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競技の裏で映像制作にも尽力。西窪友海はなぜ動画を発信し続けるのか

一流の選手でありながら、自分自身で競技中の動画を撮影し、編集したものをYouTubeに載せたりすることでその魅力を発信する西窪友海。

後編ではその理由、競技中の怪我について、そして今後の目標を聞いた。

【前編】はこちら

いかに自分をマインドコントロールできるか

-自ら動画を作成して発信するようになったのはなぜでしょうか?

初めは自分のフォームを確認するために安いデジカメで動画を撮影し、それをトップライダーのものと並べて、再生し、研究していたんです。でも撮りためていくだけではもったいないと思うようになっていきました。たまに成功すれば自分でも格好いいと思える映像になっていたりしますから。トップライダー達は自分の動画をYouTubeで配信していたりしたので、僕も上げることにしていきました。動画を上げると自分の中だけで今回のライディングの良し悪しを消化するのではなく、人からレスポンスがあったりするので良いですし、中には技の参考にしてくれている人もいました。元々大学は建築の勉強をずっとしていたのですが、ものづくりが好きだという部分と映像制作がうまいことマッチしたということです。どちらも作り始めると飯も食わずに朝までやれちゃうんですよ。

-競技をやってきて、しんどかったことはありますか?

ないですね。実は僕、「練習しろ!」と言われたことがないんです。でも結構周りは父親の影響で始めていて、熱量が本人よりも高まってしまい、子供は乗り気じゃないのに渋々練習に連れていかれることもあったようです。指導してくれる人がいるその環境にいれば絶対うまくなりますし、それを否定するわけではないですが、僕の場合だと合わなかったと思います。今まで部活動もしたことがないですし、うちはあまり干渉しない親で本当に好きなことしかやってきていないです。練習も親に連れていかれるどころか、俺の方から連れていってくれるようにお願いしていたくらいです。もちろん練習において、体力的にしんどいことはありますけど、全然苦ではないです。

西窪友海

-高いところに登ったり、技を失敗したりすることへの恐怖心はないんですか?

恐怖心はあります。でも年々その許容範囲は広がっていっています。どんどん常人とのズレが出てきていっています(笑)今は高さで言うと4mくらいまでは怖くないですし、一本橋もパイプ1本とかなら余裕です。

それでも怖さはあります。むしろ怖さがないとアカンですよ。ある程度自分にブレーキをかけられないと死んでしまいますから。

-今までにも大変な目に遭ったこともあるわけですね(笑)

柵を飛び越えて2m下に着地するという技をやったら、着地の反動で自転車のハンドルが折れて、そのまま足を踏み外し、ペダルのギザギザになっている部分でスネをえぐるように擦ってしまったんです。見たことがないくらいに傷口が開いたと思ったらみるみるうちに腫れてきてしまい…でもこんな怪我めったにないので、動画撮影は続けました(笑)

その時の動画

-動画に体張りすぎです!

撮影後に病院に行ったわけですが、その日は休日でした。なので、救急外来で診てもらったのですが、怪我を縫っている先生の名札を見たら「耳鼻科」って書いてあったんです!思わず「大丈夫なんですか?」と聞いてしまいましたよ。結果的には綺麗に縫ってもらえたからよかったんですけどね。でも、半年後くらいにまた同じような怪我をして同じぐらい縫っているので、スネがかわいそうですね(笑)

ただ、僕らからしたらいわゆる外傷というか、それこそ縫うような怪我はもはや怪我じゃないです。捻挫や骨折など、自転車が乗れなくなるようなものを怪我と呼ぶ感じです。実際、スネの怪我をした後も2日後くらいにはまた自転車に乗っていましたし。

-西窪さんは緊張するタイプですか?

試合となるとどうしても緊張するじゃないですか。でも結局何も意識せずに乗るというのが最善な方法なんですよね。場数をこなしてきたことで緊張の具合は昔よりはましになりました。練習の時も意識の面やコースの長さの設定は試合を想定したものでやることによって、だいぶ堅くならずに済むようにはなってきたと思います。ショーでは全く緊張しなくなりました。

その中でもいかに自分をマインドコントロールできるか、というのは意識しています。人間は頭で考えたことしかできない、逆に言えば考えられればできるということです。トライアルにおいてもどれだけ頭の中でリアルに考え、実際にやる時までにその再現VTRを描けるのか、ということが重要だと思っています。反面失敗するかもしれない、と思ったらそれは現実になってしまうものですから。

-道具についてこだわりはありますか?

