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雰囲気をガラリと変えたビッグセーブで「スイッチが入った」 山下美夢有が“家族に贈る”2週連続V

女王・ 山下美夢有が貫録の逃げ切り。自身初の2週連続優勝を果たした。(撮影:鈴木祥)

<リゾートトラスト レディス 最終日◇28日◇グランディ浜名湖ゴルフクラブ(静岡県)◇6500ヤード・パー72>

山下美夢有が先週の愛知県に続き、静岡県でも圧倒的な強さを見せて今季3勝目(通算9勝目)を手にした。2位の佐久間朱莉と1打差リードで迎えた最終日。初優勝を目指した1学年下の後輩に「スキがなかった」と言わしめるゴルフで、ほかの選手の追随を許さなかった。

5番まではパーを並べる静かな展開。むしろ「最初はショットが左右にブレて、アプローチで寄せて耐えてという感じだった」と、わずかながら不安定さすら感じさせるプレーだった。5番では佐久間がバーディを奪い、一時はトップにも並ばれた。ただその直後の6番パー4で、本人も「大きかった」と振り返るビッグプレーが生まれた。

フェアウェイから残り156ヤードを狙った2打目。アゲンストと読んで6番アイアンで放った一打は、「悪くなかった」というもののグリーン奥のバンカーに飛び込んだ。「アゲンストではなくて横風が強かった」という、いわばジャッジミス。さらにその後のリカバリーショットも、ピンまで5メートルと寄せきることができなかった。2位転落のピンチ。しかし、ここでこのパーパットをねじ込んだ。ロープ外のギャラリーはもちろん、隣に居たキャディが興奮のあまり両手でガッツポーズを繰り出すほど、見る者を興奮させるナイスパーセーブだった。

「簡単に決められるとは思ってなかったけど、ここはしっかり獲っておきたかった。これでスイッチが入った。7番から頑張ろうと切り替えられた」。本人も認める“クラッチパット”だ。すると7番で残り176ヤードを6番アイアンで2メートルにつけて初バーディ。続く8番で1メートル、9番でも4メートルを決めて3連続バーディでリードを広げた。これが女王のゴルフ。完全に流れが変わった。終わってみればトータル21アンダーまで伸ばし、2位に4打差をつける圧巻の優勝劇になった。

優勝会見では、家族への感謝の言葉を繰り返した。今週金曜日まで行われていた「関西アマ」決勝では、近畿大に通う弟・勝将がプレーオフのすえ連覇を達成。「いい刺激をもらったんで、私も頑張らないとって気持ちが入った」。

オフには一緒に練習もして、ちょっとミスをすると『何してんねん!』と容赦ない“いじり”も食らう。「男子だからアプローチ技術は多い…けど参考にはならないかな(笑)。でも、頑張っている姿は力になっています」と切磋琢磨しあう存在だ。妹・蘭さんもゴルフをしており、会場にも来て一緒に回って応援することもしばしば。「ゴルフ以外でもめっちゃ仲がいい」というきょうだいが支えになる。

またこの日は父・勝臣さん、母・有貴さんも観戦。2人がそろって見守ると“勝率100%”という勝利の使者だ。父は山下のコーチでもあり、技術的なアドバイスなどを送り続ける師匠。そして母については、「おもしろくて、いつも明るくて元気なんですよ(笑)。それで切り替えもできるし、プレーにも集中できている。癒しの存在です」とニコニコが止まらない。全員そろって食事に行く機会も多く、それもリフレッシュに。昨年、年間女王を獲得した時のパターのソールプレート部分には『Family is everything(家族がすべて)』と刻印したほど、山下にとってかけがえのない存在だ。

この勝利で山下は生涯獲得賞金4億円を突破(4億2455万4181円)。21歳299日での到達はツアー歴代最年少の記録となった。また4日間大会での2週連続優勝もツアー史上初のできごと。ともに「知らなかった」と意識することはなかったが、また女子ゴルフの歴史に新たな1ページを刻んだ。

優勝の副賞として、4泊6日のハワイ旅行もゲットした。「行ったことがないからうれしいです! 家族で行きたいです」と、さらにテンションもアップする。1927年に第1回「日本オープン」が開催されたことに由来し、5月28日は「ゴルフ記念日」に制定されている。そんな話を振られると、初耳ということもあり「そうなんですね」と笑った。ただこの日は山下にとって家族の大切さを改めて感じることができる、大切な一日になったはずだ。(文・間宮輝憲)

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