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米ツアー唯一のポイント制大会「バラクーダ選手権」 標高1800メートル決戦は、薄い空気との闘い

日本勢として出場する小平智(撮影:福田文平)

<バラクーダ選手権 事前情報◇19日◇タホ・マウンテンC(米カリフォルニア州)◇7480ヤード・パー71>

「R&A全英オープン」と同週に行われる、PGAツアーとDPワールドツアー共催の「バラクーダ選手権」。この大会は、米国男子ツアー唯一のポイント積み上げ式(※ステーブルフォード方式)として行われる。会場となるタホ・マウンテンC オールドグリーンウッドは、米国カリフォルニア州のシエラネバダ山脈に位置し、標高6000フィート(約1800メートル)に近い高地での開催となる。

これだけの高地でプロゴルフの試合が行われていることに驚きを感じるが、さすがに標高1800メートルともなれば、ボールの飛びに大きな影響がでてくるのは間違いない。夏に高原のコースでプレーしたことのあるゴルファーなら、経験的にわかることだが、高地でのゴルフではボールが飛ぶ。

これは標高が上がるにつれて空気の密度が減少する(つまり空気が薄くなる)ため、ボールにかかる抵抗が小さくなるから。『空気を切り裂くように飛んでいく』、などと表現されることがあるが、言い得て妙で、空間を飛ぶボールにとって空気自体が障害であり、空気を押しのけてボールは飛んでいる。しかし空気が薄い状況では、抵抗が少ないためボールは空中をより簡単に移動し、飛ぶ速度があまり低下しない。だから平地に比べて飛距離が出るのだ。

標高 6000 フィートでは、飛距離は約 7%増加し、例えば普段の飛距離が300 ヤードの選手が6000フィートの高地では321 ヤード飛ぶ計算に。ここまでの説明を聞くと、標高が高いコースでのプレーはボールが飛んでいいことずくめじゃないか? と感じるかもしれないが、実はそうとばかりは言っていられないマイナス面もある。

ゴルフボールは標高が高くてもスピン量自体は変わらないが、空気が薄くなる分、ボールの揚力(ボールを押し上げる力)も低下する。これは、ロフトの少ないクラブで打つと特に顕著で、ボールが上がりにくくなり、浅い角度で落下することを意味する。

つまりグリーンを狙うショットが止まらない可能性があるわけだ。同じ理由から、ボールがスライスやフックしにくく曲がらなくなる(曲がることが多いアマチュアゴルファーにとってはいいことだが…)。

選手たちは、自分の持ち球や、状況に応じて狙うラインを決め(ワンピン右からドローなど)スピンコントロールをしながら打っているのだが、想定したラインに打ち出したとしても、イメージ通りに曲がってこないということがあり得るのだ。トッププロのように、研ぎ澄まされた技術であればあるほど修正に難しさがあるといってもいい。
 
飛んで曲がらないというアベレージゴルファーにとってはいいことずくめにような高地でのゴルフだが、1打を争う選手にとっては、薄い空気という、見えない難敵との闘いが待ち構えている。

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