道具を使う競技であれば何でもそうだと思いますが、ある程度のレベルまでいくといいものを使わないと勝てないでしょうね。割合的には道具が半分くらいを占めているかもしれません。一定レベルの自転車をもらえれば、それなりにはできると思いますけど、試合で勝つためにはいい道具を使わないと厳しいです。

今は道具もスポンサードして頂けていますが、当然初めの頃は実費でした。僕の今の装備を揃えるとなると20万円以上はかかりますから、気軽に始められないという部分はあります。でも実際素材の違いによる100g単位の自転車の軽さの差が勝敗を分けたりするんです。乗っていて、全然感覚が違いますから。

それだけ小さな違いを感じ取れるくらい僕は自転車と一心同体になれるので、何か異変が起きた時にはすぐに分かります。おかしいと思った5分後に本当に自転車のパーツが壊れてしまったりするんですよ。

-自転車はオーダーメイドですか?

いや、市販車を売るためにスポンサード頂いているので、基本は用意されている大きさの中から選んでいます。

体ひとつでやるものだって難しいのに、さらに道具を使う競技となるとさらに奥が深いです。僕が乗りやすいと思っても、他の人にとってはむしろ乗りにくいということもありますから。相性を見極めながら道具は選んでいかないといいパフォーマンスは出ないです。自分と相性のいい彼女を見つける、みたいなものですかね(笑)

西窪友海

-バイクトライアルをしている人に何か共通することはありますか。

車を運転していても、電車を乗っていても「あの手すりええな!あの岩めっちゃ登りたい!」と常にキョロキョロして乗れるところを探しています(笑)それでいい感じの場所を見つけると僕はスマホのマップに登録してあります。

最近引っ越したのですが、その場所を選んだ理由も事前に練習できそうなところを見つけて決めました。家賃とかよりもそっちが先でした(笑)

人生における目標として、トライアル競技をカルチャーに

-西窪さんの今後の目標を教えてください。

直近の目標は4月24日に全日本選手権があるので、そこで優勝すること。その先でいくとショーで全国を周りたいです。今までもショーのお仕事を頂くことはありましたが、基本は関西方面でした。いくら映像で観てもらえたとしてもやはり生に勝るものはないです。だから、より多くの人に観てもらうために日本各地に行きたいと思っています。もちろんショーに来てもらうためのきっかけづくりとして映像制作も頑張っていきます。

そして人生における目標としてこのトライアル競技をカルチャーにしていきたいです。まだ競技人口も少ないですし、理解されなくて街でやっていると注意されることもあります。なので、練習環境を整えて、この競技で食べていける道ができ、子供が憧れるような選手を増やしていきたいですし、自分もそういう存在になりたいです。競技を頑張ってきたとしても、途中で辞めなくちゃいけなくなるのはもったいないじゃないですか。選手として小さい頃から積み重ねてきたものを活かせる次のステップを僕が作っていきたいと思います。

西窪友海

-ここからは競技面以外の話をしていきます。オフの日にしている趣味はありますか?

動画編集をしています。競技も好きでやっていることなので、オンとオフの境目がないんです。あとは旅に出たり、知らない街をぶらぶらしたりするのが好きです。

-西窪さんは出身地・奈良県宇陀市が募集していた動画コンテストにも出品して、受賞もしています。

僕は大学に入るまで自然に囲まれた奈良県の田舎で生まれ育ったんですけど、今考えるといい環境だったと思います。身の回り全てが遊びのフィールドでした。都心に出てくると遊んでいても怒られますからね。当時はそんなふうに思ったことなかったですけど。

-好きな異性のタイプは?

アウトドアな人がいいです。一緒にサイクリングとか行きたいですね。あとは束縛しない人。性格はポジティブな人じゃないと無理ですね。これは恋人に限った話ではないですが。

-最後に読者へメッセージをお願いします!

たぶんどんな競技か想像ついていない人もいると思うので、まずはYouTubeで「西窪友海」と検索してみてください!とにかくそれで動画を見るようにお願いします!

その上で僕はこれから自転車業界以外の人にも楽しんでもらえるコンテンツを作っていこうと考えているので、今後にも注目してもらえればと思います。

4月24日(日)には全日本選手権が行われます。昨年は2位でしたが、今年は絶対1位を獲ります!その姿をぜひ生で観てほしいですね。

今は車や電車ばかりで、なかなか自転車に乗らない人も増えていると思います。でもここでもう一度自転車に乗ってみてほしいですね。歳を取ったことで自転車から見る景色にいろいろな変化・発見もあるでしょうし、運動にもなりますよ!

【前編】はこちら

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