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悲願の初メジャー勝利へ4差で最終日を迎えた上田桃子 7度口にした「腹をくくる」

上田桃子(左)、最終日につながるバーディフィニッシュ(撮影:上山敬太)

<ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 3日目◇6日◇茨城ゴルフ倶楽部 西コース(茨城県)◇6780ヤード・パー72>
 
国内メジャー54回目の挑戦で、再び上田桃子にメジャー初制覇のチャンスが巡ってきた。3日目はトータル4オーバー・11位タイからスタートして、硬くて速いメジャーの難セッティングに加えて、強風が吹き荒れる厳しいコンディションのなか、イーブンパーの「72」と耐えてスコアを守り、3位タイに浮上してきた。

トップは同じ辻村明志コーチに師事する吉田優利。2日目が終わった時点では8打差まで開いていたが、3日目に吉田がスコアを落としたことで、その差は4打まで縮まった。「きのう(2日目)の時点で10打差以上あるときついと思っていた。10打差以内にはいたいなぐらいの感じでしたけど、実際に回っていたらそんな余裕は全然なかった」。風が強かった2日目の午後、そして3日目と、周りのスコアを気にするよりも自分のゴルフに必死だった
 
しかも、3日目のスタートホールの1番パー4では、気まぐれな風に翻弄されていきなりガードバンカーに入れ、ボギー発進。ここで上田は“いい意味”で諦めた。「フェアウェイのど真ん中から9番アイアンで乗らないんだから、予定通りにはいかない。1番ホールで半ば諦めて、徹底して手前からいって、アプローチで微妙なパーパットが残ることは覚悟して、ボギーを受け入れながらゲームを組み立てていった。その諦めがいい方向にいったのかなと思います」。
 
無理にグリーンを攻めて奥に外せば、速いグリーンに下りのアプローチが残り、ボギーどころかダブルボギーになる危険もある。打つタイミングによって強さが変わる風を完全に計算するのは難しい。だからグリーンに届かなくても手前から確実に、リスクをできるだけ減らしていくゲームプランに変更したのだ。
 
その3日目のラウンド後の会見で上田が7度も口にしたのは、「腹をくくる」という表現だ。「初日から“腹をくくる”ことだけを思ってやっています。どうあがいても難しい状況は変わらない。ボギーを打ちたくないとか、曲げたくないと思うとメンタル的な部分で難しくなってくる。そこはコントロールが利かないところなので、ボギーを打っても受け入れながら、次、次、という感じでした」。
 
今大会のプロアマで上田は尊敬する宮里藍と一緒に回っている。宮里もまた「思いが強ければ勝てるかといったらそうでもないですし、本当に自分がコントロールできるものとできないものをしっかりと分ける必要性はある」と語っている。自分でどうにもできないものは深く考えずに受け入れる。宮里の「彼女はわかっている」の言葉通り、上田も直接はアドバイスされたわけではないが理解している。
 
今回は難しいセッティングということもあり、ホールによっては長い時間待たされることが多い。自分の間合いで回るのが難しく、嫌でも考える時間が多くなるが、上田は「それまでに考えられることを考えながら、アドレスに入ってからのリズムだけを大事にして、シンプルにやることを大事にして待っていました」。アドレスに入ってからは迷わずに打つ。それが3日目はうまくいった。
 
そして、きょうの最終日は雨のなかでのゴルフになる。「けっこう女子の選手って雨はみんな上手いんですよ(笑)。意外と曲がらないので、(雨でグリーンがやわらかくなって)球が止まる状況のほうが楽だなと思う選手が多いんです」と、3日目までとは少し違った展開を予想する。
 
それでも「まずはフェアウェイだけはキープすることをトライして、ダメだったらラフが深いので雨でより難しくなる。そこもある程度腹をくくりながら、最後まで諦めずに、自分にできるベストを心がけて、前向きにやりたいと思います」。上田のメジャー初優勝をかけた18ホールは8時にティオフを迎える。(文・下村耕平)

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