バドミントン『ヨネックス_ナノフレア800(前編)』

オグシオペアが活躍した頃だっただろうか、バドミントンに対する世間の注目が高まりはじめたのは。現在では男女のシングルス、ダブルスと、世界ランキング上位に、これだけ日本選手が並ぶ種目はなかなかない。先日、抽選結果が発表された東京オリンピックのチケット争奪戦でも、バドミントン狙いだった人は多かったようだ。

俊敏かつパワフル、ときには繊細な動きで見るものを魅了するバドミントンのプレーを大きく左右するのが、プレーヤーが操るラケットだ。学生時代、部活でバドミントンに打ち込んだ人でなくとも、誰しも一度は手にしたことがあるはずだ。もっともそんなお遊び用ラケットは、トップ選手が用いるものとは別モノではあるのだが…。

今回紹介するのはヨネックスの上級者向けバドミントンラケット「ナノフレア800」。ヨネックスは1957年からバドミントンのラケット生産をスタート。バドミントン=ヨネックスと言われるほど、世界的なトップメーカーとして君臨する。桃田賢斗、山口茜、廣田彩花、福島由紀など、世界のトップで活躍する錚々たるプレーヤーたちもヨネックスのラケットを愛用する。

ひと口にラケットとはいうものの、フレームの形状はまったく同じでも、重さなどのスペックが変われば、まったく違ったモノになるといわれるほどの奥深さがある。というのも、同じバドミントンではありながら、シングルスではシャトルを打つという感覚が重視されるが、ダブルスではシャトルを弾くという感覚が求められる。いわばまったく異なったスポーツであるかのような違いがある。

当然、それはラケットにも反映されることになる。もちろん個々のプレースタイルによっても、またダブルスであれば前衛、後衛によってもラケットに求められるニーズが変わってくる。それらに応えるために、ラケット作りには緻密かつ多様なアプローチが欠かせない。奥深いといわれる由縁だ。

たとえばラケットの重さをみてみよう。重さの表示にはUが用いられ、今回紹介する「ナノフレア800」は3Uと4Uが設定されている。Uの前に着く数字が大きいほど軽い。強いショットを打つためには重いラケットの方が向いているとされるが、一方で操作性の面では、早い展開への対応が重いラケットの場合は遅れることもある。重さ、軽さそれぞれに長所と短所が存在するのだ。また同じ重さのラケットであっても重心の位置の違いによって、ヘッドヘビーであればパワフルなショットに、ヘッドライトであればソフトなショットに特性を発揮する。

またシャフトもショットの質を左右する大切な要素。しなりが大きいのか、小さいのかでもラケットのもち味は違ってくる。もしもあなたの趣味がゴルフであれば、クラブのシャフト選びに通じる部分で、イメージしやすいかもしれない。

ほかにもグリップやフェイス面などこだわるべきポイントは数多い。ただそれらに共通するのは、わかりやすいスペック至上主義だけでは片づけられないカスタム感覚だ。

より機能的な素材、パフォーマンスを高めるための新たなテクノロジーを搭載することで、プレーヤーによって異なるデリケートなリクエストに応えるべく、ラケットは進化を続けてきた。軽快な弾きでエキスパートプレーヤーたちから高い評価を得た「ナノフレア700」に続くニューモデル、「ナノフレア800」が目指したものと、そこに込められたこだわりを次回紹介する。

※後編へ続く

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