ゴルフのイップスとはどのような症状か? イップスにかかった選手の証言も紹介

1.ゴルフにおけるイップスとは?

ゴルフにおけるイップスは、プレー中に緊張や不安が高まり、無意識のうちに筋肉が硬化してしまい、通常どおりのパフォーマンスでは体が動かせなくなる症状です。

特にプレッシャーが大きいショットやパットの際に、意図しない動作をしてしまうことがあります。イップスはゴルフに限らず、他のスポーツや日常生活でも発生する可能性がありますが、ゴルフでは特に精度が要求されるショットやパットの際に、イップスによる影響が顕著に現れます。

2.ゴルフにおける各イップスの具体例 

ゴルフの各ショットにおけるイップスの具体例を紹介します。

・ショットイップス
・アプローチイップス
・パターイップス

ツアーで活躍するプロゴルファーも悩まされ、時に選手生命を脅かす可能性もあるイップス。それぞれのイップスを、実際にプロに起きた例を交えながら、詳しく解説します。

ショットイップス

「ショットイップス」は、特にドライバーやアイアンショットにおいて、プレーヤーが極度の緊張感に襲われ、スイングがスムーズに始められない、できないという症状です。

クラブを選ぶ段階から、不安を感じたりや悪いショットのイメージが出たりすることが多く、スイングを始動しようとしても体が思うように動かせないといったことが 起こりうるため、本来のリズムでボールを打つことが困難になりがちです。

プロゴルファーの丸山茂樹もドライバーを使う際にイップスに苦しんだ経験があります。体の不調でショットが曲がり始めたことが原因だそうです。その後、イップスを克服するために練習量を増やしたことで、左手首を傷めてしまい、より苦しい状況に陥ったといいます。

アプローチイップス

「アプローチイップス」はアプローチショット時に特に見られるイップスの一種で、プレーヤーがスイングをスムーズに始動できなかったり、インパクト時に無意識の不要な動きが入ってしまったりする症状です。

アプローチなどの短い距離のショットには繊細さが求められます。力が入りすぎてしまいボールがターゲットを大きくオーバーしたり、インパクト時に意図しない動きをしてしまいトップやダフリにつながってしまうことがあります。アプローチショットの時に、「寄せなければいけない」、「失敗したらどうしよう」といった極度のストレスや焦りを感じることが一般的です。

女子プロゴルファーの服部真夕もアプローチイップスに苦しんだ経験があり、通常の右打ちが困難になったため、アプローチの時は左打ちへと変更するという極端な対策を取らざるを得なくなりました。クラブセットもウェッジは左打ち用となっています。

参照:『アプローチだけ左打ち イップスに立ち向かった服部真夕【きょうは誰の誕生日?】

パターイップス

「パターイップス」とは、アドレスに入ってからパッティングが始められないことや、ストロークが正常に行えなくなる心理的な症状です。

インパクトの瞬間にパターのフェースが意図せず開いたり閉じたりすることで、意図した方向に向かってボールを打つことが困難になりがちです。また、距離感のイメージが持てなくなることもあり、結果としてショートしたりオーバーしたりすることが頻発します。

長尺パターを使用しているプレーヤーの中には、一般的な短いパターでイップスの症状に悩まされた結果、長尺パターに変更したというケースも見られます。

プロゴルファーの横田真一は、短い一般的な長さのパターでイップス症状に悩まされたひとりです。自信があったパッティングで突然体が動かなくなってしまった、と語っています。横田真一も長尺パターを使うことで自身のイップス症状を改善したひとりです。

ALBA TVの以下の番組では、堀川未来夢と横田真一が自身のイップス体験を赤裸々に語っています。是非、ご覧ください。

参照:ALBA TV 『堀川未来夢×横田真一 イップス対談

3.イップスになる原因となりやすい人の特徴

一流のプロゴルファーでも(だからこそ?)悩まされるイップスですが、ここでは、何をきっかけにしてイップスになるのか、考えられる原因を紹介します。イップスの基礎知識を身につけておくことで、イップスのリスクを減らすことができるかもしれません。

イップスになる原因

イップスは強い精神的なプレッシャーの下で、ミスをしたことが原因とされています。

ミスショットやミスパットを経験した時に、その記憶が悪い感情と共に記憶され、まったく別の機会に、「誤作動記憶」として発生することがあります。

「誤作動記憶」とは、簡単に言うと、無意識の脳のクセのことです。悪い経験を脳が記憶してしまうことで、ある条件の下で勝手にスイッチが入り、正しい意図した動きではなく、間違った意図しない(しかしかつて経験した)動きを反復してしまうのです。

この誤作動記憶が、プレッシャーや緊張感のある状況下で再び顕著になり、正常なストロークやスイングを妨げる要因のひとつになっていると考えられます。

つまり、一度ネガティブな経験が強く記憶されると、同様の状況下で体が無意識にその記憶を再生し、意図しない不適切な動きが引き起こされるのです。

イップスになりやすい人の共通点

イップスになりやすい人の共通点には、必要以上に考えすぎる傾向のある人と完璧主義があります。これらに当てはまる人は、プレッシャーを感じやすいはずです。2つのタイプについて解説します。

考えすぎな人

考えすぎる人は「しなければならないこと」を、あれこれとアドレス時に過剰に考え込んでしまいがちです。その結果、体が固まりスイングやストロークの始動ができなくなることがあります。不要な思考が頭を占めることで、負の思考ループにも陥りやすくなり、どんどんスイングの始動が困難になっていきます。

また、ネガティブな思考は良いイメージを持つことを阻害します。ショットをする前にナイスショットがイメージできない状態を繰り返すと、イップスを引き起こすリスクを高める可能性があります。考えすぎてしまう傾向のある人は、ショットを始める前に別のことを考えてみるなど、ショットに意識が向きすぎないようにするのがおすすめです。

完璧を求めてしまう人

完璧を求める人々は理想が高く、自分のプレーに対して厳しい基準を設定してしまうことで、イップスに陥る可能性があります。例えばアマチュアゴルファーが動画や雑誌で学んだ技術を完璧に実行しようとしたとして、その方法が単に自分の体格やプレースタイルに合わない場合もあるでしょう。

にもかかわず、理想と現実のギャップに苦しみ、不満足なショットが連続すると、悪いイメージとして心に残ってしまいます。ネガティブなイメージは過度に自分を追い込む結果となり、悪循環にはまってしまった末、最終的にはイップスの症状を発症してしまうというケースにはまります。

4.まとめ

イップスになってしまうと、スイングが始められなくなったり、インパクト時の意図しない余計な動きによって、ミスショットを引き起こしたりしてしまいます。

その対策方法は簡単に言えることではありませんが、ショットやパッティングをする前に、ポジティブな結果を意識的に描く練習を行うこと。また、自分にプレッシャーをかけすぎないことによって、自分自身に対する過度の期待を抑え、ゴルフでミスすることは自然なものと受け入れることなどは、大切でしょう。

精神的な余裕を持ち、よりリラックスしてプレーに臨むことができる客観的・主観的な条件をそれぞれ見つけて、実践していくことが重要なのです。