
<JLPGA最終プロテスト 最終日◇7日◇JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部 (岡山県)◇6464ヤード・パー72>
吉報を届けられる。2度目の最終プロテストに臨んだ18歳の松原柊亜(まつばら・しゅあ)は、トータル1アンダー・15位タイで合格を果たし、「めっちゃうれしいです」と喜んだ。
トータル3アンダー・9位からスタートした最終日は、前半から立て続けにボギーを叩く苦しい展開に。一時は圏外まで後退するなど、長い一日を過ごした。初日は5アンダーをマークしたが、2日目・3日目はともに「73」で貯金をすり減らした。「最終日はやりたくないって思うくらい」というプレッシャーとも戦った。
それでも最終18番のバーディで、トータルスコアをなんとかアンダーに戻してフィニッシュ。「いつもポジティブになれず、もうダメだって思うとスコアを崩していく。きょうは最後まで諦めずに、ポジティブにやれば大丈夫と思って頑張りました」。結果的に「74」と落としたが、2打の余裕をもってメンバーカードを手にすることになった。
ラウンド後、取材中に涙で言葉を詰まらせた。それはうれし涙ではなく、悲しいできごとを思い出したから。「去年のプロテストが終わった後、小学校からずっとゴルフに付き添ってくれた父が亡くなりました」。1年前。プロテスト終了直後に、父の癌が発覚し、そこから2カ月足らずで帰らぬ人になった。「本当に急でした」。3カ月ほどはクラブを握ることもできず、精神的につらい日々を過ごした。
仕事をこなしながら、練習場やコースの送り迎えをしてくれた父の姿を思い出すと、涙を拭い、言葉も出なくなる。「技術的には去年とそんなに変わっていない。でも気持ち的に、最後までガマンしていれば絶対にバーディがくると思って諦めずにやりました」。その思いが現実になった、最後のバーディ締めだった。
周囲の支えにも助けられた。所属するマネジメント会社の社長には、「父が亡くなってから金銭的に苦しかったけど、社長がスポンサーを見つけてくださってゴルフができる環境にしてくださった。ツアーの推薦ももらってくれて、どんどん、やらなきゃなとなりました」と頭を下げる。そういった優しさの数々が、絶望の淵から救い上げてくれた。
「亡くなった時は、トレーニングに行っていたので私は立ち合えず、最後にありがとうを言えなかった。…ずっとゴルフをやらせてくれてありがとうって言いたいです」。そう感謝の言葉を振り絞る。悲しみを乗り越えてのプロテスト合格。きっと天国で、父も喜んでくれているはずだ。(文・間宮輝憲)
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