テニス『ウイルソン_プロ オーバーグリップ』
世界をおおうコロナ禍の影響で、世界中のテニス好きたちはコートに立てなくなってしまった。そしてツアーも休止状態に。トッププレーヤーたちは試合を失い、ファンも、プロたちのプレーを見る機会が、過去の試合ばかりでは歯がゆいばかりだ。
そんな折に、マドリードオープン・バーチャルプロというイベントが開催され、錦織圭がオンラインゲームでプレーするシーンを見た。バーチャルとリアルを比べて語るのは畏れ多いのだが、リアルでは世界と戦う彼も、コントローラーを手にしたときには、自在にラケットを操るというわけにはいかない様子に、どこか親近感を覚えた。
そんな錦織圭のリアルなプレーでの魅力は、コースや展開を生かすクリエイティビティーにある。そのためにはもちろん優れたラケットが求められるし、ストリングにも気を配る。だがもうひとつ忘れてはいけないものがある。それはラケットを自在に操るためには欠かせないオーバーグリップだ。
今回紹介するのはウイルソンの「プロ オーバーグリップ」。これは錦織圭やロジャー・フェデラー、ファン・マルティン・デル・ポトロなども愛用するのだが、プロユースというわけではなく、誰でもが手にすることができる製品だ。
テニスラケットを振った経験がない人には、このオーバーグリップというものがイメージしにくいかもしれない。このオーバーグリップとは、ラケット購入時に巻かれている既成のグリップの上に巻かれる白い(さまざまなカラーがあるが、白がもっともポピュラーだろう)テープ状のもの。その用途はさまざまだが、主にはグリップが滑らないようにするために用いられる。プロのように試合ごとに巻き替えるとまではいかないまでも、それほど高価なものではないため、一般的なプレーヤーも適宜に巻き替えて使っている。
グリップというのは手とラケットの接点。繊細なラケットさばきもボールをうったときの感触もグリップの介在なくしては存在しない。先に用途を滑らないようにするためと述べたが、これは同時に握りやすさにも繋がってくる。
テニスはサーブ、ファア、バック、ボレーなど、打つショットによって微妙にグリップを握り替える。そのためこのグリップチェンジがしやすく、しかもインパクト時にラケット面がブレないようにしなくてはならない。しかも打球のコントロールやスピン量の調整、打った時の感触に至るまで、オーバーグリップのフィット感が左右することになる。また汗をかいても滑りにくくするというのも大きな役割となる。
錦織圭は「ウイルソン以外のメーカーのものもいろいろ試しましたが、やはり「プロ オーバーグリップ」ほどフィーリングは合わない」と語り、そしてあのロジャー・フェデラーをして「これ以外のグリップテープは考えられない」とまで言わしめた、このウイルソンの「プロ オーバーグリップ」は、あまたのオーバーグリップと何が異なるのだろうか?
まずはその素材に注目したい。オーバーグリップは不織布から作られる。不織布とは、布とはいうものの、織られたり、編まれたりしておらず、融着や結合されることで作られたシート。このところ焦点化した使い捨てマスクもそうだが、実に幅広いジャンルで不織布は用いられている。その原料はコットンや麻などの天然素材から、合成繊維や再生繊維、パルプなどさまざま。この「プロ オーバーグリップ」はポリエステルの糸から生まれた不織布が用いられている。
実は「プロ オーバーグリップ」に用いられる不織布は、テニスのオーバーグリップに使うことを前提にわざわざ開発されたものだ。というのも、用いる繊維の量を少なくするか、多くするかで握ったときの感触が変わる。また目が粗ければ伸びても戻らず、目が密すぎると引っ張っても伸びない。そのため少し引っ張って伸ばしてもすぐに元に戻るという、オーバーグリップにとってベストの不織布は、新たに開発しなければならなかった。
結果、商品テストでも引っ張り強度が高く、形状復帰力が高い(つまり切れにくい)という結果が出たという。握りやすく、グリップチェンジもしやすい、オーバーグリップには最適な不織布が誕生したわけだ。
さらに「プロ オーバーグリップ」ならではの“絶妙なウェット感”にも秘密がある。不織布の表面に、ポリウレタンを貼り付ける(乾式)でもウェット感を出すことはできる。だがこれではウェット感は長続きせず、求める“絶妙なウェット感”にもほど遠い。そこで取り入れたのが湿式コーティングという製法だ。
この製法は不織布を、長い時間、ポリウレタンの水槽に繰り返し浸けるという作業が特徴である。これによって目の細かい不織布の中にまでポリウレタンが行き届くようになる。表面に貼りつけるだけではここまではできない。言ってみればコストをかけて、手間のかかる工程をあえて加えることで「プロ オーバーグリップ」ならではの魅力が生まれるわけだ。
一般的なオーバーグリップは巻きつける前、テープ状の片面だけがビニールテープでおおわれていることが多い。だが「プロ オーバーグリップ」の場合、両面ともビニールテープでカバーされている。それは湿式コーティングによって、表裏問わず、くまなくポリウレタンが染み込んでいる証でもあるのだ。
こうしたこだわりは高い品質を保つことができてこそ華ひらく。実はご多分に漏れずオーバーグリップも、生産拠点をアジアに置くというのが昨今はあたり前だったのだが、「プロ オーバーグリップ」はあえて素材の調達からすべての製造(なんとパッケージに至るまで)をメイド イン ジャパンで行っている。これもこの製品にかける本気度の現れといえるだろう。
こうして「プロ オーバーグリップ」は切れにくい、ウェット感が高くそれが長持ちする、滑りにくい、ズレにくい、摩耗に強いといった評価を受けて、プロアマ問わず、テニスプレーヤーたちから絶大な支持をうけている。それはラケットやストリングであれば、プレーヤーのスキルによって向き、不向きが出てしまうのだが、オーバーグリップを握るときの感覚は、スキルに左右されることなく、普遍的なものだからだ。
「太くてちょっと巻きづらいかもしれません。それでも1回使ってみてください。きっと虜になりますよ」
この「プロ オーバーグリップ」の開発に携わってきたアメア スポーツ ジャパンでウイルソンのテニスラケットを担当する、道場滋さんの締めのひと言だ。
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