「腰痛をスイングで治す」 稲見萌寧は新コーチと劇的チェンジ

新コーチと二人三脚。稲見萌寧は新たなスイングで2023年に挑む。(撮影:米山聡明)

<ダイキンオーキッドレディス 事前情報◇1日◇琉球GC(沖縄県)◇6560ヤード・パー72>

2020-21年シーズンは9勝を挙げて賞金女王に輝いた稲見萌寧だったが、昨シーズンは腰痛の影響もあって2勝止まり。メルセデス・ランキングではともに2つ年下の山下美夢有、西郷真央に次いで3位に終わった。

開幕戦に臨む状態を聞かれた稲見は、「正直ちょっと間に合ってない。そのなかでも頑張っていきたいという思いで…不安のほうが大きいです」と自信はなさげ。その理由はスイング改造にある。賞金女王、そして東京五輪で銀メダルを獲得したときにタッグを組んでいた奥嶋誠昭コーチとは昨年契約を解消。このオフは新しいコーチのもとでスイング改造に取り組んできた。

「体もゴルフも大改造っていう感じ。体はオフにトレーニングをして、増量もけっこうできて順調かなと思う。ゴルフは球筋は変えてないですけど、スイングはイチから全部変えたので、それがコースでできるかできないか、試合のプレッシャーがかかったときに前の癖が出ちゃうのか、上手く乗り切れるのか。始まってないのでまだわからない」と不安な状態で開幕に臨む。

「特に契約したわけではないので」と、会見で名前を出さなかったが、セキ・ユウティン(中国)のコーチも務める奥村竜也氏が火曜日の練習日に帯同して、稲見のスイングチェックを行っていた。

スイング改造に踏み切った理由については、「違和感があって、去年の終わりのほうはショットが恐怖だった。それにずっと腰の痛みがなかなか消えなくて、スイングするたびに痛かった」と話す。そして「去年のシーズン中から、誰か(コーチが)いないかな、変えたいなと思っていた。いろいろと探してみたり、習ってみたりして、決まったのが12月の終わりです」と、熟考を重ねた結果、奥村コーチに決めたようだ。

「いまのコーチは腰痛をスイングで治す勢いなので、振っていて腰の痛みとかは減ってきた。飛距離は変わらないかちょっと伸びた」と、スイング改造の感触は悪くない。ラウンド中こそ昨年と同じようにバックスイングを確認する姿が見られるが、「トップが大きくなって、クロスだったのをフラットに。私はもともとクロスが嫌いだったので」とチェック内容はガラリと変わった。『クロス』とはトップでシャフトが飛球線の右を向くこと。それを飛球線と平行の『フラット』にチェンジ。その先には「なるべくストレート目のフェード」という目標がある。

大幅なスイング改造により「またゼロからスタート。ルーキー気分な感じで、今年はどんな感じになるんだろう? という気分です」と新しいゴルフと向き合う開幕戦となりそう。それでも2020-21年シーズンに獲得した『パーオン率』のタイトル奪還へは強い気持ちはある。昨シーズンは新女王・山下美夢有にわずか0.0154%の差で2位だった。

「小さい頃から(パーオン率が)生命線でやってきているので、スタッツのなかで一番気にするのはそこ。スイングが変わって、動きも変わって、このショットで何パーセントいくかはイメージがつかない。数字よりもとりあえずトップには立ちたい」。新しい稲見の挑戦が明日、幕を開ける。(文・下村耕平)

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