が多いんですよ(笑)」

競技追加のためには武道のルールも熟知しなければいけないが、要望がある以上は手を緩めない。飽くなき追及心には頭が下がる思いだ。

◆社名に込められた思い「スポーツ界をつなぎたい」

「TeamHub」はプレーヤーや携わる父兄などが対象のサービスといえるが、スポーツを支える層として「応援する」人も忘れてはならない。

「そうです。例えば年齢的、あるいは地域的に離れてしまったけれど、結果や現状は気にしているOB・OGといった人たちが挙げられます。スポーツでできたつながりを、いつまでも続けられるようにデジタル上で可視化したい」

そこで同社が始めたのは、「Joynup」というウェブサービス。「TeamHub」に登録しているスポーツチームをフォローすることで、活動状況をチェックしたり、差し入れを贈ることができるのだ。

「寄付となるとハードルが高いじゃないですか。表立って自慢もしにくいし(笑)。でも、ちょっとした差し入れなら気軽にチームに貢献できるという考えですね」

野球のボールは草むらに入るとなくなるし、卓球のボールはすぐ割れたなぁ。バトミントンのシャトルは羽がなくてボロボロだったし、スケート靴のメンテナンスも大変だった……。

「ですよね(笑)。アマチュアスポーツってボールやビブスといった消耗品の調達が資金的にも大変だし、ちょっとしたものだけどあれば便利という道具が必要じゃないですか。そういったものを気軽に差し入れできる環境があれば、スポーツ文化はもっと豊かになると思いませんか?」

試しに出身地の地名を入れて検索すると、いろんなチームが出るわ、出るわ。遠くからでも母校に貢献できるとなれば、自己満足とはいえ、悪い気分ではない。

よくこんなサービスを次々に考えつくものだと感心し、小泉さんに「実現したいことがだいぶ形になったんじゃないですか?」と質問してみた。

「いや、まだまだですよ。登山に例えると必死で歩いてきて、これから登るぞといった富士山の5合目ぐらい。スポーツを支えながらもビジネス視点で物事を俯瞰で見れば、まだまだやれることは多い。弊社の社名はどう思いますか?」

スポーツ界をつなぐという意味ですよね?

「そうです。する人、見る人のみならず、用品用具メーカーや販売、スタジアムの管理、ケガをしたときのサポートする人、報じるメディアなど、スポーツに携わっている人は無数にいる。会社の夢はスポーツ界すべてをLinkさせることです」

とにかくスポーツを楽しむ環境を提供したいし、それにはデジタルが欠かせない。最後もこういった言葉でインタビューを締めくくった。Link Sports、そして小泉さんの挑戦は常に前進あるのみだ。

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