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想像を絶するバブル時代のゴルフ 台風直撃でも、なぜプレーをしようとしたのか?

横浜ミナトChampionshipの最終日は豪雨の影響で3時間以上の中断。グリーンには川が出現?(撮影:ALBA)

台風が来るたびに夏から秋に季節が進んでいくと言いますが、できれば台風は来ないで、と祈るのが人情です。

「台風でも、ゴルフはできるのですか?」。ゴルフは原則として雨天決行なんです、という話をしていたらこんな質問がありました。「台風直撃だとコースがクローズしてしまうので、ゴルフはできませんね」と答えました。当然ですよね。現在では、台風の中でプレーさせて、もし事故が起きたらコース側の責任を問われるのでクローズするのが常識になっているのです。

前日、午前中の気象予報でゴルフ場があるエリアに台風が直撃か、それに近い場合はほとんどのコースはクローズになるのが普通。ただ、どの程度でクローズになるのかなど明確な決まりはないようです。

ところがバブル期までは、たとえ台風であってもゴルファーがプレーを希望する限りそれに応えるのがゴルフコースのサービスだという気風がありました。良くも悪くも、ゴルファーファーストだったのです。当時は予約がなかなか取れなかったということもあり、台風でも奇跡を信じてゴルフ場までは行くというのが当たり前だったという背景もあります。

「せっかくのゴルフを中止にしたくない」、そんな思いが、いまよりずっと強かったような記憶です。ネットで手軽に予約が取れる今の時代は、雨が降ればキャンセル、というゴルファーも多いのでちょっと信じられないような話ですが、当時は本当にそうだったのです。

実際に台風が直撃したコースでプレーする人は稀ではありますが、1985年頃、関東直撃の台風の中で千葉県のコースでスタートしたことがあります。最大風速は30m/sで、最初に苦労したのはボールがティに乗らなかったことです。乗っても、アドレスする前に風で落ちてしまう。また、風で体が揺れるのでなかなかボールに当たりませんでした。

フェアウェイの低い場所を繋ぐように川が自然発生し、打ち上げのホールで、そこにボールが行くと水の流れでボールが戻ってきました。グリーンには水が浮き、打っても打ってもボールが転がらなかったり、強く打ったら飛びすぎたりしました。台風ゴルフハイになって、とにかく自分のプレーも同伴者のプレーもおかしくて、腹がちぎれるぐらい笑い合い、3ホール目でプレーをやめてクラブハウスに戻りました。

お風呂に入りながら、同伴者と武勇伝としての台風ゴルフを語り合っていたら、窓の外に太陽の光が差したのです。外を見ると風もありません。「台風一過だ!」と言いながら、もう一度コースに出ました。台風の目に入って好天になったのかは不明ですが、すぐに土砂降りと強風が戻ってきて、池越えのパー3では、池が氾濫してグリーンが水没しているのを見て今度は本当にプレーをやめたのです。

今でも、その時の同伴者と台風ゴルフの話をします。思いだして笑っていますが、冷静に考えるとかなり危険な行為でした。コース関係者の話を聞くと、現在ではカートでのセルフプレーが主流になったことも、悪天クローズの理由のひとつなのだそう。キャディがいれば避けられる危険にセルフでは気が付かないことがあるのと、カートは悪天候では水没などを含めて事故が起きやすくなるそうです。

最近は温暖化の影響なのか、台風が大型化している印象で、クローズする頻度も増えているように感じます。しかし、複数のゴルフコースに確認したのですが、年間の台風クローズの数は、年によって違いはあるものの30年前とほぼ変わらないそうです。

今回は台風ゴルフの話を書きましたが、台風の中のゴルフを奨励する意図など毛頭ありません。台風なら中止は当然ですし、昔よりも手軽にプレーができるようになった分、ラウンドをキャンセルするハードルも格段に下がっています。それは、この国でもようやく、“ゴルフが特別なもの”から、“誰でも楽しめるもの”に変わりつつある証だと思われます。

さて、台風の日は家の中で読むゴルフ、見るゴルフなどを楽しむのはいかがでしょう? 実際のゴルフには敵いませんが、何らかのプラスになるはずです。

(取材/文・篠原嗣典)

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