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慣性モーメントは大きければ曲がらないが、振り心地は別!【QPのギアマニュアル】

慣性モーメントが高いほど、芯を外しても飛距離ロスや曲がりが少なくなりやすいですが、それだけクラブの動かしにくさも出てくるので、振り心地に多少なりとも影響が出ます。何事もバランスが重要、とQP

ドライバーの機能説明でよく聞く慣性モーメントという言葉ですが、最近のドライバーは、多くのモデルで慣性モーメントの大きさをアピールしています。「5000g・㎠を超えています」といったフレーズですね。この慣性モーメントは、物体が軸回転で回ろうとする、もしくは回っているものを止める時に必要な力を示す物理用語です。ゴルフクラブでいえば、振り子の直進性が損なわれないための数値。ヘッドの重心を軸とした「ヘッド左右慣性モーメント」のことを指します。
 
このヘッド左右慣性モーメントが大きいと、芯を外した時にヘッドがブレにくく、エネルギーロスやサイドスピンの増大が起きにくくなります。簡単にいえば、芯を外しても飛距離ロスが少なく、左右に大きく曲がりにくいということです。慣性モーメントの設計思想を始めてクラブで形にしたのが、ピンの〈アンサーパター〉。今では〝ピン型〟といわれる、あれです。重さをヒールとトゥに分散させ、トゥヒールバランスと呼ばれる革新的なデザインでした。その設計思想がドライバーでも多く使われるようになったのです。
 
ヘッド左右慣性モーメントを大きくするには、ヘッドを重くする、重心からできるだけ遠くに重量を配置することが有効です。慣性モーメントを高めると、やさしくなる反面、ドローやフェードなどボールを操作することが難しくなります。操作性の良いとされるモデルは、どれも慣性モーメントの数値は低いですね。

クラブに関する慣性モーメントは、ヘッド左右慣性モーメントばかり注目されますが、実はあと二つ主要なものがあります。それはネック軸周りとグリップ周りの慣性モーメント。メーカーさんも公表しませんし、馴染みがないと思いますが、クラブの性能に大きく作用しています。
 
ネック軸周り慣性モーメントは文字通り、ネックを軸とした慣性モーメントのこと。この数値が大きいとフェースの開閉がゆっくりになり、直進性が高まります。小さいとフェースの開閉が素早くできるようになり、操作性が上がります。先端の硬い、またはトルクの少ないシャフトを装着すれば数値は大きくなります。ツアープロはそれを知っているから、先端が硬いモノを好む傾向にあります。
 
グリップ周り慣性モーメントは、グリップを装着したシャフトを軸としたもの。慣性モーメントが大きいほどスイング中にグリップがねじれずに安定します。数値が小さいほどグリップが動きやすく、遊びが大きくなります。数値に関係するのは、グリップ自体の性能です。ゴムやコード入りなど硬いほど数値は大きくなます。逆に、しっとり柔らかいモノは小さくなります。ただ、軟らかい素材でもグリップ自体を捻じれにくく(ロートルクに)作って、慣性モーメントを大きくしているモデルもあります。
 
3つの中で一番効果が大きいのはヘッド左右慣性モーメントで、ほかの2つは2位タイです。これらの3つの慣性モーメントは、確かに高ければ曲がらないクラブに仕上がります。
 
しかし、タイミングの取りやすさや、ミートしやすさといった振り心地は、加味されていません。振り心地が悪ければ、曲がらないクラブでも使っていて気持ち良くないですし、気持ち良く振れないなら飛距離もあまり期待できません。単純にシャフトの性能を考えても、先端が硬いモノより柔らかいモノの方が飛距離は出ます。しかし、慣性モーメントは小さくなるので、ミスしたときの曲がり幅は大きくなります。
 
ヘッドが同じでもシャフトやグリップを変えるだけで性能を変えられます。飛距離、安定感、振り心地、握りやすさなど、自分が求めるものに対して、バランスよく有効に慣性モーメントを選ぶのがいいでしょう。
 
 
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
 

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