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「この道にこだわって本当によかった」 下部ツアーから初V、ベイリー・ターディーの軌跡

ベイリー・ターディーが初優勝を飾った。その道は決して舗装されたものではなかった(撮影:GettyImages)

<ブルーベイLPGA 最終日◇10日◇鑑湖ブルーベイGC(中国)◇6675ヤード・パー72>

うれしいツアー初優勝だ。27歳のベイリー・ターディー(米国)が最終日に「65」をマークして逃げ切り、後続に4打差をつける圧勝を飾った。

「序盤はひたすら我慢、我慢と自分に言い聞かせていた。いいプレーができるホールはきっとやってくるし、パットも入ってくれると」。殿堂入り目前のリディア・コ(ニュージーランド)らと最終組でスタートしたが、じわりと詰め寄ってくる後続を背に、ターディーは伸ばしあぐねていた。それでも距離が短く設定された8番パー5で2オンに成功し、15メートルのパットを決めてイーグルを奪取。これがラッシュの号砲となる。

9番でバーディを奪って折り返すと、10番をボギーとしてもすぐさま3連続バーディ。さらに2つ伸ばすと、その快走に追いつける選手はいなかった。「ファンのみんなや故郷の友人、家族からの応援のおかげ。まさに夢がかなった」。悲願を叶えると涙を見せる。

大会開催前の世界ランキングは169位。まさに“伏兵”という存在で、ここまでの道のりも長かった。世界最高峰の米国女子ツアーで優勝することを目標に掲げ、大学生だった2018年末にプロ転向。同年のQシリーズ(米最終予選会)に出場し、下部ツアーにメンバー入りした。

下部2年目だった20年は賞金ランキング6位に入った。従来通りであればトップ10に米国女子ツアー“昇格”の切符が与えられるが、コロナ禍により5人のみとなり昇格は叶わず。21年には下部ツアーで優勝を飾るも、賞金ランクは12位。そして22年、Qシリーズで2位に入ってメンバー入りを飾り、やっと夢の舞台に立つことになる。

勝みなみ、西村優菜と同じタイミングでルーキーイヤーを歩み始めたが、唯一、スポットライトを浴びたのはぺブルビーチで行われた「全米女子オープン」。首位でターンし、最後は4位タイで終えた。「全米女子オープンではいいプレーができたけれど、このステージでは戦えないんじゃないかと思うこともたくさんあった」。結局、トップ10入りはこの1度きり。ポイントランキングは87位でシード権獲得を逃した。

それでも、1年間を戦い、“準シード”のカテゴリーで出場資格は維持した。「ルーキーイヤーに勝てばそれだけで大きな偉業だけれど、自分のルーキーイヤーを誇りに思う。最高の結果は残せなかったかもしれないけれど、タフなトーナメントを戦い抜いたことは自分にとって最も誇れることだった」。

そして2年目のシーズン。春のアジアシリーズで出場権が下りたのは今大会のみ。米国から太平洋を渡り、中国へと乗り込み優勝カップを掲げた。「家族と一緒に祝おうと思う。子犬を飼ったばかりだから遊びたい。とにかく回復してリラックスを」。米国は深夜にもかかわらず、応援してくれた家族を想いながら、感慨に浸る。

「自分がLPGAに出るだけの実力があるのか、LPGAに出たいと思うだけの実力があるのか。自問自答の連続だった。ツアー生活は誰でもできるものではないし、これが自分に向いている職業なのかどうかも分からなかった。LPGAの勝者になった今、この道にこだわって本当によかったと思う。夢が叶ったんだから」

下部ツアーでもまれ、目指す舞台の切符をつかみ、プロ6年目での初優勝。6年ぶりに海南島で行われた大会で、新たなシンデレラが誕生した。

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