サイズと「ウイズ」。シューズの選び方を変えたニューバランスの魅力
※トークセッションの内容を一部抜粋してお届けします。
“N”の頭文字をあしらったスニーカーで広く知られている、アメリカ発祥のスポーツブランド「ニューバランス」。近年はサッカーシューズやランニングシューズにも注力し、ファンの属性を広げています。
2019年10月25日(金)に開催されたCX(顧客体験)についてのカンファレンス「CX DIVE」では、「なぜニューバランスというブランドに惹かれるのか?」をテーマにセッションを展開しました。
株式会社ヤプリ 執行役員CCOの金子洋平氏をモデレーターに、株式会社ニューバランスジャパン DTC Eコマース部シニアマネージャーの牧嶋琢実氏、株式会社Moonshot 代表取締役CEOの菅原健一氏、株式会社インフォバーン ソリューション部門部門長/執行役員の羽村悠己氏が登壇し、ニューバランスへの愛を熱く語りました。
シューズ選びの新たな基準となる「ウイズ」
ー皆さんはニューバランスのいちファンとして登壇していただいていますが、そもそもなぜニューバランスを好きになったのでしょうか?
菅原:私は10代の頃からニューバランスに憧れがありましたが、正直結構高いじゃないですか。しかも普通のモデルよりも高いもののほうがかっこよく見えるので、あえて見ないふりをしていたんですよね。
でも、気づいたらニューバランス教に入信してしまっていました。最初は店舗でサイズを測ってもらって、自分の足に合うものを買って。見た目で好きになったのに、買う時には見た目ではなく、納得感のあるものを選んでいたんですよ。
ー昔は雑誌でスタイリストやモデルが履いているものを見て、買うことが多かったですね。
羽村:私も昔はBOON(※) という雑誌をずっと見ていて、その中でニューバランスのスニーカーが出てきました。正直、最初はフォルムが丸っこくて、Nのマークが大きいし、なんかダサいなという印象があって。ただ、周りの人が履いているのを見て、かっこいい人も履いているということは、実はかっこいいのではないかと。それから、私もいつかはニューバランスが履きたいと思うようになりました。
※BOON・・・1990年代に流行したメンズファッション雑誌。当時のスニーカーブームを牽引する存在だった
ニューバランスのスニーカーは、1回でも履くと、どんどん語りたくなっちゃうんですよね。「実は1300って…」とか。モデルを数字で表しているあたりもかっこいいじゃないですか。
牧嶋:外国の車の型番に近いかもしれないですね。ちなみに私はお二人と違って、ファッションから入っていないんですよ。
私は足の幅が普通の人より広くて、かっこいいスニーカーを無理して履いていたんですが、やっぱり足が痛くなるんです。そんな時にニューバランスのスニーカーを勧められて、スポーツショップで実際に履いてみたら、足にぴったりとフィットしました。2Eや4Eというウイズ(靴の幅)の概念も初めて知りましたし、こんな幅広な私でも合うスニーカーがあるんだと。
ニューバランスジャパン 牧嶋琢実氏
ーECサイトで購入する時に、靴のサイズだけでなく、ウイズを選べるのは衝撃ですよね。
牧嶋:ウイズサイジング(※)という概念がニューバランスにはあって、直営店では3Dスキャンというサービスをやっています。
※ウイズサイジング・・・一人ひとり異なる足の形体に対し、より良いフィット性を実現するために、サイズだけでなくウイズでもシューズが選べる
菅原:あれは絶対にやったほうがいいですよね。足の幅とか甲の高さが、履き心地に影響してくるとは知らなかったですから。
牧嶋:それまでは足の長さという概念だけだったんですよね。そこにまた違った概念が加わったことで、履き心地が全く変わることに感動しました。
ブランドを“卒業”ではなく“継承”する
ーブランド側としては、ユーザーにはどのような傾向があるとお考えですか?
牧嶋:あまり特定のモデルに偏っていない印象があります。996が好きな人は996、574が好きな人は574というふうにリピーターが多いです。
あとは、ニューバランスはファーストシューズとしてのシェアがものすごく高くて。小さな子どもがニューバランスのスニーカーを履いて、物心がついてからは他のブランドも楽しんで、ある程度の大人になるとまたニューバランスに戻ってくる。それからは安定して買い続けるという流れがあります。
ーその流れは、マーケティングとして狙っている部分もあるのでしょうか。
牧嶋:最近はキッズシューズにもウイズという概念が出てきています。親御さんにとっては、子どもの成長を考えると、少し大きいものを買って長く履かせたいじゃないですか。
でも、ちゃんとその子どもに合ったものを選ばないと、指や足の形が変形してしまう可能性もあるんです。私たちは足の大きさと真剣に向き合っているブランドなので、だからこそ支持されているという面もあると思います。
菅原:自分が好きで履いていると、自分の子どもにも履かせたくなりますし、そうするとブランドを“卒業”することなく続いていきますよね。私はコンサルとしてブランドのサポートも行っていますが、一番難しいのはユーザーに卒業されないことなんです。
最初は入学してトライアルユーザーになってもらうものの、多くの方はロイヤルユーザーにならないで、そのまま卒業していくじゃないですか。どんなに良いブランドでもそうですし、入学生が少なくなると、ユーザーの平均年齢は上がっていってしまいます。
その点でいうと、親御さんにも信頼されているニューバランスは、マクドナルドに近いですよね。まずはハッピーセットで入学してきて、それから大人になってもずっと買い続けていく。すごく良い状況が作れていると思います。
Moonshot 菅原健一氏
牧嶋:実際にアメリカの担当の方に話を聞くと、父親が子どもにニューバランスのスニーカーを勧めるという“継承”の文化があるそうですよ。
ーCX(顧客体験)という面で見ると、ニューバランスにはどのような印象がありますか?
菅原:ニューバランスは、サイズがなんとなく合っているだけではダメなんだと、シューズの選び方を変えてくれました。その選び方になると、ニューバランス以外の選択肢がなくなるんです。そういった顧客体験が一貫して管理されているような印象を受けます。
皆さんが好きなブランドや、担当しているブランドがそれをできているかというと、なかなか難しいですよね。まずはお店がなければいけないですし、店員さんが理解していないといけない。そして、何よりも周りの人が語ってくれないと。かなり難しいことですが、ニューバランスは歴史を通じてできているのではないかと思います。
羽村:ニューバランスに対して「ミーハーじゃない」「安心感がある」「心地よい」という期待があって、実際に履いた時に叶えてくれることが、一つの顧客体験です。それに加えて、CMがイメージを損なうようなものでなかったり、ECサイトでしっかりとおもてなしをしていたり。統一感を持たせた上で、拡張することを突き詰めていることも顧客体験だと思います。
インフォバーン 羽村悠己氏
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