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上田桃子の曲げないドライバーは「テークバックの股関節の動きで切り返しを安定させる」

2019年Tポイント×ENEOSゴルフトーナメントで日本ツアー通算13勝目を挙げた上田桃子 勝利を呼び込んだのは曲がり幅を抑えた完成形のドローボールだった(写真・村上航)(撮影:村上航)

女子ツアーの2023年シーズンがまもなく開幕する。今シーズン、誰が活躍するのかを占うために過去の優勝者に焦点を当て、勝利を呼び込んだ技の秘密を紹介しよう。今回は上田桃子。

2019年Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント最終日。原因不明の右手中指痛が上田桃子を襲った。歯ブラシも持てないほどの痛みだったという。上田はシーズン開幕戦が13位タイ、2戦目は6位タイ。好調の波に乗って迎えた3戦目の最終日だった。2日目を終えてトップを走る申ジエ(韓国)とは1打差の2位タイ。コーチの辻村明志は「スイングに右手が必要ないことを証明してこい」と送り出した。そして上田は痛みに耐え、辻村の檄に応える優勝を見事に決めた。

誰もが目を見張ったのは、前年の平均を大きく上回った上田のティショットのフェアウェイキープ率だった。曲がりの大きかった持ち球のドローをストレート系に修正して臨んだ19年シーズン。上田が何に気をつけ、飛距離はそのままに曲がりを抑えることができたのか、本人の証言を元に振り返ってみよう。

「大会3日間を通して、ショットが安定していました。3日間のフェアウェイキープ率は78.5パーセント。前年の平均、61パーセントを大きく上回りました。切り返しの間が波立つことなくスムーズに同じタイミングでクラブを振り下ろせていたから、ショットが安定していたのだと思います」

トップからの切り返しは、プロでも油断しているとタイミングがズレることがある。上体がしっかり捻転したトップをつくり、手元をトップの位置に置いたまま下半身始動で切り返すことが大事だ。この下半身始動を念頭に置くプロは少なくないが、切り返しを安定させるために上田が意識していたのは意外にも、テークバック時の股関節の動きだった。

「ヘッドを引き始めてから手元が腰の高さに上がるまで、股関節は目標ラインと平行を意識しています。股関節と目標ラインが平行である時間を長くすることで、深く捻転したトップがつくれ、インパクト直前に股関節がまたその位置に戻ってきやすくなるんです。インパクトを迎えたら、あとは体の回転で左へ振り抜くだけ。フェースが自然に返って、ボールをつかまえてくれます」

「つかまったドローを打ちたくてインサイドから振り下ろす意識を強く持ちすぎていると、インサイドにクラブを振り上げがちです。インサイドに上がりすぎるとフェースが開きやすくなります。股関節と目標ラインが平行の意識でテークバックすれば、自然にプレーン上に上がって、程よくインサイドから下りてきます」

上田はこの意識を持ったことで、右プッシュのミスがなくなり、大きく左へ曲がるチーピンのミスもなくなったという。上田はこのあと、ヨネックスレディスゴルフトーナメントでも勝利。19年を賞金ランキング9位で終えた。
 
翌22年は、優勝1回を含むトップ10入賞が11回。安定したショットでメルセデスランキングは12位。いよいよ2週間後に開幕する23年シーズンの目標は「国内メジャーでの初勝利」。これまで日本ツアーで通算16勝を挙げながら、メジャーでの勝利は未だない。活躍に期待したい。

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