
――“ドラコン競技”と一口に言っても、多くの団体がある昨今。今回は「ヤマハの新作を初めて試す」というJPDA(一般社団法人日本プロドラコン協会)のドラコンプロ・柳井紗奈のテスト情報を聞きつけ、コーステストに同行した。身長が低くても曲げずに飛ばす、ドラコンプロの実情に耳を傾けてみよう――
ヤマハに替えて65kg以下で無双状態に
ドラコン競技は【一発の追求】というイメージがあるかもしれないが、JPDAという団体は「ゴルフにつながるドラコン」を掲げ、曲げない精度も求めるのが特長だ。持ち球6球のうち最低3球をフェアウェイ想定の約40yd幅に入れるのが条件で、体重や年代別に階級も複数に分かれており、現在女子65kg以下で最強の呼び声高いのが柳井だ。
「元々競技ゴルフ出身で、JPDAのドラコンに参加して3〜4年は低スピン系のヘッド。当時は体重が今より10kg以上重く結果も出せましたが、体重を落としたら全く飛ばなくなって…。コーチの知人の紹介で試したヤマハの市販品で飛んだのがきっかけで現在も使っています。いま65kg以下で最強という称号を得られるのも、クラブの影響が大きいと思っています」(柳井)
柳井の場合、その打ち方の影響もあり、体重減は想定以上の飛距離ダウンを招いた。その特殊なスイングについて、こう自己分析する。
「私の師匠であるコーチの教えなのですが、スイング中に腰を切らないのが信条です。とにかく大きな円弧でバックスイングしていって、切り返しでは、背中を目標に向けたまま開きを遅らせて体重を一気に左に乗せていって飛ばすので、体重を落とすと極端に飛ばなくなってしまいました。5年前の打ち下ろしでの382ydという記録も体重が一番重い時のものですね」(同)
ドラコンプロは“軽柔”全盛
体重減で想定以上の落ち込みを補ったのが、ヤマハ『RMX VD/M』と軽柔シャフトだ。従来は「長尺で超硬いシャフトで振り切る」のがドラコン界の常だったが、JPDAドラコンプロは男女とも30g台のSRやRの【軽柔】が流行っているのだとか。
「以前は6Xでしたが『もっと飛ばすには』と探求した結果、私は体を開かない打ち方なこともあり、シャフトのしなりを最大限に活かす軽柔スペックにしました。46インチまでしか使えないJPDAのドラコンプロは、男女ともエスティバンなどの軽柔シャフトを使っていて、男子でも40g台のSRが普通。私もヤマハのヘッドで『軽柔のしなりを活かして振る』という最近のトレンドを取り入れた結果、現在は『ヴァンキッシュ』の30Sにして、飛距離も精度も出せているのが大きいですね」
『RMX VD/M』がエースなだけに、ヘッドはボテッとしないものを好み、選ぶ基準は知識やスペックにとらわれず「構えた顔と打った時のタイミング」重視のフィーリング派。エースはウェイト外しの浅重心で使うため、新作も同様にして長さも統一したヤマハの担当者。
トラックマン4でエースと新作『RMX DD-1』の打ち比べを開始すると、確かに絶好調なだけあって、エースの『RMX VD/M』で中・高弾道ドローのいい当たりで266.5ydを記録。ただ、この日はつかまり気味で、左右20ydずつのドラコンの「枠」を外す当たりが6球中4球も出てしまった。
初カーボンフェースで「バルジも凄い」
「カーボンフェースは初体験です」という『RMX DD-1』に持ち替えると、エースより球が高く、左曲がりの度合いが明らかに減り最長273.9ydに。エースと同じシャフトとはいえ、初めて打つクラブで絶好調のエースよりもバラつきが少なく、左右20ydずつの「枠」を外す球は8球中3球だった。
「ヘッドは私のエースと比べても遜色なくイイ顔です!最初の球だけ少し右に出ましたけど、その後はすごく直進性の強い球ばかりでした。エースより球が高いのでスピン量が多いのかな?と思ってデータを見てみても、多過ぎる感じでもなく、とにかく、すごくミスに強いヘッドという第一印象です。
