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選手と識者が語る。W杯で終わらせないためのラグビーマーケティングとは[PR]

スポーツをコンテンツにする方法

栗原選手に続いて登壇したのは、株式会社Future Sessionsの田上氏。株式会社ディー・エヌ・エーでスポーツ事業に携わった経験から「スポーツビジネスの方法論」についてプレゼンを行った。

「続くワークショップに向けたブレストのためだと思って聞いてほしい」と始まったプレゼンでは、スポーツビジネスの4大収益源(入場料・グッズ売上・スポンサー権料・放映権収入)に触れた後、コンテンツとしてのスポーツの例を列挙。バブルランなどの興行や、e-sports専用のホテル、温泉とフィットネスを掛け合わせた温泉施設、ランニングステーション、チームカラーにラッピングされた駅など様々な事例が紹介された。

田上氏のプレゼンが終了すると、ラグビー選手とビジネスマンでペアを組み1対1で意見交換をする時間が取られた。テーマは「トークを聞いて得た気づき/質問したいこと」と、「ラグビーを用いたビジネスをするとしたら何ができるのか」。それぞれ違う立場から交わされる知見が新たなアイデアに結びついたようだ。

頭脳派スポーツであることをアピールし、教育・医療の分野へ

ワークショップでは参加者が入れ替わりながら対話を続けることでテーマを深掘りする「フィッシュボウル」の手法を採り、「ラグビーを用いたビジネスをするとしたら何ができるのか」をテーマに40分間意見を交わした。

※フィッシュボウル:(※)内側の円が対話をする人々、外側の円は対話を聴く人々。内側には一つ空席が用意されている。外側の人は対話に参加したくなったらその席に座り、代わりに内側の一人が外側へ入って対話を進める。

栗原選手が「僕たちの見ていた世界は小さかったと感じた。ファンサービスをどうするのかというところばかり考えていたけれど、スポーツビジネスの視点からは、スポンサーがどうしたら興味を持ってくれるのかなどという点も考えなければならない」と切り出し、ダイアログがスタート。

ビジネスサイドの参加者からは、「ベスト8確定後、ラグビー選手がテレビに出演しているのを見て、フィジカルだけじゃなくて頭脳派なんだということがわかった。考えられる、という部分をビジネスに活かせそうだ」「ビジネスと絡ませるなら、なくならない教育と医療の領域に入っていくのも一手だと思う」といった意見が出ると、現役選手が「実はラグビー選手によるキャリア教育を修学旅行のプログラムに組み込んでもらっている。もっと発展させるなら、どんなことができそうか」と実際の取り組みを交えた発言が出るなど、対話が深まっていった。

発信力を強化し、もっと身近なスポーツに

商社に勤務しながらラグビーを続けている参加者からは「ラグビーを気軽に体験できる場をつくりたい。野球でいうバッティングセンター、サッカーでいうフットサルのようなものがラグビーにはない。バンコクなどで活発に行われていて、ラグビー歴1日の人とでも楽しめる10人制ラグビー大会を日本で実施しようと画策している」とすでに動きのある具体的な施策についての発言もあった。

これから挑戦していくことについて活発に話し合われる中、現状の課題も浮かび上がる。

それが“発信力の弱さ”だ。小学校の体験教室やごみ拾いを実施したときにしか更新されないSNSアカウントには「他にどんな発信ができるのか、各チームでバラバラに頑張るのではなくてスクラムを組んで考えていくべき」とラグビー用語を交えながら提案があった。ワールドカップが民放で放映されたことによる効果にも触れ、「ラグビーを目にする機会を増やせば身近なものと認識してもらえるはず」との声も挙がった。

終始白熱した議論が交わされ、あっという間に終了の時間に。感想を聞くと、現役のラグビー選手にとっても、ビジネスマンにとっても視野の広がる契機になったようだ。

W杯で一躍ムーブメントを起こしたラグビー界。4年前の二の舞を演じないようにと現役選手とスポーツビジネスパーソンが、それぞれ得意分野の知識をもとに真剣に考え、対話する姿が印象的であった。

2020年1月12日に開幕するラグビートップリーグまでの「空白の2ヵ月間」。にわかラグビーファンの心を掴み続けることができるかは、彼らの発想と行動にかかっているといっても過言ではない。大きなビジョンを設定することももちろん大事だが、すぐに実行に移せることからまずはコツコツ積み重ねていくのが吉なのではないだろうか。

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