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メジャー勝利の“出場権利”も来季まで 渋野日向子の23年総括と来季への課題

来季は“準シード”から再スタートを切る(撮影:Yasuhiro JJ Tanabe)

不振に見舞われた渋野日向子が、来季のフル出場権を逃した。年間ポイントランキング83位で2023年シーズンを締めくくり、最終戦を前に1週はやく日本に帰国することになった。

昨年はルーキーながら堂々と最終戦出場を果たした。シーズン序盤から優勝争いを演じ、メジャー大会でも輝きを放ちルーキーイヤーを駆け抜けたが、今季は苦難の連続だった。トップ10は3月の一度だけ。夏以降は予選落ち、下位フィニッシュもかさみ、上位で戦う姿を見ることなくシーズンを終幕した。

トップスイングを高くするスイング改造に取り組み、シーズンに入った。23年の3戦目(3月末)では連日のビッグスコアで7位タイに入った。その後も予選通過を続けたが、4月中盤にアクシデントが襲う。左手の親指を負傷し、練習量を控える事態に陥った。当時は痛みに言及することもなかったが、その痛みはしばらく続き、結果がでない日々が続く。

ケガだけに悩まされたわけではない。7位タイに入った3月末のアリゾナ大会では、思いがけずフェード系の球がほとんど。持ち球のドローを打ちたくとも、改造の過程では球筋までコントロールできなかった。「自分が目指していた球筋とは違いましたし、めちゃくちゃフェードだったので、『こんなボールを打つことはないな』と思いながら。そこからいろいろとやりだして、親指も痛くなって」と、未知の世界に迷い込んだ。

「そこから立て直すのも難しかった」と序盤から悩んでいた胸の内をシーズン最終戦を終えてはじめて明かした。「同じことをするとまた痛くなるんじゃないか」。6月以降は試合に出続け、痛みのことも口にしなくなったが、どうにも調子が上がらない。かといって、やろうとしていた新スイングにこだわれば、また発症するのではないか。そのジレンマと不安のなかで、シーズンはあっという間に過ぎていく。

一時は「試合に出られないんじゃないか」と思えるほどの痛みだったとも振り返る。幸いにも中盤以降は「痛みなしでできたのはよかったとは思うけど」と復帰を果たすも、「怖かった」とマイナス面ばかりが絡み合い、どん底にはまる。練習したくとも思い通りにできない。復活すればしたで何をすればいいか分からない。再発の不安とも闘いながら過ごした半年。「これだけは絶対に持っていないといけないというものすら分からなかった」と進むべき方向を見失い、苦しい日々が最後まで続いた。

結果的に、来季の出場権は限定的なものにとどまったが、なにも道が閉ざされたわけではない。例年であれば5月に実施される出場優先順位を見直すリシャッフルまではかなりの試合に出場が可能。そこでポイントを稼ぎ、中盤、そして終盤戦まで出場することはできる。昨年の自身、今年の西村優菜、勝みなみ同様、結果を出せば道は切り開ける。そこに向けては、「いろいろ作っていかないといけない」と暗闇の中でも発見を繰り返し、進んでいく覚悟はできている。

そうは言っても、何から手をつければいいかはまだ分からないとも吐露する。「落ちるところまで落ちた」と悔しげに打ち明けるが、悔しさゆえに、高ぶる気持ちが芽生えているのも事実。「アメリカで勝ちたい気持ちがより強くなった」と、気持ちの面でもあとは上がるだけ。浮上するためにオフは考えて考えて、そして1月から始まる新シーズンに自信を持って臨めるか。“何か”を見つける「旅に出る」。

19年に「全英AIG女子オープン」を制してから来年で5年が経つ。全英制覇による年間5試合あるメジャー大会への自動出場も来年が最後。「実力で頑張らないといけない」と、今後は自力で出場権を獲得しなければならない。足下を見つめ直し迎える再起へのスタートライン。再び輝くための自分探しに出る渋野が、強い姿で戻ってくることを期待したい。(文・高桑均)

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