bjリーグとTリーグを設立。江島彰弘が作り上げる日本卓球界の未来

スポーツビジネスで活躍するための最速講座として、2010年からスタートした「MARS CAMP」。2019年2月28日(木)の社会人コースでは「『事業化』がキーワード。 リーグ・協会の仕事」をテーマに、約2時間の講義が行われた。

bjリーグ(現在はBリーグに統合)の設立を行ったのち、世界的にも珍しい卓球リーグである「Tリーグ」を創設した江島彰弘氏。人気選手も多い“卓球“という競技を事業化し、メディアプロモーション部で競技の普及と選手の強化を目指している。

2018年10月には開幕2日間で1万人を動員し、話題を呼んだが、そもそもTリーグはどのようにして誕生したのだろうか。Tリーグの誕生秘話と今後の方針を明かしていただいた。

世界No.1のリーグを目指して

「卓球という競技自体はまったく知らなかった」と話す江島氏。五輪や世界選手権を通して、福原愛選手や水谷隼選手をはじめとしたアスリートの知名度は高いにも関わらず、生で試合を見たことがある人は少ないのではないだろうか。その理由の1つに、彼ら彼女らは日本よりも海外で多くの試合に出場していることが挙げられる。そんな状況下で「もっと卓球の試合を生で見てほしい」という思いから発足したのがTリーグだ。

Tリーグの発足にあたっては、3つの目標が掲げられた。

1つ目は「世界No.1の卓球リーグを実現すること」。様々なスポーツがリーグ戦を開催している中で、日本がNo.1になれる競技を考えたところ、卓球が選ばれた。Tリーグは、世界一開かれた地域密着型リーグシステムの実現を目指している。

2つ目は「卓球のスポーツビジネス価値を高めること」。日本卓球協会と連携しながら、卓球のスポーツビジネス価値を高めていくことで、結果的にファンの数や選手のレベル、競技の魅力も向上することを目標としている。

3つ目は「卓球を通じて人生を豊かにすること」。競技の特徴として、子どもから高齢者までが楽しめるという点がある。現在はプロリーグという扱いではないが、今後は年齢やプロアマの垣根を超えて、競技者全員がピラミッドに属し、実力に応じて上のステージに昇っていく形を構想している。

卓球は以前、ヨーロッパなどにもリーグが存在していた。しかし、日本やアジアの選手が参戦するには、食事や時差などの様々な問題があった。これがTリーグ発足の理由の1つでもあり、現在はアジア諸国からトップ選手が参戦している。

Tリーグは男女各4チームで構成されている。発足前は「それぞれ4チームが集まるか不安だった」と語る江島氏だが、「この基準を下げるくらいなら作らない方がマシ」という確固たる決意のもと、結果的に質の高いチームを集めることに成功した。

将来的なプロ化を視野に入れて構想されたTリーグ。そもそもプロとは何なのか定義は難しいが、江島氏は「選手たちがプロであること」「運営母体がプロであること」「興行で生活していること」をプロの定義として挙げている。

このうち1つでも欠けたらプロではないとすれば、Tリーグはプロリーグとは言えない。現在はすべての興行をリーグが運営しているため、入場料はリーグの収益となっている。そして、チームには分配金という形で収益を分配している。

どのように進められていくかが不透明な中で、初めは参戦を見送った選手や、試合数を制限している選手もいたとのこと。そういった選手たちも、今ではほとんどが契約締結に至っており、選手にとってTリーグの存在は大きなものとなっているようだ。

Tリーグのスポンサー獲得戦略

Tリーグのスポンサーメリットは、主に3つ挙げられる。

1つ目は、水谷選手や、現在は理事として在籍している福原氏などを起用したマーケティング活動が行えること。

2つ目は、全世代をターゲットにしたブランドイメージの醸成が行えること。前述した通り、卓球は生涯スポーツであり、Tリーグでは6歳からの育成枠も設けている。将来有望な子どもたちや、若手選手を応援することは企業のイメージアップにも繋がる。

また、渋谷には「T4 TOKYO」という卓球が楽しめるレストランがある。このレストランでは、卓球が“革靴でもできるスポーツ”として広く親しまれている。そんな卓球の最高峰リーグをサポートすることによって、新たなターゲット層を獲得できる可能性もある。

3つ目は、世界やアジア圏での企業プレゼンスの向上が期待できること。卓球はアジアを中心に世界でも人気が高まっており、特にアジア戦略を広げたい企業にとっては、格好のマーケティングの場となる。

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