担当の方に聞くと、今回の新作はヘッドごとに異なる重心に、最適なバルジを11種類も試作してベストなモノを選んだそう。たしかに、芯を微妙に外したのに、球が戻って来る。トウに外しても右にスライスせず耐えてましたし、ヒールに外したのに、フェードして枠に戻って入ってくれるので、コレは助かりますね!」
エースは低スピンでつかまるが、特にヒール下に外した際に、左のファウルになることが多かったという。それが『DD-1』のバルジによるギア効果で「枠」に戻せると判明し「試合ではもっと差が出そう」と喜ぶのには切実な理由があった。
ドラコンプロは曲がると負け
「いま、ドラコンプロのレベルはすごく高くて、ほとんどの選手が元競技ゴルファー。ドライバーの技術が優れていて、ライバルも本当に曲がらないんですよ。勝ち抜くには、常に高い集中力と安定したパフォーマンスが必要で『曲がったら負け』のシビアな世界ですが、枠に入れる技術は私自身も強みにしてきました。
そこも活かして今回の『DD-1』のバルジでさらに自信を持って振れるのが嬉しいです。一時期は、大減量で距離が落ちて大変でしたが、現在は体重も安定していますし、軽柔のクラブにも慣れたことで、パフォーマンスも取り戻しています。それに新作は今の時点でスピンが2600回転くらいなので、これから調整次第で伸びしろもすごくあるので楽しみ」
それは、ボールの種類でスピン量をカンタンに落とすことも現実的な選択肢に見えた。JPDAのドラコン競技球で、ディスタンス系のスリクソン『XMAX』での弾道も確認した柳井は、目を見開いて『RMX DD-1』のカーボンフェースについて改めてこう言う。
ディスタンス系と相性◎
「さっきの練習場では、タイトリスト『プロV1x』や『プロV1』といった、スピン系のツアーボールでテストしましたけど、私たちドラコンプロが試合で使うスリクソン『XmaX』だと、さらにカーボンフェースの実力を発揮する感じですね。
カーボンなのに金属に近い弾く高い音もしますし、実際カバーの硬い『XmaX』だとボール初速も69m/s以上の球も出て、すごく弾いて初速が出るし曲がらない。ディスタンス系とカーボンフェースの相性がいいと感じたし、コレは使えそう」
また、新作アイアン3機種もチェックした柳井はこう話していた。
「ヤマハさんのヘッドでまたドラコンで勝てるようになりましたが、LPGAのプロテストも受けるので、ドライバー以外も気になるのが本音。でも、こうして打つと、アイアンもやさしいし、打感もすごくいい。3つとも顔がシュッとしてコンボしやすそうだし、長く使える感じがします。FWやUTも作ってもらうのが楽しみですね」
右足前の仮想球を見続ける
また、最後に自身のドライバーを曲げずに飛ばすためのテクニックをこう明かした。
「連続写真を見てもらうと分かると思いますが、私はボールを見ずに打っています。どこを見るかというと右足の前辺り。軽柔のしなり戻りを使うには、思い切り左に体重を乗せますが、頭まで突っ込むとスピードが出ない。右足前の仮想ボールを見て打つとコレを防げて、正確に打つことにも繋がるのでオススメです!」
意外にも、再現性を重視するトップに君臨するドラコンプロの考え方。そのクラブ選びもスイングの方法も独自の知見を持っており、我々アマチュアゴルファーの参考になることばかりだった。
そして、柳井のドライバーテストに潜入取材させてもらった後日、彼女のインスタグラムには下のように「優勝のご報告」とともに新ドライバーを手にする様子が。その言葉通り「枠」に高確率で入れられて飛ばせる新しい『RMX DD-1』ドライバーで、早速の勝利を飾っていた。
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