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安床エイト&安床武士。インラインスケート界に君臨する「安床ブラザーズ」とは?

「自分の行動そのものが日本だけに限らず、世界のインラインスケートの歴史を左右する立場にいる」

安床武士

——逆に、一番嬉しかった時を教えてください。

エイト:もしかしたら今が一番かもしれないですね。自分の行動そのものが日本だけに限らず、世界のインラインスケートの歴史を左右する立場に今はいるので、やりがいがあります。反面、僕ら二人が普及を含めた活動を止めてしまえば、競技としてはおそらく痛手になるでしょう。

武士:小さい頃はそんな立場になるとは夢にも思っていなかったですからね。こうなれたのはホンマに奇跡なんです。世界大会で勝った時だって、誰よりも驚いたのは自分達でしたから。日本人としてアメリカで戦う上でぶつかっていた壁を突然越えてしまったわけです。

エイト:一回勝ったことで自信が付きました。それ以降はちゃんとやれば勝てるという前提を持って臨むことができるので、うまくいくんです。

武士:兄が優勝した試合でまだ僕は7位だったんですけど、それでもびっくりしました(笑)

エイト:もちろん一回勝ったことによって、次また勝たないといけないというプレッシャーは来ます。でも何よりもまず、1つ勝てたことが大きかったんです。

武士:これは偶然なのですが、僕も次の年に兄が勝ったのと同じ大会で初めて優勝しました。1998年には初めて、世界で20人しか出ることができないXゲームズの選手に一緒に選んでもらうことになります。

しかしその後、兄が大会でどんどん優勝していく傍で、僕はなかなか勝てずにいました。決して自分の状態が悪いわけではないのに2位だったりするんです。結局何かあと一歩足りないという状態が4年間、続きました。それで競技の方向性に迷ったこともあったんです。でも2002年にようやく勝てたことで自信にもなりましたし、より自分のスタイルを確立するきっかけにもなりました。

エイト:やっぱり目の前で優勝されると悔しいよな!

武士:一緒に遠征に行っていると試合後に食事で顔を合わせたりするのですが、素直に祝ってあげようという気持ちにはならないです。

エイト:でも、そのライバル心は必要ですね。

武士:ただ、他の選手を見ている時とは違って、大会中でも真剣にお互いのことを応援はしています。その時はあくまで家族の一人です。

兄弟なので周囲からは比べられる運命にあると思うんです。でも兄が勝ち始めて自分が勝てていない時期に周りから同情されるのは辛かったです。歳は僕が3つ下でもスケートは同時に初めていましたから。

でも僕も1年後に初優勝してからはそれぞれのプレースタイルを周囲が認識してくれるようになって、滑るのが楽しくなっていきました。周りのために自分を変えるのではなくて、自分の滑りによって周りを変えることができたということです。求められているものに合わせるのではなく、あくまで自分を貫いた結果だというのは兄も僕も感じているところです。

エイト:僕は大会といっても、ここ10年くらい試合なのか、ただのパフォーマンスなのか線引きができなくなってきています。

会場では安床兄弟のどちらが勝つのか楽しみにしてくれている人がいますが、それはそもそも二人がいい滑りをしないと成り立たないわけです。だから試合もショーも結局あまり変わらないんですよね。

後編へ続く】

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