
ツアー会場で男子プロも興味津々! 『TENSEI™』ブランドの自信作
多くのシャフトメーカーは6月の国内男子メジャー「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」の前後で新製品のツアー供給をスタートする。この時期のトーナメント練習日には多くの選手が最新モデルのテストを行い、“シャフト祭”の様相となるのだが、その中でオールブラックの精悍なコスメで注目を集めたのが三菱ケミカルの『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』だ。
「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」の練習日には平均飛距離300ヤード超えの飛ばし屋、岡田晃平が『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』のテストを実施。「素直に動くシャフトでしっかり走るし、つかまりが良いです。良い感触が手に残る」と話し、実戦投入に向けて、好感触を口にしていた。
『TENSEI™』は、素材や設計に一切の制限を設けず、プレーヤーが求める最高の性能を目指すネオ・アスリートブランドだ。『1K』のラインナップではすでに元調子のWHITEとORANGE、中調子のBLUE、先調子REDの4モデルがリリースされており、ツアープロや上級者を中心に高い支持を受けている。
そんな中で新たにラインナップに加わった元調子の『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』は、『1K』の流れを汲みつつも、他モデルとは違った特徴がある。まずコスメでは、ロゴより手元側の部分に上質なグロス仕上げが採用された。シャフト全体の一体感が増し、より高級感のある仕上がりになっている。
さらにモデル名には、今までにはなかった「CORE」の文字が追加された。これは高性能素材「1Kクロス」を“内側”に配置したことに加えて、TENSEIのラインナップの“中心的存在”になってほしいという願いが込められている。つまり、三菱ケミカルにとって特別なモデルであり、性能的に自信を持ってリリースした最新作が『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』というわけだ。
今回は、男子プロの海老原秀聡に『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』のテストを依頼。振り心地や打ちやすい弾道、過去モデルとの違いを詳細にチェックしてもらった。
元調子のデメリットを払拭! 振り遅れずにヘッドが加速する
まず海老原がテストをしたのは『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』の“50S”だ。
「Sフレックスとしてはかなりしっかりしていますね。中間から先端にかけての剛性の強さを感じます。自分は普段60グラム台のXシャフトを使っていますが、『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』の“50S”は全く頼りなさを感じませんでした。先端が強いおかげか、ボールがネジレず圧倒的に曲がりが少なくなります。スピン量も少なく抑えられるので、効率良く飛距離を出すことができそうです」
今回の試打ではヘッドにピンの『G440 MAXドライバー(9度)』を使用。弾道計測器「GCクワッド」を使った弾道計測では、ボール初速70.1m/s、打ち出し角15.4度、スピン量2,513rpmで299ヤードという飛距離だった。海老原のパワーで“50S”を打つと、通常ならスピン量は3,000rpmに近い数値になることが多い。しかし、『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』の場合は、2500rpm前後の数値で安定しており、スピンを抑える性能の高さが伺える。
シャフトの挙動として特徴的だったのは、インパクト後の加速感だと言う。
「切り返しからダウンにかけては、一定したシャフト挙動でヘッドが下りてきてくれて、再現性の高さを感じました。タイミングを取ろうとしなくても、自然にヘッドが戻ってきてくれます。その上でインパクト前後ではシャフトの手元寄りの部分がしなって、ヘッドが一気に加速します。このヘッドが強烈に走る感覚は今までの“元調子系”シャフトにはありませんでした。振り遅れる感じがなく、スクエアなインパクトを作りやすいことが『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』の大きな特徴と言えそうです」
『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』を開発するに当たり、三菱ケミカルではゴルファーが“元調子系”シャフトに求める性能を徹底的にヒアリングしたという。強く振ってもボールが暴れず、余分なスピンを抑えたい。でも、振り遅れるのは嫌で、ツアーで戦うだけの飛距離性能も欲しい。ツアーのパワーヒッターたちが求める最高の性能を実現するために導き出した答えは、部分ごとに大きな剛性差を付ける設計だった。
“元調子系”と聞いたらシャフト全体がカチカチの棒をイメージするかもしれない。しかし現実にはパワーのある男子プロでも動きのなさ過ぎるシャフトには扱いにくさを感じてしまう。全体の剛性を上げつつも、しっかり軟らかくしなるポイントを作ることでタイミングの取れる叩けるシャフトになるのだ。
