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シードって何位まで? クラブハウスの雰囲気は? 欧州女子ツアーのこと少し知ってください! 【ゆり’s ROAD】

英語でインタビューに答えることも(写真:本人提供)

独自の道を切り開き、プロゴルフの世界で戦っているひとりの選手がいる。26歳の女子プロゴルファー・識西諭里(おにし・ゆり)がその人だ。日本でのツアー生活を目指すも、これまでに7度挑戦したプロテストで合格をつかみ取れず、今年は米国、欧州と世界各国を股にかけて転戦を続けている。“未知の世界”に飛び込んで奮闘する姿を追う。現在は日本に戻り、地元・福岡県でオープンウィークを過ごしている。そこで、今回は特別企画としてあまり馴染みがないという人も多そうな“欧州女子ツアー”の雰囲気などを識西に聞いてみた。

■ランキング、シードの仕組みは?
 
欧州女子ツアー(以下、LET)は米国(以下、USLPGA)や日本と同じでポイント制のランキングで女王やシードが争われます(名称はレース・トゥ・コスタ・デル・ソル)。シードはランキング上位60位が目安になりますが、少しだけ複雑。『推薦』、『前週のトップ10選手』、『今年の優勝者』といったカテゴリーがあって、『ランキング上位60位』というカテゴリーが、上から4番目に位置します。そして、60位までの選手たちのなかで、順位に応じてランクが振り分けられます。
 
とはいえ、ここに入っていれば、ほとんどのLETの試合には心配なく出られる、というイメージです。ただ欧州で開催されるメジャー大会は、USLPGAの選手がメインになるため、やっぱり少しハードルは高め。あとシーズン中にはリシャッフルも行われ、私のようにQTで出場権を手にした選手は、そこでカテゴリーを上げることを目指します。
 
■ツアー会場の雰囲気は?
 
大会や開催国によって、規模感がかなり変わってきます。スウェーデンで行われた男女混合大会(ボルボ・カー・スカンジナビアミックス)はDPワールドツアー(欧州男子)が主体になるため、すごく豪華でした! アニカ・ソレンスタムも出ていましたよ。あとはイングランドでの試合(識西が6位に入ったアラムコチームシリーズ・ロンドン)もギャラリーが多かった~。最終日は地元のチャーリー・ハルと同じ組になったのですが、ギャラリーが多くて『お~~』って感じでした。
 
でもチェコでは、試合中にローピングを作っていて、『それ、今やる??』って感じ(笑)。ベルギーでの試合も『さびしい!』って思うくらい、ギャラリーがいませんでした…。スタンドもなく、ギリギリテレビのカメラ台がある程度です。そういう意味では、日本ツアーというよりもUSLPGAの雰囲気に近そう。
 
LETも大きい大会は設備や選手へのホスピタリティがすごいんです。ただ大会によっては選手の飲み物もない、ということもありました。なので大きい試合になると、『やった~! 飲み物も食べ物も取り放題だぁ~』って真っ先に思ってます(笑)。
 
■日本とは違うなって感じる部分は?
 
初めて出場したケニアの試合は、コースにキリンもいたし、LETデビュー戦だったのでインパクトがすごかったですね。でも、人って、おそろしいことにどんどんそんな環境にも慣れていくんです(笑)。ケニアでは、空港への送迎バスが人で溢れかえってそれもビックリ! よくテレビとかで見る、東南アジアでバスにすごい数の人が乗っている…あんな光景みたい。道路もあまり舗装されておらず、あそこまで揺れる車に乗ったのは初めてでした…。
 
あとはラウンド時間も最初はビックリ! 例えば日没が夜11時30分だったフィンランドでは、サスペンデッドの影響もあってホールアウトしたのが、なんと夜10時! ホテルについたのは日にちが変わる頃で、友達が買っておいてくれたご飯を、味わうことなく食べてすぐに寝る感じになりました(笑)。順延したせいで次の日も早朝のスタートでしたし、あれは大変でしたね。
 
■選手はどんな感じ?
 
とにかくコースでは、いろんな言語が聞こえてきます。『へぇ~、アイスランド語ってあるんだ~』とか、新たな発見の連続です(笑)。共通語はやっぱり英語なんですけど、私は…最低限のコミュニケーションはとれますよ、という程度。でもこの間、タイやイングランドの仲がいい選手から『英語がうまくなってるね』って言われて、それはうれしかったですね~。もともと英語は好きなので、今もアプリとかで勉強を続けている最中です!
 
あとは身長もスケールも大きい選手が多い。(平均飛距離250ヤードで)私も日本では飛ばし屋って言われる方なんですけど、海外では平気で20ヤードくらい置いていかれることも。これまで『私の武器はドライバーです!』とか言ってきたんですけど、そんなこと今は口が裂けても言えません(笑)。
 
球質も違いますし、海外の選手は余力をもたせながら打ってるにもかかわらず、信じられないくらい飛ばすという感じ。私の身長は166センチで、これも日本では決して小さい方ではないんですけど…、LETだと私より低い選手はいないかも?
 
■海外にいるからこそ感じること
 
『やっぱり日本っていい国だな』っていうのはすごく感じます。ご飯は美味しいし、治安もいい。海外では、列に並ばずに割り込まれることもけっこう多いので、日本に帰るとエスカレーターとかで『キレイに並んでるな~』というのはすごく感じますね(笑)。こういうことは、海外に出でみないと分からないことだなって実感してます。
 
あとは経済や世界情勢に、すごく興味が湧いてきました。例えば、今までは『円安』って言われてもあまり自分のこととは思えなかったんですけど、今は日本円換算しちゃうと物価が高すぎて何も食べられない、みたいなことを肌で感じています。
 
地理も『フィンランドってここにあったんだ』とか、身を持って感じたり。ロシアを迂回するように飛ぶ飛行機に乗った時には、戦争が身近なものに感じられたし、日本が平和なことがすごくありがたいことなんだなって思ってしまいますね。
 
ゴルフの面でいうと、先ほど海外の選手が飛ばすという話をしましたが、逆に日本の選手の曲がらないドライバーの上手さとかは改めて感じます。日本には狭いコースが多いので、やっぱりそうなるんですかね? そこまで飛ばせないし、環境っておもしろいなということは改めて感じる部分ですね。
 

 
少しはLETの雰囲気を感じることはできた? これからもさらにいろいろな国での試合に出場してもらい、仰天エピソードなどがあれば、ぜひ教えてもらいましょう!
 
■識西諭里(おにし・ゆり)
1997年4月16日、福岡県出身、26歳。福岡第一高卒。9歳でゴルフを始め、2015年の福岡県民アマチュアゴルフ選手権優勝などの実績を残す。昨年は予選会を突破し6月の「全米女子オープン」に出場。米国、欧州ツアーの予選会にも挑戦し、現在は欧州を主戦場にしている。身長166センチ。株式会社梅の花所属。

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