最高の一瞬『妹のぶんまで_小原日登美(レスリング)』
小原日登美選手が、2012年のロンドン五輪で金メダルを取ったときのワンシーンです。
悲願の金メダルでした。51kg級では何度も世界選手権で優勝していたんです。ただ、オリンピックでは実施されない階級だったため、55kg級での出場を目指したのですが、そこには吉田沙保里選手という強力なライバルがいました。
2008年の北京五輪で出場が叶わなかったので、その年に引退しました。ところが同じくレスリングをやっていた妹が引退を表明すると、現役復帰します。そして今まで妹が出場していた48kg級で、オリンピック出場を目指すんです。
このときの減量がものすごく大変だったと聞きます。このころに会ったときは少し病的に細くなった感じで、大丈夫かなとも思いました。それでも代表選考がかかった世界選手権や日本選手権で優勝し、ロンドン五輪に出場。見事に金メダルを取りました。優勝が決まった直後の写真は、彼女の感情がよく出ていると思います。
レスリングを撮っていて思うのは、国を背負っている感じが、私が見聞きしている他のスポーツと比べて全然違うということです。個人競技だから余計になんでしょうけど、ひとつの試合にかける気迫が、比べ物にならない。負けたら、負けたで、この世の終わりみたいな雰囲気になります。
小原選手は、ロンドン五輪を目指す途中で結婚をし、五輪後に2度目の引退。減量がハードだったためその後の体調なども心配されていましたが、その後無事にお子さんも出産し、今では自衛隊で指導者をしながら母親業もしています。すごい人です。
▼佐野美樹(さの・みき)
1977年、東京都生まれ。写真家いしだまことに師事後、スポーツフォトグラファー梁川剛のアシスタントを経てフリーに。サッカーやレスリングを中心としたスポーツだけでなく、人物ポートレートや料理など、広告やエディトリアルにて幅広い分野で活動している。仕事柄、国内外問わず出かけることが多いため、密かに旅の写真を撮りためている。
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