THINK SPORTS『ネーミング』

サッカーでボールを持っている時、敵が足元に向かってきた。

これをまず片足のインサイドでボールを横に動かして敵をかわし、連続した動きで今度は逆足のインサイドでボールを前に運んで、敵と入れ替わるように抜けていく……。

このプレーをサッカー界では「ダブルタッチ」という。プレーしている人も、見ている人たちも、回りくどい説明をしなくても、ダブルタッチという言葉一発で「ああ、あのプレーか」と理解できるのである。

サッカーのネーミングはとても興味深く、このほかにも、ボールを運ぶ方向を軸足の後ろで切り返す「クライフターン」というのがある。これは1970年代に活躍したオランダ人の名選手、ヨハン・クライフが頻発させていたプレーからつけられた名前だ。

よく聞かれる「ボランチ」というポジション名は、ポルトガル語でハンドルを意味する言葉。これは、ただ中盤の後ろに位置するというだけでなく、自らのプレーでチームの攻守をハンドリングしていくという役割も込められている。

このように、スポーツにはテクニックや戦術に対するネーミングの妙があり、面白い。

野球のピッチャーが投げる球種は、どんどん名前が増えてすごいことになっているのを知っているだろうか。今のシニア世代の人々が子どもだったころは、「ストレート」「カーブ」「シュート」「フォーク」の4種類くらいしか語られていなかった。

ところがここから、ストレートとカーブの中間で「スライダー」が出てきてからもう長い時間が経っているが、よりストレートに近い「真っスラ」などという名前も出てきて、現在は「カットボール」と呼ぶのが一般的なようだ。フォークも、より速いスピードで打者の手元で落ちるボールを「スプリット」として分けるようになった。

それぞれのスポーツに、それぞれ意味の込められたネーミングが存在するだろう。それを知ると、またスポーツへの関わりが楽しく、豊かになるのではないだろうか。

これからは各スポーツのネーミングに注目である。

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