「最後まで諦めないこと」 笹生優花の全米V2を支えた父の教え

誇らしい! 笹生優花と父・正和さん(撮影:ALBA)

<全米女子オープン 最終日◇2日◇ランカスターCC(ペンシルベニア州)◇ 6583ヤード・パー70>

笹生優花が2度目の全米制覇を果たした。世界一決定戦とも呼ばれる過酷な大会で、アンダーパーはトータル4アンダーの笹生と2位に入ったトータル1アンダーの渋野日向子だけだった。

2021年に衝撃の全米制覇を果たしてから3年が過ぎた。当時19歳、そこで急に決まった米ツアー転戦だったが、常に笹生の横には父・正和さんの姿があった。

「2回しか勝ってないけど、2回目もたまたまUSオープンだった」。3年間勝利から見放されていた時期を思えば、こんなにうれしいことはないはず。それでも2回目となれば、淡々と戦況を見ることもできたのかもしれない。

この日はバーディが先行したが、「6番(パー3)でダボを叩いた。1オン4パット。ミンジーの独走かなと思って。でもゴルフは終わるまで分からない。17番でポカやったし」。パーオンに成功しながらファーストパットを大きくオーバーさせ3パットのボギーとした場面も、優勝した今では笑って話せる失敗だ。

「寄せればパーをとれるのに、なんであんな(笑)」。そんな言葉とは裏腹に、父の笑みがはじける。「チャンスがあるとは思っていたけど、ミンジーが落ちるとは思わない」。そんな目で戦況を見ていた。首位タイから出たメジャー2勝のミンジー・リー(オーストラリア)が一時はトータル6アンダーまで伸ばしながらもその後崩れ、後半だけで6オーバー。「人間だから、ミスもあるかも分からないから頑張る、というのはやっていたと思う」。強くなった娘の姿に賛辞を送る。

前戦の「ミズホ・アメリカズオープン」では今季初の予選落ち。「心の問題でダメだったから、平常心でやったほうがいいよ、欠けているのはそこだけだよ、と。技術的には負けていないから、そこを考えたほうがいいよって」。自分を責める、娘に見てとれた怒りの感情を優しく注意した。「イライラするのは自分に負けている証拠。ゴルフは自分とコースとの戦いだから。3日目、4日目というのはいつも平常心、最後まで諦めないことと言っていて、今回は3日目も悪くなかったし、きょうは一番よかった」。年頃の娘は父の言葉を胸に、平常心を貫き通した。

「12番のパッティングのときの顔色が違った」。勝負のバックナインに入り、ここでスイッチが入ったように思えたと正和さん。「それで(バーディを)とって、13番もとったから」。冷静に、そして攻撃的に優勝争いと向き合う娘の成長を感じた。

ツアー初優勝と2勝目がともにメジャー大会という偉業はパク・セリ、チョン・インジ(ともに韓国)以来3人目。そして、大会2勝は00、01年連覇のカリー・ウェブ(オーストラリア)、インビー・パーク(韓国)以来の快挙。「2勝はカリー・ウェブ、次にインビー・パーク。インビー以来だから、まあよかった。そう思ってます」。偉大な先輩たちに並ぶ快挙を、静かに喜んだ。

22歳11カ月13日での大会2勝は史上最年少。常にクールな笹生は優勝インタビューで涙を流したあとにこう語った。「恩返しできてよかった。サポートに感謝しています」。米国に拠点を構え、3年ぶりにつかんだ栄冠。父と娘のビクトリーロードは、これからも続いていく。

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