
<AIG女子オープン 最終日◇3日◇ロイヤル・ポースコールGC(ウェールズ)◇6748ヤード・パー72>
日本女子ゴルフ界史上6人目のメジャー女王になった山下美夢有は、今回の“全英制覇”によって多くの恩恵を得ることになる。
まず選手として大きいのは、やはり出場権絡みの話。今大会には“60歳以下”という上限こそあるものの、今後も歴代優勝者として出場することが可能になる。また他のメジャー4大会(シェブロン選手権、全米女子オープン、KPMG全米女子プロ選手権、エビアン選手権)でも、5年間の出場権が発生する。
さらには、こんな“特典”も。米ツアーでは前年の成績や予選会の結果に応じて、シーズン当初に各選手が『カテゴリー』に分けられる。そして、これに基づき優先出場順位が決まるのだが、ここで優遇が発生する。
主に前年のポイントランク上位80人、すなわちシード選手は最も優先度が高い『カテゴリー1』に入るのだが、山下は仮にシードを喪失しても、大会翌年から5年間であればメジャー優勝者に割り当てられる『カテゴリー3』での出場が可能。昨年末の予選会(Qシリーズ)をトップ通過した山下だが、開幕時は『カテゴリー15』に割り振られ、優先出場順位は140位だった。
今年でいうとチョン・インジ、イ・ジョンウン6(ともに韓国)らが、このカテゴリー3に該当するのだが、開幕時の優先出場順位はそれぞれ97位、100位と、山下よりも大きく上位につけていた。もちろん来年はシード選手の仲間入りを果たすためフル出場が可能になるし、今後も勝利を重ね、シード選手として戦い続けることを目指すのに変わりはない。ただ“万が一”の時のセーフティネットを2030年まで張り巡らすことができたというわけだ。
山下は、「シェブロン選手権」を制した西郷真央に続き、メジャー大会でツアー初優勝を挙げた今季2人目の選手になった。またこの大会でツアー初優勝を挙げたのは、史上6人目のできごとだ。大会史上最高額の146万2500ドル(約2億1660万円)という賞金も破格。ただ“全英女王”として名前が刻まれる栄誉は、何ものにも代えられないものになるはず。それは日本ツアーで2022、23年と2シーズン連続で年間女王に輝き、通算13もの勝利を手にしてきた選手が流した涙、そして「思い出に残る1勝になる」という言葉を聞いても伝わってくる。
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