スポーツウエア『ルコックスポルティフ_スターコレクション』
サイドにラインが入ったジャージのパンツをおしゃれに着こなす女性を、街中で見かけることが増えた。だがそんな流行がはじまったころは、あれは学校ではいていた体操着では、と首を傾げたものだった。
そもそもスポーツウエアは、体を動かしやすい構造で、デザインも控えめ、カラーにもそれほど気をつかうことなく、どこか“体育”のイメージをひきずったものだった。だがスポーツウエアの機能性は驚くほど向上し、一方でその見た目は、頭に「スポーツ」という言葉がついていることを忘れてしまうほどモダンになっている。
今回、紹介するのはルコックスポルティフのスポーツウエアだ。このブランドの歴史は19世紀後半に遡る、フランスを代表するグローバルなスポーツブランド。サイクルスポーツやサッカー、ラグビーなどさまざまなスポーツで、三角形の中に鶏が配されたロゴがついたスポーツウエアを目にした経験はあるはず。また国内女子ゴルフで、昨年、賞金女王に輝いた鈴木愛もルコックのゴルフウエアを着用していた。
だが今回の「スターコレクション」のウエアがターゲットにするのは小学生の女のコたち。もちろん何かの種目に特化されたものでもない。そのためトップアスリートたちを満足させるような優れた機能性が前面にでるわけではない。だが女のコたちのハートをとらえて離さない魅力を備えているのだ。
この「スターコレクション」はその出自から異色だ。その舞台となったのが北海道。そのあたりを「スターコレクション」の立ち上げに携わってきた、デサントジャパンの河上恵実子さんに聞いてみた。
「北海道は寒くなるのが早いので、公立小学校の運動会は6月に行われるのがほとんど。しかもこの運動会のときは学校指定の運動着ではなく、自由な服装で参加できる場合が多いのです。ですからスポーツショップの店頭では3月から5月にかけて、ジュニアのウエア売り場が拡充されるような風土があります」。
自分のことを思い返してみると、運動会とはいえ、着るのは普段の体育の授業と変わらない指定の運動着だった。そのせいか運動会の思い出の中で、着ていたモノまでよみがえることはない。
ところが子供にとっても、親御さんにとっても、ちょっとした晴れ舞台である運動会。そこに自分の好きな服を着ていけるのなら、ガキモード全開の男子より心身ともに成長が早い女のコであれば、何を着ていくのか思いを巡らし、テンションも上がるはずだ。毎年、運動会に合わせて買い替えるという話もうなずける。
以前からルコックスポルティフでは、女のコ向けにジャージの上下やハーフパンツを展開していたという。ただ河上さんに言わせると、「男の子モノのオマケ的な扱いで、カラーやデザインを選べるとは言えず、女のコのかわいい志向を満たせるようなものではなかったですね」と言う。
そんな河上さんのもとに、ゼビオの北海道エリアマネージャーから、女のコに向けたかわいいスポーツウエアの新しいシリーズを一緒に作りませんか、という誘いが届いたのは今から2年前。
河上さんが思ったのは、カジュアルファッションと同じように、スポーツウエアでも自分の好きなものを選んで着たいという欲求は、小学生の女のコにもあるはずだということ。ならば求められるのは、ターゲットとなる小学生の女のコたちが好む、かわいいとは何かを探るということになった。
北海道にたびたび足を運び、女のコが実際に着ているスポーツウエアを見てまわったり、親御さんへのリサーチも繰り返した。ときとしてライバルはスポーツウエアの枠を超えてファッション全般に広がった。また河上さんをはじめとする大人の価値観とは異なる、女のコ目線に惑わされることも多かった。
「上のTシャツですが、星のプリントが大きいのが特徴です。ですが当初はプリントのサイズはもっと小さく控えめでした。今思い起こすと、それって大人の美意識が出ていたのですね。この大きさの星のプリントのほうが圧倒的に女のコたちの評判はよかったですから」と河上さんは振り返る。
こうして「スターコレクション」が目指す、“かわいい”の方向性が見えてきた。それは無難ではなく、キャッチーでインパクトのあるデザイン。星柄に代表されるようなウキウキと元気がでそうなモチーフ。そしてユニセックスで着られる色ではなく、女のコが好むカラーリングに行き着いた。そしてこれらは、従来のジュニア向けのスポーツウエアではスルーされがちな部分でもあった。
ここまでデザインについて触れてきたが、スポーツウエアとしての機能性も、ルコックスポルティフというブランドのウエアである以上、絶対に譲ることのできないポイントだ。女のコたちがこれを着ることで、体を動かすことが楽しいと思ってもらえることが、ジュニア向けのスポーツウエアの命題なのだ。
そのためには動きやすさのためのストレッチ性や、着心地を左右する吸汗速乾性などには十分すぎるほど気をつかっている。こうした機能性は、女のコたちにそれほど刺さることはないが、ウエアを購入することになる親御さんたちは厳しく吟味している。
「今どきはカジュアルファッションブランドの子供服でも、機能性をアピールするものも少なくありません。けれど私たちは、スポーツウエアのブランドとして、トップアスリートたちが求めるような機能性をカタチにしてきた自負とノウハウがあります。こうした部分でアドバンテージがあるのは明らかですし、ここは負けられないところですね」。これまで笑顔で話してくれていた河上さんの表情が少しだけ引き締まった。
北海道の女のコたちに支えられ、この春から正式に立ち上がった「スターコレクション」。はじめて開いたファッションショーも大入りの盛況だった。そしてモデルになった女のコたちから相次いだ「コレ欲しい!」という声が
河上さんたちの大きな励みとなった。
そして今シーズンはパーカや小物なども加わってラインナップも充実。「スターコレクション」のアイテム中で、思い思いのコーディネートを楽しむという、女のコたちにとっては魅力的な時間を提供できるまでになった。
スポーツウエア、普段着、遊び着、こうしたカテゴライズは作り手側の思惑でしかないのかもしれない。だがこれを着ることでスポーツの楽しさを知るきっかけになってほしいという、このウエアに込められた河上さんたちの思いは、袖を通す女のコたちに確実に伝わっていくに違いない。かわいくて、本当に動きやすく、快適なスポーツウエアはほかにはなかなかないのだから。
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