『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』は手元側に極端に軟らかい部分を作り、そこから中間にかけて一気に剛性を上げる設計を採用している。切り返しで自然にタメを作ることができ、ダウン以降は強烈なしなり戻りでヘッドが走ってくれるのだ。“元調子系”の特徴である安定感に磨きをかけつつも、ヘッドの強烈な加速によって飛距離性能をプラスした今までにないタイプのシャフトに仕上がっている。
海老原には同じ50グラム台のフレックス違いもテストしてもらった。
「“50R”は手元の軟らかさが強く感じられて、ヘッドの加速感も強くなる印象です。『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』の良さを最も感じやすいスペックで、幅広いゴルファーに試していただきたいですね。一方で“50X”はよりタイミングが取りやすくなり、インパクトではヘッドの加速よりもボールを押し込む感覚が強くなります。その分、弾道の強さが増しますので、スピンをとことん抑えたい人に最適です。また、60グラム台になると手元部分の重さが増したように感じられて、叩けるイメージが強くなります。私の場合は“60X”を使った時が最もタイミングの取りやすさ、叩きやすさがしっくりきました。自分に合った重量・フレックスを選ぶことで、飛距離と方向性を高い次元で両立できるシャフトなのは間違いありません」
同じ“元調子系”で比較試打! 『1K』シリーズのWHITE&ORANGEとは何が違う?
『TENSEI™ PRO 1K』ラインには、WHITEとORANGEも『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』同じ“元調子系”シャフトになる。それぞれどんな特徴があるのか、どう選び分ければいいのか。海老原のパワーに合った“60X”で試打比較を行い、解説してもらった。
「3タイプの“元調子系”を打ってみて、程度の差こそありますが弾道安定性やスピンを抑えられる性能は全モデルに共通していました。一方で、スイング時の振り感には明らかな違いがあり、ゴルファーによって好みが分かれるはずです。まず最もクセのない振り心地だったのが『WHITE』です。変にしなるポイントがなく、全体がマイルドに動いてくれるので自分のタイミングでスイングを作っていけるシャフトでした。
一方で、個性を感じたのは『ORANGE』です。手元側に重量があるカウンター効果によって、ダウンスイングでヘッドがリリースされる印象で、つかまりの良さを感じました。“元調子系”ですが、オートマチックにボールを打ち出したい人と相性の良いモデルだと言えそうです」
当然ながら同じ“元調子系”でも部分ごとの剛性設計はモデルによって大きく異なる。『WHITE』は手元から先端にかけて剛性の山を作らずに全体的に硬めの設計を採用。素材の工夫によってマイルドなしなりを得ながら、自分のタイミングでスイングを作れるモデルになっている。
一方で『ORANGE』は手元側に軟らかいポイントを作り、中間部から先端にかけての剛性を高めている。ただし、『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』よりも剛性差が小さく、手元側に比重の大きい素材を入れることでカウンターバランスの設計を採用したことで、振り遅れの出にくいモデルに仕上げている。
「『ORANGE』はダウンでシャフトの挙動を感じましたが、『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』はインパクトからフォローにかけて動きのあるシャフトでした。似た設計に見えますが、振り心地は全く別物です。また、中間から先端にかけての強さがあり、よりスピンを抑えた強弾道が打ちやすいのも『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』ですし、左のミスを抑えながらストレートに近い弾道で飛ばしやすいことも他の“元調子系”とは違った特徴になっています」
「改めて“元調子系”で比較をしてみると、『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』の進化がよく分かります。スイングの再現性を高めながら、インパクトではダウンでブーストしたエネルギーを一気に解放するようにして飛距離を出してくれますし、そういった加速感があるのにボールがネジレないのは驚きでした。飛距離と精度を高い次元で両立できるシャフトですし、スペックも“50R”から“80TX”まで幅広く揃っていますので、多くのゴルファーが性能を実感できるはずです」
『TENSEI™ PRO BLACK 1K CORE』は、これまで多くのアスリート向けシャフトを手がけてきた三菱ケミカルが作り上げた“元調子系”の1つの完成形と言うことができそうだ。ゴルファーのパワーをブーストしながら飛距離に変換し、ネジレのない真っすぐなボールでフェアウェイを射抜く。飛距離と方向性、どちらも高めようと思うなら、試さない手はなさそうだ。
取材協力/GOLF & FITNESS POINT芝浦 撮影、構成/田辺直喜
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