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世界を旅する野球写真家が、ファインダー越しに見た中米野球の風景

世界の野球の旅へ。記念すべき1つ目の球場には“侵入”

メキシコの野球場

一番初めに訪れたのはメキシコ。これが、世界の野球を巡る旅に出て訪れた、記念すべき最初の球場だ。

「”ここに人生で2度と来ることはない”と思って行っているので、意地でも中の写真を撮りたいわけです。しかし、1時間ほど粘ったものの、入口にいる門番が通してくれなくて。それで球場の周りを回ったところ、入れそうな場所があったので侵入し、ほふく前進で中に入っていって写真を撮りました。本当に向こうの球場は綺麗で形も独特なんですよね。
…でも遠くの方から警備員が来るのが見えたので、逃げました。球場の周囲も夜は絶対に来てはいけない雰囲気が流れていましたよ(笑)」

スペイン語圏であるメキシコで野球観戦をするというのもなかなか難易度が高かった。
「グワサベという街だったのですが、検索しても現地のマフィアと警察が戦って、マフィアが勝ったというニュースしか出てこないんですよ」

地元民以外、そんな街まで野球を観に行かない。チケットの買い方、ホテルの確保、球場までのアクセスまで、全て現地に行かないと分からない。だから、外部向けの情報が英語で開示されている訳もなく、そもそもホテルや交通手段、野球の試合がそこに存在しているのかですら、確かめる術がないのだ。

マクドナルド

そんな高いハードルを乗り超えて球場まで辿り着き、歓声を聞いた時の達成感や喜びは特別なものがあっただろう。若杉さんは「あの時のよっしゃ!感はすごいですよ。本当に」と噛み締めるように言った。

チケットが買えない!そんなときに取った驚くべき行動

事前に調べたところ、中米の伝統的な国際野球大会・カリビアンシリーズのチケットは日本からでは買えなかった。そのため、若杉氏はチケットが販売される球場に発売2時間前に行ってみたのだが、そこには2時間待ちの長蛇の列ができていた。購入を諦め、知恵を絞って何とか球場に入る方法を考えた。

「初日は試合開始5時間前に行って、関係者のふりをして入ることにしました。そうしたら普通に入れたんです(笑)」
嘘のような話だが、それで2日目も乗り切った。しかし3日目、調子に乗って試合開始2時間前に行くとさすがに門番が立っていた。でも、意地でも球場に入りたい。

「まず、パスポートを見せて、怪しい人じゃないアピールをします。
次に球場の外で関係者に記念として撮らせてもらったパスの写真を見せます。顔写真がない方を見せて、パスを忘れてきたことにするためです。
その上でパスを持っている関係者しか撮影できなさそうな球場内の写真を見せ、再発行の依頼をするわけです」

しかし、担当者は当然再発行をするためにパスを出した人物名のリストを確認する。そこに若杉さんの名前はない。このままではバレてしまう。

「悩んだあげく、最終的にキレてみました。何でわざわざ日本から来たのに、パスがないんだ!と(笑)そしたら向こうも焦って、パスを発行してくれました」
決して褒められた行動ではないが、そこまでできたのは根底に“人生でもう2度と来ることはない”という気持ちがあったからこそである。やらずに後悔するよりも、やって後悔した方がいいということだろう。

メキシコの野球場

野球場から見る空の美しさに気づかせてくれたメキシコでの一枚。これ以降、意識して野球場×空の写真を撮影するようになり、女性にも人気を集めている。

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