工藤遥加が一念発起の初優勝 父・公康氏に「いい報告ができる」

念願の初優勝を挙げてこぶしを握る工藤遥加(撮影:鈴木祥)

<ツインフィールズレディース 最終日◇20日◇ゴルフクラブ ツインフィールズ ゴールドコース(石川県)◇6487ヤード・パー72>

悲願成就だ。工藤遥加が3日間いずれもアンダーパーをマークする快勝。逃し続けてきたステップ・アップ・ツアー初優勝をようやく手にした。

埼玉県所沢市出身。父は元プロ野球選手で、福岡ソフトバンクホークスの監督も務めた工藤公康氏だ。女子ゴルフ界でもトップクラスの飛距離を武器に2011年からプロの世界で戦ってきたが、レギュラーツアーでは結果を残せず。下部のステップでも勝利に届かず、苦しい日々を過ごしてきた。

しかし、オフシーズンに「自分の人生観が変わった」と言うほどの衝撃を受ける。女子ソフトボール日本代表の上野由岐子らを擁する『ビックカメラ女子ソフトボール高崎』と2週間の合宿を行った。そこでの体験で「自分は変われた」と話す。

「本当に全てをかけて競技に取り組んでる。その姿を見たり話を聞いて、自分の人生観が変わった。私も負けてられないと思った。ビックカメラのソフトボールの皆さんがいたから、自分は変われた。ありがとうございます、と伝えたいです」

そして、忘れてはならないのは家族の存在だ。公康氏にはときおりコーチングも受けており、師としても父としてもかけがえのない存在だ。「今年は本当に親子っていう感じで接してもらってて。今まで(プロの自覚がない自分が)恥ずかしくて話もできなかったけど、うまくなりたいから、頼るしかないんです。毎回、試合が終わる毎に一緒に反省してくれて、課題を教えてくれる。いい報告ができるので、良かった」。今回の勝利が最高の親孝行になる。

「『勝てなくていい』って初めは思っていて。プロになることが目標だったんですよ」とかつての思いを打ち明ける。「お父さんの子供なんで、注目されるのがそっちしかないし、そんなに自分自身上手いとも思ってないし、強くもない。アスリート向きだと思っていなかった。どれだけ成績が良くても、お父さんの顔に泥を塗ってる感じがして嫌だった。正直、辞めたかった」。

レギュラーツアーやステップで「ちょこちょこ稼いだり」して満足する。そんな自分に嫌気がさして、一念発起した。「私の人生一度きり。もっと一生懸命やらないとだめ。今、応援してくれてるのはスポンサーさんや、私のことを好きだって言ってくれて、周りにいてくれてる人たち。もう、恩返しするしかないと思っていた」

涙を浮かべながらそう語った30歳。一人前のプロの顔だった。

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